【完結】Switchなんて聞いてない──氷のエリート様が年下の溺愛Domに溶かされるまで──

牛丸 ちよ

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新しい生活

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 朝、起き抜けに頭痛を感じて顔をしかめる。ここのところ調子が良くない。環境の変化にいまさら疲れが出たのだろうか。
 熱がないことを確認し、いつも通り出社することにした。

 働いていると頭痛を忘れる。帰宅する頃には治ったような気がしていつも通りのルーチンで就寝した。すると翌朝も同じ頭痛を感じ、怪しく思った。鈍い吐き気もある。
 だがまだ働けないことはない。洗面所で朝の支度をしてリビングへ向かった。

「顔色、よくないですね」

 ソファでコーヒーを飲んでいた千裕が、俺を見るなり医者の顔になる。

「このくらいなら平気だ」

 朝食を断って玄関に向かおうとしたが、めまいがしてフラついた。とっさに壁へ手をつく。

「大慈さん!」

 浮遊感が落ち着くのを待っていると、唇に変な感触があった。指で触れてみれば鼻血が出ている。
 風邪で鼻血なんか出るか? さすがに戸惑う俺とは反対に、千裕は何かに気付いたようだった。

「今すぐ病院に行きましょう」

「ただの鼻血だぞ」

「大慈さん」

 たしなめるように名前を呼ばれ、相手に譲る気がないことを悟った。観念して頷く。

 会社に連絡している間に、千裕が手配したタクシーが到着する。
 連れられた先は近くの病院──内分泌内科だった。

 千裕がロビーで待っている間、俺は検査を終えて診察室で結果を聞く。
 医者は確信がある様子で言った。

転換スイッチしていますね」

「はい?」

「あなたのいまの第二性はDomです。Subの抑制剤は服用を中止してください」

「不調の原因は、抑制剤?」

「そうです。服用を止めれば頭痛も治りますよ」

 Switchならそういうこともあるらしい。あっさりと告知され、「おだいじに」と診察室を追い出される。

 思いもよらなかった展開に戸惑いを隠せないまま、ロビーに戻った。

 ベンチの千裕が俺に気付き、心配そうに立ち上がる。

「千裕」

 彼の前に立ち、じっと見つめた。
 名前を呼んだきり黙った俺に、彼はうろたえた顔をする。俺の状態に対する予想が外れたのかと不安がっているようだ。

「まさか、なんて言われたんですか?」

「……《Kneelおすわり》」

「えっ」

 千裕はその場にぺたんと座り込んだ。
 DomがDomに──しかも彼ほどの強いDomなら、膝をつかされる経験はそうそうない。何が起きたのかすぐには飲み込めず、唖然としている。
 それから俺を見上げ、咳払いした。

「……なるほど。やっぱりですね。良かった。だからといって僕で試さないでください」

 バツが悪そうに立ち上がる彼を無視して、俺は俺の手を見る。

「戻っている……」

 俺が、Domに。
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