ハニードロップ

蜜柑大福

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初めての気持ち

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恋人同士ではないのに、恋人のようなキスをする。

優しく愛撫をするように舌を撫でられて、心地がいい。

俺の舌は可笑しくなったのか、吸われただけで下半身が震える。

また興奮してしまったら大変だから唇を離した。

こんな快楽を知ってしまって、一人で自慰する時出来るのか不安だ。

他人に与えられる快楽を覚えてバカになっていないならいいけど…

今更思い出したが、ここは空き教室だった。

人気がないとはいえ、誰かが入ってくるかもしれない。

においは換気すれば誤魔化せるが、他のは拭くものがないから風呂に入らないといけない。

今から学校を出るのは、さすがにまずいよな。

制服で隠したら感触が気持ち悪いけど、隠せるな。

でも、外側が汚れたらさすがに拭いても染みが出来る。

汚したら大変だと、精液が飛び散ったであろう自分の身体を確認した。


服は乱れて汗もあるが、目立った汚れはなかった。

前を見ると根暗くん?が手で受け止めていて、制服を汚す事はなかった。

ジッと自分の手のひらを見つめていて、除菌シートで拭いていた。

戸惑う事もなく、淡々とするその姿はなかなかシュールだ。

俺が見ている事に気付いて、小さく笑った。

こんな綺麗な顔なのに、さっきまでやっていた事とのギャップに頭が混乱する。

俺、何をしてたんだっけ…分からなくなってきた。

かなり体力を使ったからか、うとうととしながら考える。

これはただの自慰だ、それはお互い分かっている。

擦れば誰だってイく事が出来る、俺に興奮したわけではない。

でも、萎えないものなのか?いくら擦ったからって、ずっと見つめていたわけだから。

俺を女と勘違いする要素なんて、一つもなかった。

俺も同じ事をしていたから何とも言えないけどな。

ゆっくり目蓋が重くなり、俺の意識はなくなった。

いきなりの強すぎる快楽に俺の体力は限界だった。







ーーー

※?視点

「寝たのか」

声を掛けても反応が何もない、本当に眠ったのか。

呑気に眠っていて、少し意地悪がしてみたくなった。

鼻を軽く摘まむと「むぐっ」と声を出していて、手を離す。

全く起きる気配はなく、再び規則正しい寝息が聞こえる。

肩を揺すろうと考えていたが、なんか起こすのも悪く感じる。

雰囲気で手を出してしまったが、疲れさせたのは俺だ。

申し訳ないなと、ガラにもない事を考えてしまう。

さっきは軽く鼻を摘まんだが、起こす気ではなく幸せそうに寝ているのがムカついただけだ。

触り合いだけとはいえ、よく襲った奴の隣で寝ていられるな。

まさか、初な反応のくせに男とそういう事をするのは初めてじゃない。

いくら男子校とはいえ、まさか…そうだったのか?

寝顔をジッと眺めると、芸能人に居ても違和感がないほど整った顔をしている。

何だろう、さっきまで無防備な事が腹立っていたのに今は別の事が腹立たしくなってきた。

なんでそうなるのか、本人の俺ですら分からない。

「とりあえず、する事がないな」

長時間ずっとここにいるのはごめんだ、早く起きろよ。

コイツを置いて教室に戻る事は微塵も考えてはいない。

床に落ちたカツラを拾って、頭に被せて髪に馴染ませる。

ずれないように制服の内ポケットから小さな鏡を取り出して、金髪が完全に隠れるように調整する。

これで俺が金髪だって思わず元の根暗な雰囲気の転校生に戻った。

ずっと卒業までこの姿でいたかったのに、まさか初日で気付かれるとは思わなかった。

正直言って、信用出来る相手かどうかは分からない。

ただ、今の俺にはコイツを信用する事しか出来ない。

スマホを見ると、途中で電話を切ったからなにがあったんだと鬼のように着信がある。

夢中になってしていたから、全く気付いていなかった。

バイブにしてるから、コイツも電話が掛かってきているとは思っていない。

面倒くさいな…このまま無視してメッセージだけで済まそうかな。

そんな事を考えていたら、タイミングよく着信が掛かってきた。

眠る男の姿を見て、まだしばらく起きる気配はなさそうだ。

無視をして、いろいろ大事にされるのも面倒な事になる。

通話ボタンをスライドして、耳に当てると慌てたような声が聞こえる。

誘拐されているわけじゃないんだから、そこまで心配する事か?

両親よりも心配性な保護者のようで、正直鬱陶しい。

俺をいくつだと思っているんだ、転校初日でなにかあるわけ…

ふと眠る男に視線を向けて、誰にも絶対に言えないなと思った。
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