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チャプター【18】
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廊下の突き当たりを左へと曲がって進んでいくと、つきかげ号の搭乗員が入室していた待機室のドアが次々と破られていた。
廊下には、スタッフや警備員数名が倒れている。
「ひどい……」
目の前の光景に絶句し、宮田は眼を細めた。
倒れていたのは、警備員が2名と男性医療スタッフが3名だった。
医療スタッフの3名は、首と肩のあいだに鋭利な突起物で刺されたような傷がふたつあり、警備員の2名は腹を抉り取られたような穴が開いていた。
廊下へと流れ出した血の中には、臓物やはらわたと思われる肉片が点在していた。
白い壁にも、鮮血が飛び散っている。
宮田は、ひとりひとりの脈を取っていった。
首にふたつの傷がある男性スタッフの3名には脈があったが、警備員の2名はすでに絶命していた。
そのとき、
「よう、宮田」
聞き覚えのある声に、宮田は顔を上げた。
そこには、九鬼が立っていた。
「九鬼、無事だったのか。君たちふたりも」
九鬼の両脇には、操縦士(パイロット)の倉上茂と、搭乗科学技術者(ペイロード・スペシャリスト)の木戸江美子の姿があった。
宮田は立ち上がり、
「田島くんと水野くんは、どこへ行った」
訊いた。
「獣と化した、あのふたりか?」
「そうだ」
「あいつらは、まだ腹が満たされてないようでな、食事のつづきをしに行ってしまったよ」
九鬼は、にたりと嗤(わら)った。
「!――」
宮田は、嗤った九鬼のその口許に眼を瞠った。
両端をつり上げた口から覗いた歯が赤く染まっている。
それは、まぎれもなく血であった。
それだけではない。
犬歯が、異様なほど伸びているのだった。
「おまえ……」
宮田は驚愕の眼で、九鬼を見つめた。
「おい、なんだ、その顔は。俺たちの新しい門出だぞ? いや、これは人類にとっての、次なるステップと言ったほうがいい。だから、もっとうれしそうな顔をしてくれよ」
九鬼は、にやにやと嗤(わら)っている。
「なにを、言っている。九鬼! おまえの身体には、地球外生命体と思われる未知なる細胞体が侵入しているんだぞ。それによって、おまえの遺伝子情報は、上書きされているんだ!」
「ククク。おまえこそ、なにを言っているんだ。人類はもともとが、地球外知的生体によって遺伝子操作され、猿からホモ・サピエンスへと人工的に進化させられたんじゃないか」
「意味がわからないな。地球外知的生命体が、人類を創っただと?」
「そうさ。地球外知的生命体は、猿のあまりの進化の遅さに、業を煮やしんだよ。それが、進化における急激な飛躍の謎だったというわけだ」
「なぜ、そんなことが言える」
「いまの俺には、すべてがわかる。地球の誕生も、宇宙の誕生でさえもな。いいか、人類は遂に、さらなる高みへと進むべきときが来たんだよ」
「ばかな。おまえは思い違いをしている。このままだと、おまえの中の未知なる細胞体に、その身体を乗っ取られてしまうかもしれないんだぞ。わからないのか!」
「くだらんな、宮田。おまえが、それほど下等なやつだとは思わなかったよ。まあ、それもしかたがない。おまえは、これを味わっていないのだからな。高みへと向かっていく、この恍惚感を」
九鬼の眼が、かっと見開いた。
その眼が、金碧色の光を放った。
廊下には、スタッフや警備員数名が倒れている。
「ひどい……」
目の前の光景に絶句し、宮田は眼を細めた。
倒れていたのは、警備員が2名と男性医療スタッフが3名だった。
医療スタッフの3名は、首と肩のあいだに鋭利な突起物で刺されたような傷がふたつあり、警備員の2名は腹を抉り取られたような穴が開いていた。
廊下へと流れ出した血の中には、臓物やはらわたと思われる肉片が点在していた。
白い壁にも、鮮血が飛び散っている。
宮田は、ひとりひとりの脈を取っていった。
首にふたつの傷がある男性スタッフの3名には脈があったが、警備員の2名はすでに絶命していた。
そのとき、
「よう、宮田」
聞き覚えのある声に、宮田は顔を上げた。
そこには、九鬼が立っていた。
「九鬼、無事だったのか。君たちふたりも」
九鬼の両脇には、操縦士(パイロット)の倉上茂と、搭乗科学技術者(ペイロード・スペシャリスト)の木戸江美子の姿があった。
宮田は立ち上がり、
「田島くんと水野くんは、どこへ行った」
訊いた。
「獣と化した、あのふたりか?」
「そうだ」
「あいつらは、まだ腹が満たされてないようでな、食事のつづきをしに行ってしまったよ」
九鬼は、にたりと嗤(わら)った。
「!――」
宮田は、嗤った九鬼のその口許に眼を瞠った。
両端をつり上げた口から覗いた歯が赤く染まっている。
それは、まぎれもなく血であった。
それだけではない。
犬歯が、異様なほど伸びているのだった。
「おまえ……」
宮田は驚愕の眼で、九鬼を見つめた。
「おい、なんだ、その顔は。俺たちの新しい門出だぞ? いや、これは人類にとっての、次なるステップと言ったほうがいい。だから、もっとうれしそうな顔をしてくれよ」
九鬼は、にやにやと嗤(わら)っている。
「なにを、言っている。九鬼! おまえの身体には、地球外生命体と思われる未知なる細胞体が侵入しているんだぞ。それによって、おまえの遺伝子情報は、上書きされているんだ!」
「ククク。おまえこそ、なにを言っているんだ。人類はもともとが、地球外知的生体によって遺伝子操作され、猿からホモ・サピエンスへと人工的に進化させられたんじゃないか」
「意味がわからないな。地球外知的生命体が、人類を創っただと?」
「そうさ。地球外知的生命体は、猿のあまりの進化の遅さに、業を煮やしんだよ。それが、進化における急激な飛躍の謎だったというわけだ」
「なぜ、そんなことが言える」
「いまの俺には、すべてがわかる。地球の誕生も、宇宙の誕生でさえもな。いいか、人類は遂に、さらなる高みへと進むべきときが来たんだよ」
「ばかな。おまえは思い違いをしている。このままだと、おまえの中の未知なる細胞体に、その身体を乗っ取られてしまうかもしれないんだぞ。わからないのか!」
「くだらんな、宮田。おまえが、それほど下等なやつだとは思わなかったよ。まあ、それもしかたがない。おまえは、これを味わっていないのだからな。高みへと向かっていく、この恍惚感を」
九鬼の眼が、かっと見開いた。
その眼が、金碧色の光を放った。
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