勇者に溺れた魔王様

世夜

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小さなてのひら

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『ルーちゃん…貴方は私の希望なの…。貴方には沢山の才能があるわ…。ちゃんと使うのよ…その才能を…。絶対に…絶対に…。』
ラディのお母さんはこの言葉が口癖でした。『貴方ならできる。』『貴方は成功する』お母さんは希望を抱いていました。希望…というよりもっと黒くて歪んだものでした。お母さんはラディを自分の子供として愛情を注いだことはありませんでした。生まれた時から、その姿を見た時から、お母さんにはラディは映っていませんでした。映っていたのは、自分の顔でした。お母さんはラディを第2の人生と考えていました。お父さんは、お母さんが狂っていく事には気付かず、ただ隣で笑顔を浮かべているだけでした。お父さんは笑顔以外の顔はずっと、みせませんでした。
テストでは100点を取りなさい。運動でタイムを計る時は誰よりも速い記録を出しなさい。ラディにとっては、どれも難しくありませんでした。当時ラディは人間でいうところの8才でした。魔界中の誰よりもすごいラディでした。頭脳も、運動も、全てにおいて魔界1でした。まだ幼いラディですが、この時には敵はもう魔界からはいなくなっていました。
1つ欠けてる物があるとすれば、愛情でした。ラディは沢山の人から褒められました。しかし、親からは一度も褒められた事はありませんでした。沢山の他人の言葉なんて、いくら聴いても嬉しさが持続しませんでした。ラディはたった2人のお父さんとお母さんから褒められたいのでした。お父さんは笑顔です。しかし、いつもニコニコしているだけで、何を思っているのかを一切言いませんでした。お母さんは話してくれません。だって、お母さんにはラディが自分に見えているのですから。話しかけてくれる時は、いつも私を見ていません。見ているのはお母さん自身。話しかけてくれていると思っていたのは、ただの自己暗示でしかありませんでした。
ラディはお母さんを殺しました。魔界では、魔族を殺したら牢屋に入れられます。ですのでラディも牢屋に入れられました。しかしどうしたことでしょう。ラディが牢屋に入れられた時間はたったの3分でした。魔族はほとんどの者が2度死にます。つまり、一度だけ生き返るのです。例外もありますが、生き返るまでの時間は30秒くらいです。お母さんは人生を取り戻すために、交渉をしました。牢屋から出ました。履歴ももみ消しました。お母さんは安心していました。人生が牢屋で過ごす事にならないようになったことを。
ラディはとても沢山の才能に恵まれた魔族でした。しかし、家族の愛情を知らぬまま育ちました。
シエラはどうでしょうか…シエラはとても裕福とは言えない家庭に生まれました。才能もありませんでした。毎日毎日畑仕事を手伝っていました。体力だけはついてきました。お母さんとは毎日食事の時に話しました。嬉しかったこと。不満のあること。些細な変化まで、心ゆくまで話しました。お父さんは楽しい性格でした。畑仕事を終わらせると、急いで帰ってきて、抱きついてくるのでした。家族と過ごす時間は沢山ありました。ある日、畑が荒されていました。いよいよ収穫だという作物が無残な姿になっていました。残っている物を売っても、少ししかお金になりませんでした。貯金していたものはありましたが、しばらく食卓は質素はものとなりました。それでも両親はシエラに栄養をといって、自分たちの分から少しずつシエラに分けました。シエラは両親にとても感謝していました。沢山勉強をして、体力をつけて、家の手伝い、畑仕事、なんでもしました。やがてシエラは秀才となりました。中学校からですが、進学することとなりました。シエラはそこでいじめられました。理由は、労働階級だからです。しかし長くは続きませんでした。シエラの魔法で支配下に置いたのです。ラディと会うのはそれから日はたちませんでした。
ラディは愛情というものに興味がありました。知りたいと思いました。それと同時に羨ましく思いました。シエラに惹かれました。
シエラは沢山の恵まれた才能と権威を欲しがりました。そして、少しだけ、恨みました。なぜここまで恵まれていて何かに飢えているという顔をしているんだと、怒りに満ちました。同時にラディに興味を持ちました。
2人は過去を話す事はほとんどありませんでした。しかし、持っているもの、持っていないものの溝にはまったのか、パズルのようにくっつきました。
2人はいつも行動を共にするわけではありませんでしたが、それでも、心が落ち着く場所は2人共同じでした。隣にいるとそれだけでその場所は安心できる場所となりました。
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