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第四章 6月
お姉さま、予想外です! 11
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「提案?」
「何も難しいことではないわ。ええと…」
楢崎先輩は、凛子先輩の持っていた原稿を覗きこんでから、幸の方を見た。
「1年東組の春野幸さん」
「はい」
どうやら名前を確認していたらしい。
幸が返事したことに、にこりと笑顔を返してから凛子先輩の方を見た。
「もう。凛子ったら自己紹介もなしに話を進めてしまうのだもの。何事も物事を急ぎすぎるのは悪い所だと思うわ」
「…そういう流れにしたのは和でもあるけどね」
呆れたように山下先輩が言うが、楢崎先輩はふふっと揶揄うように笑って話を流してから、周りを見回した。
「人生の回り道を楽しみたいだけよ。もう頭の良い人たちは話が早すぎるのが欠点だと思うわ。人生は楽しみ、寄り道、集い合い等々必要よ」
「はいはい。いいから、ご提案を述べなさいよ」
「瑠ったらせっかちさん」
山下先輩の言葉に楢崎先輩は目を細めて微笑んでみせた。
「提案は二つ。まずは春野幸さん」
「はい」
改めて幸が返事をすると、楢崎先輩はのんびりと幸の方へゆっくりと歩き出した。
その動き一つ一つがどこか目を引いて、本人もそれを分かっているようだ。
「あなたは、男性が苦手であることを克服したい」
「ええ」
「なら別に、生徒会の企画を手伝うことを断る必要はないわ。生徒会のメンバー、そして手伝いの人間全員が事情を知っていれば、当然フォローするもの。むしろ克服するためには好都合ではないかしら」
楢崎先輩は猫なで声で幸の反応を見る。
「ええと、でも…正直、自信があまりなくて」
幸が委縮するように小さくなると、うんうんと頷いてから、くるりと踵を返した。
「はい、ここで提案二つ目。生徒会では春野さんを付ききりでフォローする担当を決めてしましょう。男性が苦手で近づくことも嫌な春野さんがスムーズに業務にあたれるように。時にバリケード、時に精神安定薬代わりになってくれる担当をね。それには春野さんが気を使わず、かつ頼りになる人がいいでしょう。つまり、明智絵里さんとか」
楢崎先輩は、絵里を手のひらで示した。
絵里の方は楢崎先輩のそんな道化じみた行動に慣れているのだろう。
特に表情を動かさない。
楢崎先輩は、それからその手のひらを柚鈴に向けた。
「それから小鳥遊柚鈴さんとか」
「え?」
急に名指しされて、柚鈴は目を瞬かせた。
「一緒に生徒会室まで来たくらいだし、仲いいんでしょう?」
「もちろん、それはそうですけど」
「それなら上々」
満足そうに頷いて、楢崎先輩は凛子先輩を見た。
「でも凛子。文芸部で、作品を提供してくれる春野幸さんならいざ知らず、一生徒である小鳥遊柚鈴さんが幸さんのお友達というだけで生徒会手伝いをしてくれるというのはおかしな話になると思わない?」
「何が言いたいの?」
凛子先輩は楢崎先輩の言いたいことはある程度分かっているのだろう。
どこか困ったように見える笑顔を浮かべた。しかし拒否する気もないのだろう。その先を促す。
「だから。小鳥遊柚鈴さんには、生徒会からお手伝い役のブロンズのバッチを渡しておきましょう。そうすれば、柚鈴さんはそのバッチを理由として、助言者を希望する人達を断れるし、仕事を理由にお誘いを断れるわ。春野さんは仕事を受けることで、柚鈴さんを守ることも出来て一石二鳥じゃなあい?」
楢崎先輩はどうだっと言わんばかりに胸を張った。
「……」
「……」
間があった。
凛子先輩と山下先輩は、それぞれ無言で考え込んだのだ。
柚鈴は柚鈴で、この不思議な展開に思う所があって、黙ってしまう。
ブロンズのバッチ。
今の志奈さんのバッチを預かっている柚鈴の頭には一瞬満面の笑みの志奈さんがぽんと浮かんでしまったのだ。
無邪気で、しかし柚鈴には悪い小悪魔のように見える志奈さんの笑顔。
ほらほら、柚鈴ちゃん。結局私のバッチが必要だった話になったでしょ、と得意満面な感じだ。
