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チャプター【36】
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隔離室の前には、5名の隊員がいた。
その5名は、蘭が来ると隔離室のドアから離れた。
すでに、蘭を先導した隊員が、肩の無線で連絡を入れておいたのだった。
蘭は、ドアの前に立った。
「中には、私ひとりで入る」
その言葉に、隊員のひとりがうなずき、ドアを開けた。
蘭が隔離室へと入り、ドアはすぐに閉められた。
ベッドの横に、感染者がうなだれて立っていた。
長い髪が垂れて、その顔は見えない。
床には、男の研究員スタッフひとりと、S・M・Tの隊員ふたりが倒れている。
スタッフのほうは、首のつけ根を咬まれてぐったりしているが、隊員のふたりは、首が真後ろにねじ曲がっていた。
すでに絶命しているのがわかった。
感染者が、ゆっくりと顔を上げて蘭を見た。
「なんだ、今度は女じゃないか。君は、僕への貢物?」
顔を上げても、前髪が感染者の顔を隠している。
それでも、垂れた髪の隙間から、鈍く光る眼と唇が覗いていた。
唇の端がつり上がっているのが見える。
感染者は、にたりと嗤っていた。
「貢物は、おまえのほうさ。私がここから出るためのね」
蘭が動いた。
と思うと、感染者が後方へと吹き飛んでいた。
いったい何をしたのか。
それは、肉眼では追えないほどの疾(はや)さだった。
壁に叩きつけられた感染者は、倒れることなく、ゆらりと立っていた。
「へへへ。これは驚いたな。君は、何者だい?」
髪の隙間から覗く眼が、鈍い光を放った。
「おまえを、排除する者さ」
蘭がそう口にしたとたん、感染者の姿が眼前にあった。
「うぐッ……」
蘭は、首を感染者に鷲づかみされていた。
「いまのって、ジョーク? とっても笑える。けど、もう死んでいいよ」
上目使いの眼が、ぎろりと蘭を睨んだ。首を摑む右手に、力がこめられる。
「ぐくッ……」
蘭は、感染者の手首を摑んだ。
「!――」
感染者が、不思議そうに小首を傾げた。
その感染者の右手が、蘭の首から徐々に離れていく。
「へえ。凄いんだね、君。ここに倒れているふたりの首は、小枝ようにぽきりと折れたのに……あ、そうか、わかった。君は、僕の仲間なんだ」
「ふざけるな。私を、おまえと一緒にするんじゃない」
首から右手が離れても、蘭は感染者の手首を離さなかった。
ぼきッ!
鈍い、嫌な音がした。
そこで蘭は、感染者の手首を離した。
感染者は、自由になった右腕を上げて見つめた。
手首から先が、異様な角度でだらりと垂れ下がっている。
「おまえの手首も、小枝のようだな」
蘭は、唇の端に笑みを浮かべた。
「ほんとだ。ハハ、折れちゃった」
感染者は、けらけらと嗤った。
「君って、ほんとに凄いよ。僕、興奮してきちゃった。君となら、存分に遊べそうだね」
折れた手首を庇おうともしない。
それどころか、面白そうにぶらぶらと動かしている。
痛みを、感じていないようだった。
「おまえと遊んでいる暇などないんだよ」
瞳が金碧色の光が帯びた。
「うわ。いいな、その眼。その眼球、欲しいな。僕にくれない?」
そう言うとともに、感染者が動いた。
折れたほうの腕で、蘭に殴りかかっていった。
その腕を、蘭は左手の甲で弾き、感染者の顔面に右拳を叩きこんだ。
へぎッ!
