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死にたがりオーディション
焦り
しおりを挟む「なに…これッ…」
ー頭が混乱する。
分からない、分からない。
何で、どうして。
オレには身に覚えがない。意味が、分からない。
なん…で、オレの名前がーー
「なにって…兎馬くんの資料だよ?」
「で、でも…オレは資料請求なんて、してない…ッ!」
「ふふ…可笑しな終夜くんだなぁ。さっき言ったでしょ。友達紹介したって。話、聞いてなかったの?」
笑う、笑う。
屈託の無い笑顔で、終夜くんは嬉しそうに笑っている。
これまでも終夜くんは変なタイミングで良く笑っていた。
…おかしい?おかしいって、なんだ。何がそんなにおかしいんだ?
友達紹介なんてもの、オレは知りもしないのに。
知らなかったオレが、気づかなかったオレの方が、可笑しいの?
「…と、取り消して…ッ!」
それは、思わず出た言葉だった。
そしてオレはすがるような思いで、そのまま終夜くんの側に駆け寄った。
ー座っていた椅子が、その場に勢いよく倒れる。
無論、その衝撃で机に置いてあったジュースも床に溢れ落ちてしまう始末だった。
ベッドに座っている終夜くんを前にして、オレはなりふり構わずお願いすることしか出来なかった。
「…ねぇ、兎馬くんはさ…なんで自分が資料を受け取ることが出来たんだと思う?」
「…?何言って…」
突如、訳の分からない話をし始める終夜くん。
…その表情には、さっきまでの笑顔は既に消えていた。
「…答えは簡単だよ。それは兎馬くんも、僕と同じように死にたいと思ってるからなんだよ」
「ち、ちがう!!オレは別にーー」
ー否定。反射的に出た言葉とは言え、それは本心だった。
「ううん、違わないよ。じゃなきゃ、友達紹介なんて通るわけがないんだ」
「?どういう意味…?」
「…僕に資料見せた時に最初の一ページ目に書いてあったでしょ。このオーディションは現在死にたいって思ってる人のみ応募可能って、それは友達紹介でも一緒。」
「そ、そんなの…終夜くんが決めることじゃない…っ」
「うん…そうだね。それはあくまで、オーディション事務局の人が決めること、かな…」
オーディション事務局…?
「…ふざけないでよ…っ」
「僕は最初からふざけてなんかないよ。ただ僕は…後押ししただけ。兎馬くんのことだから意地になって、いつまでも受けてくれなさそうだったから…」
「だから、友達紹介?」
「うん…昨日、兎馬くんが帰った後、事務局からオーディションのことで電話がかかって来て…その時にそういう制度はあるのか聞いてみたんだ」
「…それで、何て言ってたの?」
「それがね!滅多にない例外なことらしいんだけど、あるにはあるんだって友達紹介!だから僕、これしかないと思って、つい兎馬くんの名前を…!」
「…経緯はわかったよ。もう今更終夜くんにあれこれ言っても意味ないってこともわかった」
「え…どういうこと?」
「さっき、電話で聞いたって言ってたでしょ?だったらオレもそのオーディションの事務局の人に聞いてみるっ」
「そ、そんなの無理だよ!できっこない!」
「何でそんなこと終夜くんに分かるの!?大体つい、なんて軽い気持ちで言ったんなら、間違いだったっていえば済むことかもしれないだろ!」
「で、でも…っ」
オレは慌てて、スマホを置いた机に向かう。
「ほら、早く電話番号教えてよ!」
「そ、そんな…っ!大体、資料だって来てるのに。」
「だから、それを返品するって言ってるの!そもそも友達紹介とか訳わかんない制度自体おかしいよ。しかも、それを終夜くんが持ってるなんて尚更おかしいじゃん!」
「…もうっ!なんでわかってくれないの!?資料請求が僕に来てるってことは、事務局が受理したってことなんだよ!?」
「ちゃんと受理したかどうかなんて、まだ分からないじゃん!証拠もないのにそんなこと言わないでよ!」
ー証拠なんてある訳ない。
この時のオレは本気でそう思っていた。
ない。そう…あるはずが、ない…と。
「…………証拠、ならあるよ」
「は…?」
だけど、それは違っていた。
論より証拠。
オレは、昨日、その証拠を目にしたじゃないか。
「………はい、これ兎馬くんに」
手渡されたの小さい茶封筒。
宛名は、資料と同じく月鎖兎馬様と書かれてある。
おそるおそる封を開ける。
…すると、一枚の写真がヒラヒラと舞い落ちた。
「ーー!?」
床に落ちた時、オレは写真に写っていた人物と目があった。
見覚えのある写真。
まさにこれは、昨日終夜くんから見せてもらった写真と同じだった。
…ただ、唯一違うところといえば。
この二人の人物が、この二人の、生首が、
紛れもなくオレの両親だということだけだった。
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