いやいや。
まだそう決まったわけでは…
柚鈴はどこか力なく心の中で反論した。
「何も難しいことではないわ。ええと…」
楢崎先輩は、凛子先輩の持っていた原稿を覗きこんでから、幸の方を見た。
「1年東組の春野幸さん」
「はい」
どうやら名前を確認していたらしい。
幸が返事したことに、にこりと笑顔を返してから凛子先輩の方を見た。
「もう。凛子ったら自己紹介もなしに話を進めてしまうのだもの。何事も物事を急ぎすぎるのは悪い所だと思うわ」
「…そういう流れにしたのは和でもあるけどね」
呆れたように山下先輩が言うが、楢崎先輩はふふっと揶揄うように笑って話を流してから、周りを見回した。
「人生の回り道を楽しみたいだけよ。もう頭の良い人たちは話が早すぎるのが欠点だと思うわ。人生は楽しみ、寄り道、集い合い等々必要よ」
「はいはい。いいから、ご提案を述べなさいよ」
「瑠ったらせっかちさん」
山下先輩の言葉に楢崎先輩は目を細めて微笑んでみせた。
「提案は二つ。まずは春野幸さん」
「はい」
改めて幸が返事をすると、楢崎先輩はのんびりと幸の方へゆっくりと歩き出した。
その動き一つ一つがどこか目を引いて、本人もそれを分かっているようだ。
「あなたは、男性が苦手であることを克服したい」
「ええ」
「なら別に、生徒会の企画を手伝うことを断る必要はないわ。生徒会のメンバー、そして手伝いの人間全員が事情を知っていれば、当然フォローするもの。むしろ克服するためには好都合ではないかしら」
楢崎先輩は猫なで声で幸の反応を見る。
「ええと、でも…正直、自信があまりなくて」
幸が委縮するように小さくなると、うんうんと頷いてから、くるりと踵を返した。
「はい、ここで提案二つ目。生徒会では春野さんを付ききりでフォローする担当を決めてしましょう。男性が苦手で近づくことも嫌な春野さんがスムーズに業務にあたれるように。時にバリケード、時に精神安定薬代わりになってくれる担当をね。それには春野さんが気を使わず、かつ頼りになる人がいいでしょう。つまり、明智絵里さんとか」
楢崎先輩は、絵里を手のひらで示した。
絵里の方は楢崎先輩のそんな道化じみた行動に慣れているのだろう。
特に表情を動かさない。
楢崎先輩は、それからその手のひらを柚鈴に向けた。
「それから小鳥遊柚鈴さんとか」
「え?」
急に名指しされて、柚鈴は目を瞬かせた。
「一緒に生徒会室まで来たくらいだし、仲いいんでしょう?」
「もちろん、それはそうですけど」
「それなら上々」
満足そうに頷いて、楢崎先輩は凛子先輩を見た。
「でも凛子。文芸部で、作品を提供してくれる春野幸さんならいざ知らず、一生徒である小鳥遊柚鈴さんが幸さんのお友達というだけで生徒会手伝いをしてくれるというのはおかしな話になると思わない?」
「何が言いたいの?」
凛子先輩は楢崎先輩の言いたいことはある程度分かっているのだろう。
どこか困ったように見える笑顔を浮かべた。しかし拒否する気もないのだろう。その先を促す。
「だから。小鳥遊柚鈴さんには、生徒会からお手伝い役のブロンズのバッチを渡しておきましょう。そうすれば、柚鈴さんはそのバッチを理由として、助言者を希望する人達を断れるし、仕事を理由にお誘いを断れるわ。春野さんは仕事を受けることで、柚鈴さんを守ることも出来て一石二鳥じゃなあい?」
楢崎先輩はどうだっと言わんばかりに胸を張った。
「……」
「……」
間があった。
凛子先輩と山下先輩は、それぞれ無言で考え込んだのだ。
柚鈴は柚鈴で、この不思議な展開に思う所があって、黙ってしまう。
ブロンズのバッチ。
今の志奈さんのバッチを預かっている柚鈴の頭には一瞬満面の笑みの志奈さんがぽんと浮かんでしまったのだ。
無邪気で、しかし柚鈴には悪い小悪魔のように見える志奈さんの笑顔。
ほらほら、柚鈴ちゃん。結局私のバッチが必要だった話になったでしょ、と得意満面な感じだ。
いやいや。
まだそう決まったわけでは…
柚鈴はどこか力なく心の中で反論した。
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