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チャプター【52】
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「わかったようだな。おれのことが。そうさ。あの日、あんたの夫のはらわたを喰ったのは、このおれだよ」
獅子男が、にたりと嗤うのがわかった。
「そうか……」
蘭は瞼を閉じた。
次ぎに瞼を開いたとき、その顔は獣のように変貌していた。
いや、というより、まるでその顔は夜叉のそれであった。
鋭い眼が、獅子男を睨みつける。
「おまえだったのかッ! おまえが、利行をッ!」
そう言い放つと、蘭はボンネットを蹴った。
獅子男に向かって走る。
銃は、すでにホルスタ―から抜いていた。
ダンッ、
ダンッ!
銃声がこだました。
獅子男は動かない。
その虎男を、放たれた2発の銃弾が射抜く。
そう見えた瞬間、銃弾は獅子男の身体をすり抜けていった。
「なに!――」
走りつつ、蘭は眉をひそめた。
「グフフ、驚いたようだな。いまのは瞬動というやつだ。このおれは、銃弾よりも疾(はや)く動けるのさ」
「――――」
蘭は走るのをやめ、足を止めた。
両腕を上げ、獅子男に銃口を向ける。
「無駄だということがわからないのか」
余裕の表情で、獅子男が言う。
「フン。やってみるまでさ」
再び、蘭はトリガーを絞った。
ダンッ、
ダンッ!
「わからないやつだ。あんた、馬鹿なのか?」
銃弾が、またも獅子男をすり抜けていった。
いや、そうではない。
銃弾が当たるそのとき、獅子男はその場から消えていた。
「だから、言っただろう?」
次の瞬間、獅子男は蘭の眼前に姿を現した。
だが、蘭の表情には、愕きの色はない。
「おまえが、そうくるだろうということは、はなからわかっていたよ」
蘭の右手に持つ銃が、やや上方に向けられている。
銃口が、獅子男の額のわずか10センチ先にあった。
「おまえ自慢の、瞬動とやらで避(よ)けてみな」
蘭がそう言うのと同時に、銃弾が放たれていた。
「ごわッ!」
2メートルを超す獅子男の巨躯が、宙に投げ出されるように後方へと吹き飛んだ。
路上へと背から落ちていく。
仰向けに倒れたまま、獅子男はぴくりとも動かない。
数秒の間があって、
「そんなかすり傷で、死んだフリを決めこむつもりなのか?」
蘭が言った。
銃をホルスターへと差しこむ。
そのとき、獅子男の指先が動き、
「できれば、そうしたかったんだがな」
むくりと立ち上がった。
獅子男が、にたりと嗤うのがわかった。
「そうか……」
蘭は瞼を閉じた。
次ぎに瞼を開いたとき、その顔は獣のように変貌していた。
いや、というより、まるでその顔は夜叉のそれであった。
鋭い眼が、獅子男を睨みつける。
「おまえだったのかッ! おまえが、利行をッ!」
そう言い放つと、蘭はボンネットを蹴った。
獅子男に向かって走る。
銃は、すでにホルスタ―から抜いていた。
ダンッ、
ダンッ!
銃声がこだました。
獅子男は動かない。
その虎男を、放たれた2発の銃弾が射抜く。
そう見えた瞬間、銃弾は獅子男の身体をすり抜けていった。
「なに!――」
走りつつ、蘭は眉をひそめた。
「グフフ、驚いたようだな。いまのは瞬動というやつだ。このおれは、銃弾よりも疾(はや)く動けるのさ」
「――――」
蘭は走るのをやめ、足を止めた。
両腕を上げ、獅子男に銃口を向ける。
「無駄だということがわからないのか」
余裕の表情で、獅子男が言う。
「フン。やってみるまでさ」
再び、蘭はトリガーを絞った。
ダンッ、
ダンッ!
「わからないやつだ。あんた、馬鹿なのか?」
銃弾が、またも獅子男をすり抜けていった。
いや、そうではない。
銃弾が当たるそのとき、獅子男はその場から消えていた。
「だから、言っただろう?」
次の瞬間、獅子男は蘭の眼前に姿を現した。
だが、蘭の表情には、愕きの色はない。
「おまえが、そうくるだろうということは、はなからわかっていたよ」
蘭の右手に持つ銃が、やや上方に向けられている。
銃口が、獅子男の額のわずか10センチ先にあった。
「おまえ自慢の、瞬動とやらで避(よ)けてみな」
蘭がそう言うのと同時に、銃弾が放たれていた。
「ごわッ!」
2メートルを超す獅子男の巨躯が、宙に投げ出されるように後方へと吹き飛んだ。
路上へと背から落ちていく。
仰向けに倒れたまま、獅子男はぴくりとも動かない。
数秒の間があって、
「そんなかすり傷で、死んだフリを決めこむつもりなのか?」
蘭が言った。
銃をホルスターへと差しこむ。
そのとき、獅子男の指先が動き、
「できれば、そうしたかったんだがな」
むくりと立ち上がった。
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