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【第19話】
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ネルが王様から授かった剣は、お金をいくら積んでも買えない貴重な代物だった。
「そっかァ、でも海に船ごと沈んだのなら、探すのも大変だよね」
所詮他人事なので、僕は呑気に答えた。
するとネルは、訝しい顔で詰め寄ってきた。
「お前、まさか王都からの使者じゃないよな」
「え? 僕が?」
「だって、おかしいだろう。こんなへんぴな村に来るなんてよ。ふつう、異世界に召喚されるのは勇者か聖女だぞ。正直に言ってくれ。この俺を捕まえに来たのか?」
やつれてはいても、流石に元勇者だ。エグいくらい、凄味がある。
「い、いや、そんな……」
僕は顔の前で、違うと手をふった。
「だから、そんなに怖い顔をしないでよ」
「そうやって、誤魔化すつもりか。そうか、俺をだまし討ちするつもりなんだろ!」
ネルさんの顔がさらに凄味を増した。
「だから、違うって言ってるじゃってるじゃないですか!
「くそッ、その大福みたいな顔に、油断しちまったぜ」
「だ、大福みたいな顔って、どんな顔ですか!」
「自分の顔を、鏡でみてみろ!」
勝手に勘違いし、そのうえ毒まで吐かれて、さすがに僕は腹が立った。
そしてネルさんと僕は、しばらくのあいだ言い争いをしていた。
それだけに、人が入ってきたことに気づきもしなかった。
「何の騒ぎですか? ネル」
その声に、ハッとして顔を向けると、ネルさんと同じくたい背の高く、眼鏡をかけた男が入ってきた。
この世界には、ノッポのイケメンしかいないのか……。
その眼鏡男を見て、僕がそんなことを思っていると、
「レーベン! 大変だ!! 王都からの刺客だ!」
ネルさんが、その男に叫ぶように言った。
「刺客だって? いったいどこに」
その男は、眉根を寄せてネルさんに訊いた。
「ここ、こいつだよ! この大福が、俺らを捕らえにきたんだ!」
ネルさんは、僕の右腕を掴んだ。
「この彼が刺客だって? とてもそうは思えませんね」
眼鏡男――レーベンは、眼鏡越しに僕をまじまじと見て、ノー、と首をふった。
「あたり前だよ。僕は王都なんて知らないし、君たちがお尋ね者だってことも、知ったのはいまだよ」
僕は怒りを露わにして言った。
「フン、白を切りやがって。レーベン、お前の鑑定眼でこいつを見てみろ! それではっきりとする」
「鑑定でもなんでもやってください。勘違いもはなはだしいということが、よくわかると思いますよ」
僕はそこに仁王立ちした。
「フー、無駄だとは思いますが、まあいいでしょう。では――えっと、Lvが5……。攻撃力は150だし、魔力に至っては50しかありません。いくらなんでも、こんな弱い刺客を王都が送ってよこすわけがありませんよ。」
レーベンが言う。
「うむむ、では、弱いけれど、むちゃ強い聖獣がついているとかはないのか」
「いえ、それもないですね。私の鑑定眼はパーフェクトですから」
それを聞いて安心したのか、ネルさんはほっとした顔になり、
「疑って悪かったな」
僕に顔を向けてそう言った。
「あのさ、ネルさん、僕のこと大福みたいな顔って言ったよね」
それを聞いてレーベンが、
「大福? 何ですか、それは」
不思議そうに、そう訊いた。
「え? あ、それは、俺たちのいた世界の食いものだ。なァ、ユート」
勘違いしていたことを申し訳ないと思っているのか、さっきまで鬼の形相だったくせに、ネルさんはやたらニコニコしていた。
「フン!」
僕はネルさんから顔を背けた。
「おいおい、いつまでもすねるなよ」
ネルさんは、合掌した手を僕に向ける。
「とはいえ、彼が刺客でないとしても、敵か味方かはわからないんだから、気を許してはいけませんよ、ネル」
レーベンはネルさんにそう言うと、
「あなた、名はユートでしたね」
僕に険しい顔を向けた。
「は、はい。そうです」
何もかもを見通すようなその眼に、僕の声はうわずった。
「ならばユート。あなたがここへ来た経緯を、嘘偽りなく教えてください」
正確に、最後にそうつけ加えたレーベンの圧に負けて、僕は昨日からのことを包み隠さず離すこととなった。
「そっかァ、でも海に船ごと沈んだのなら、探すのも大変だよね」
所詮他人事なので、僕は呑気に答えた。
するとネルは、訝しい顔で詰め寄ってきた。
「お前、まさか王都からの使者じゃないよな」
「え? 僕が?」
「だって、おかしいだろう。こんなへんぴな村に来るなんてよ。ふつう、異世界に召喚されるのは勇者か聖女だぞ。正直に言ってくれ。この俺を捕まえに来たのか?」
やつれてはいても、流石に元勇者だ。エグいくらい、凄味がある。
「い、いや、そんな……」
僕は顔の前で、違うと手をふった。
「だから、そんなに怖い顔をしないでよ」
「そうやって、誤魔化すつもりか。そうか、俺をだまし討ちするつもりなんだろ!」
ネルさんの顔がさらに凄味を増した。
「だから、違うって言ってるじゃってるじゃないですか!
