死にたがりオーディション

本音云海

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死にたがりオーディション

動揺

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「あっ…」


玄関に行くと、母さんと父さんの靴はすでにそこにはなかった。

…ということは…二人はもう出かけたってことになる。


「…よ、良かった…」


ほっとしたのも束の間、本当の問題はここからだった。

開けると言った手前、今更開けないわけにもいかない。

…しぶしぶ玄関の扉を開ける。


「…あっ兎馬くん…」

「終夜くん…」


まさか、こうして家に来るなんて思いもよらなかった。

…電話で済まそうと思っていたのに。


「…あの、大丈夫?」

「え。なにが?」

「いやさっきの電話…ちょっと慌ててたみたいだったから…何かあったのかなって」


…もしかして、心配してくれてるのかな?


「ううん、大丈夫だよ。単なるオレの早とちりだから心配しないで」

「そ、そう…?」


終夜くんは不安そうな顔でオレを見る。

とはいえ、いくらなんでもについては…言えない。

…余計な心配かけたくないしね。



「…じゃあ、上がってもいいんだよね?」

「!う、うん…っ」


その時、オレは見てしまった。

終夜くんの手元にあるーーあの資料の存在を。

…わざわざビニール状の封にいれて、大事そうに両手に抱えちゃって。


「…先、二階行ってて。オレの部屋…二階だから」

「終夜くんは来ないの?」

「オレはその…飲み物持ってくるから!ちょっと待って」

「…わかった」



ひとまず終夜くんを先に行かせたのは良いとして…オレはどうしたものかと頭を抱えていた。

とりあえず飲み物を取りにキッチンに向かう。

飲み物はそうだな…無難にオレンジジュースでいっか。


「…コップ、と」


こんなのは単なる時間稼ぎにしかならないことくらい、オレにもわかっていた。

無駄な抵抗と言われれば、そうかもしれない。

実際にオレの答えは未だ変わらない。

だから…問題はどう言えば終夜くんは納得してくれるかなんだよなぁ…。


「…」


たかがジュースの準備、そう時間はかからない。

けど心の準備くらいは出来たと思う。


「……さて、いくか」


















部屋を開けると、終夜くんはベッドの上に座っていた。


「あ、兎馬くん!ごめんね…どこに座っていいか分からなくて…」

「別にいいけど…」


ほんの少し戸惑ったけど、気にしないことにした。

持って来たジュースを机において、そのまま椅子に座る。

…いくらなんでもオレまでベッドに座るわけにはいかないし。


「ジュース、ありがと」

「…うん」


まずは、オレ達二人ともジュースを手に取り一口飲む。

…なんかこの流れ妙にデジャブを感じるなぁ…



「…あの、兎馬くん」

「なに…?」


最初に切り出したのは、終夜くんだった。

何を言われるかは、既にわかっているんだけど。



「その…答えを聞かせてを聞かせて欲しいんだ」

「…っ!」


案の定…だったわけだけど。

直球、で来たか…。

ああ…どうしよう、昨日のこともあるから…やっぱりどうしても緊張する。

…でも、いくら聞かれたところで答えは変わらないんだよね。

終夜くんには悪いけど…。




「…ごめん。やっぱり…オレは受けたくない」


今度はちゃんと…終夜くんの顔を見て言った。

目を見て、ちゃんと。



「………!」


…終夜くんは、一瞬驚いた顔をした後…そのまま俯いてしまった。



「ううっ…」


…俯いてるせいで顔は見えなかった。

けど…すするような声が聞こえてたことで…泣いていることが分かった。



「…ッ…」


…親友を泣かせてしまった。

心が痛い。

…けど、無理なんだ。
オレの頭のことしか心配してくれない両親だけれど…それでも、やっぱりオレにとってはーー



「………そっか。わかった…」

「終夜くん…っ!わかってくれたんだね!」

「うん、もう…

「え?」


…?わかってたこと?
なんか変な言い回しのような…。



「…だからね!前もって僕が、

「へ…?」


友達…紹介…?


「…はい、だからこれ!」


そう言って、終夜くんは手元に持っていた資料を手渡してきた。


「これなら、昨日も見たけど…」

「いいからいいから」


終夜くんは絶えずニコニコと笑っていた。


「…?」


疑問に持ちながらも、改めてその資料の入った封を手に取る。



「…え、…?」


するとそこには、こう書いてあった。



宛名には【月鎖兎馬様】の文字。



…何故か入原終夜の名前ではなくーーオレの名前が、記されていたんだ。
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