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本作品

再会、そしてまた別れ

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それから6年の歳月さいげつが流れ、私は大学生になっていて歌手を目指し、勉強の合間に、そして夏休み冬休みの長期休暇ちょうききゅうかも利用し、路上ライブをやっていた。一方、潤は盲学校を卒業していて、もっと点字の勉強をするために専門学校に通っていた。
いつものように長期休暇中の私は、路上ライブをやっていた。場所は偶然にも潤が点字を勉強するために通っている専門学校の通学路だった。今日も潤は専門学校に向かって歩いていた。・・・その時だった。潤の心に衝撃が走った。
「なんだ!この心に染みるようなあたたかい歌声は!」 潤は思わず足を止め、時間も忘れて聞きっていった。ただ私はこの青年が潤だということは現時点では気づいていなかった。

それから毎日のように彼は私の路上ライブに通い、大ファンになっていった。私も毎日ききにきてくれる青年に親しみを覚え、気さくに話す間柄になり、いつしか2人はお互いを意識するようになっていた。
そんなある日の事だった。いつものようにデートをして、レストランで食事をしようとしている時だった。彼が持つバッグの中からガラケーの着信音が鳴り、ガラケーを取り出した。そのガラケーには、四つ葉のクローバーのキーホルダーがついていた。・・・あれは潤と2人の愛の誓いのしるしのキーホルダーだ。6年前の事故で気まずくなって潤と会えなくなってから、片時かたときも忘れずに潤のことを心配していた。
あなた潤なの?!潤が私の目の前にいる!!・・・きっと神様が会わせてくれたんだと思い、私は泣きそうなくらいに嬉しくて胸がいっぱいになった。・・・でも私は迷った。目の前の潤に正直に言うべきか、このまま何事もなかったように付き合うか。どうしたらいいかわからずに言わずじまいで、ずるずると付き合いが続いていた。

そんな時、潤がこの頃帰宅する時間が遅いとのことで心配した父親が潤を迎えにきた。偶然にも潤が亜衣と親しく話をしているところを見つけてしまった。潤と父親が一緒に帰宅する途中、父親は、「なんであんなやつと付き合っているんだ!」 潤を不用意に怒鳴どなってしまう。そのことによって潤が何かを感づいたのか、父親に向かって、「あんなやつってまさか・・・ま、まさか亜衣のことなのか?亜衣なのか!?正直に言ってくれ!親父!!」 と、必死になってめたが父親は、「ち・・・違う、そんなはずがないだろう!」 と言って更に否定した。そして今後は絶対にあの子には会うなと言われてしまう。

6年ぶりに再会したように見えた潤と亜衣だったのだが、再び2人は離ればなれになってしまった。
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