またも、鈍い音がした。
感染者の鼻が陥没していた。
鼻血が溢れ出す。
「べひひぃ!」
それに構わず、感染者は蘭に向かっていく。
その感染者の左頬に、蘭の右のカウンターが入る。
そして、すかさず左拳を叩きこみ、さらにまた右拳を入れていく。
拳の連打を受けながら、感染者はうしろへ下がっていく。
しかし、垂れた髪の奥に覗く顔は嗤っている。
数発目の拳を打ちこんだとき、その打ちこんだままの姿勢で蘭の動きが止まった。
蘭の右拳が、感染者の口の中に、すっぽりと収まっていた。
蘭の右拳が打ちこまれたとき、感染者は大きく口を開いて、その拳を咥えこんだのだった。
その5名は、蘭が来ると隔離室のドアから離れた。
すでに、蘭を先導した隊員が、肩の無線で連絡を入れておいたのだった。
蘭は、ドアの前に立った。
「中には、私ひとりで入る」
その言葉に、隊員のひとりがうなずき、ドアを開けた。
蘭が隔離室へと入り、ドアはすぐに閉められた。
ベッドの横に、感染者がうなだれて立っていた。
長い髪が垂れて、その顔は見えない。
床には、男の研究員スタッフひとりと、S・M・Tの隊員ふたりが倒れている。
スタッフのほうは、首のつけ根を咬まれてぐったりしているが、隊員のふたりは、首が真後ろにねじ曲がっていた。
すでに絶命しているのがわかった。
感染者が、ゆっくりと顔を上げて蘭を見た。
「なんだ、今度は女じゃないか。君は、僕への貢物?」
顔を上げても、前髪が感染者の顔を隠している。
それでも、垂れた髪の隙間から、鈍く光る眼と唇が覗いていた。
唇の端がつり上がっているのが見える。
感染者は、にたりと嗤っていた。
「貢物は、おまえのほうさ。私がここから出るためのね」
蘭が動いた。
と思うと、感染者が後方へと吹き飛んでいた。
いったい何をしたのか。
それは、肉眼では追えないほどの疾(はや)さだった。
壁に叩きつけられた感染者は、倒れることなく、ゆらりと立っていた。
「へへへ。これは驚いたな。君は、何者だい?」
髪の隙間から覗く眼が、鈍い光を放った。
「おまえを、排除する者さ」
蘭がそう口にしたとたん、感染者の姿が眼前にあった。
「うぐッ……」
蘭は、首を感染者に鷲づかみされていた。
「いまのって、ジョーク? とっても笑える。けど、もう死んでいいよ」
上目使いの眼が、ぎろりと蘭を睨んだ。首を摑む右手に、力がこめられる。
「ぐくッ……」
蘭は、感染者の手首を摑んだ。
「!――」
感染者が、不思議そうに小首を傾げた。
その感染者の右手が、蘭の首から徐々に離れていく。
「へえ。凄いんだね、君。ここに倒れているふたりの首は、小枝ようにぽきりと折れたのに……あ、そうか、わかった。君は、僕の仲間なんだ」
「ふざけるな。私を、おまえと一緒にするんじゃない」
首から右手が離れても、蘭は感染者の手首を離さなかった。
ぼきッ!
鈍い、嫌な音がした。
そこで蘭は、感染者の手首を離した。
感染者は、自由になった右腕を上げて見つめた。
手首から先が、異様な角度でだらりと垂れ下がっている。
「おまえの手首も、小枝のようだな」
蘭は、唇の端に笑みを浮かべた。
「ほんとだ。ハハ、折れちゃった」
感染者は、けらけらと嗤った。
「君って、ほんとに凄いよ。僕、興奮してきちゃった。君となら、存分に遊べそうだね」
折れた手首を庇おうともしない。
それどころか、面白そうにぶらぶらと動かしている。
痛みを、感じていないようだった。
「おまえと遊んでいる暇などないんだよ」
瞳が金碧色の光が帯びた。
「うわ。いいな、その眼。その眼球、欲しいな。僕にくれない?」
そう言うとともに、感染者が動いた。
折れたほうの腕で、蘭に殴りかかっていった。
その腕を、蘭は左手の甲で弾き、感染者の顔面に右拳を叩きこんだ。
へぎッ!
またも、鈍い音がした。
感染者の鼻が陥没していた。
鼻血が溢れ出す。
「べひひぃ!」
それに構わず、感染者は蘭に向かっていく。
その感染者の左頬に、蘭の右のカウンターが入る。
そして、すかさず左拳を叩きこみ、さらにまた右拳を入れていく。
拳の連打を受けながら、感染者はうしろへ下がっていく。
しかし、垂れた髪の奥に覗く顔は嗤っている。
数発目の拳を打ちこんだとき、その打ちこんだままの姿勢で蘭の動きが止まった。
蘭の右拳が、感染者の口の中に、すっぽりと収まっていた。
蘭の右拳が打ちこまれたとき、感染者は大きく口を開いて、その拳を咥えこんだのだった。
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