「くそッ、その大福みたいな顔に、油断しちまったぜ」
「だ、大福みたいな顔って、どんな顔ですか!」
「自分の顔を、鏡でみてみろ!」
勝手に勘違いし、そのうえ毒まで吐かれて、さすがに僕は腹が立った。
そしてネルさんと僕は、しばらくのあいだ言い争いをしていた。
それだけに、人が入ってきたことに気づきもしなかった。
「何の騒ぎですか? ネル」
その声に、ハッとして顔を向けると、ネルさんと同じくたい背の高く、眼鏡をかけた男が入ってきた。
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その眼鏡男を見て、僕がそんなことを思っていると、
「レーベン! 大変だ!! 王都からの刺客だ!」
ネルさんが、その男に叫ぶように言った。
「刺客だって? いったいどこに」
その男は、眉根を寄せてネルさんに訊いた。
「ここ、こいつだよ! この大福が、俺らを捕らえにきたんだ!」
ネルさんは、僕の右腕を掴んだ。
「この彼が刺客だって? とてもそうは思えませんね」
眼鏡男――レーベンは、眼鏡越しに僕をまじまじと見て、ノー、と首をふった。
「あたり前だよ。僕は王都なんて知らないし、君たちがお尋ね者だってことも、知ったのはいまだよ」
僕は怒りを露わにして言った。
「フン、白を切りやがって。レーベン、お前の鑑定眼でこいつを見てみろ! それではっきりとする」
「鑑定でもなんでもやってください。勘違いもはなはだしいということが、よくわかると思いますよ」
僕はそこに仁王立ちした。
「フー、無駄だとは思いますが、まあいいでしょう。では――えっと、Lvが5……。攻撃力は150だし、魔力に至っては50しかありません。いくらなんでも、こんな弱い刺客を王都が送ってよこすわけがありませんよ。」
レーベンが言う。
「うむむ、では、弱いけれど、むちゃ強い聖獣がついているとかはないのか」
「いえ、それもないですね。私の鑑定眼はパーフェクトですから」
それを聞いて安心したのか、ネルさんはほっとした顔になり、
「疑って悪かったな」
僕に顔を向けてそう言った。
「あのさ、ネルさん、僕のこと大福みたいな顔って言ったよね」
それを聞いてレーベンが、
「大福? 何ですか、それは」
不思議そうに、そう訊いた。
「え? あ、それは、俺たちのいた世界の食いものだ。なァ、ユート」
勘違いしていたことを申し訳ないと思っているのか、さっきまで鬼の形相だったくせに、ネルさんはやたらニコニコしていた。
「フン!」
僕はネルさんから顔を背けた。
「おいおい、いつまでもすねるなよ」
ネルさんは、合掌した手を僕に向ける。
「とはいえ、彼が刺客でないとしても、敵か味方かはわからないんだから、気を許してはいけませんよ、ネル」
レーベンはネルさんにそう言うと、
「あなた、名はユートでしたね」
僕に険しい顔を向けた。
「は、はい。そうです」
何もかもを見通すようなその眼に、僕の声はうわずった。
「ならばユート。あなたがここへ来た経緯を、嘘偽りなく教えてください」
正確に、最後にそうつけ加えたレーベンの圧に負けて、僕は昨日からのことを包み隠さず離すこととなった。
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