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死にたがりオーディション
強行
しおりを挟む「うわあああああああっ!!!」
思わず叫んだ。
ー目が合った、合ってしまった。
恐怖のあまりに身体が強張る。
「う、うそだ…うそだうそだうそだ…父さんと母さんが…っ」
ガクガクと震え、恐怖が収まりそうにない。
「兎馬くん…落ち着いて」
「…落ち着いて?何言ってんだよ…ッ…大体これも、何もかも、全部終夜くんのせいじゃないかッ!!!」
オレは終夜くんに掴みかかる。
首元を掴み、そのままベッドに叩き付けた。
「…と…兎馬、くん…」
苦しそうにオレの名前を呼ぶ。
首だけならまだしも、オレが馬乗りになって押さえ付けているものだから、より一層苦しいんだろう。
けど、オレはそこから降りようなんて気はさらさらなかった。
「…びっくりした?まさか、自分より小さいオレからこんなことされるなんて思いもよらなかったでしょ?」
「なん、で…っ…?僕はただ…兎馬くんの、力に…」
「…力になりたかった?そんなの、オレだって同じなんだよ!オレなんかと唯一仲良くしてくれた友達だったから…何か悩んでるなら、力になりたいって本気で思っていたんだ!」
「うう…っ」
掴んだ首に力を入れ、オレはそのまま言葉を続けた。
…ただ、力になりたかった、だけなのに。
「親友だって言ってくれたことも嬉しかった!オレにとっては、終夜くんが全てだったのに…っ!こんな、こんな形で裏切られて…っ!!」
いつのまにか、オレの目には涙が溢れていた。
この涙が、怒りの涙なのか、哀しみの涙なのかは分からない。
「と、うま…くん…」
だけど、終夜くんが既にもう限界なのは何となくわかってた。
このまま、殺してしまおうかと、本気でそう考えていたーー
その時、スマホに着信が入るのが分かった。
「で、出ない、の…?」
終夜くんは既にもうこの着信が誰のスマホから鳴っているのか、わかっている様だった。
現に、この着信はオレのスマホから聞こえてきた。
「…っ」
正直、迷った。
なんでこのタイミングで電話がかかってくるんだ。
オレには母さんと父さん以外に誰にも連絡先を教えていない。
終夜くんだけはあくまで例外として、唯一教えていた相手。
だから、誰かから電話がかかってくるなんて…絶対にあり得ないはずなんだ。
…じゃあ、この電話は…一体誰からかかっているんだ?
「…ッ」
コール音は止みそうになかった。
「…出た方が良いと思うよ」
終夜くんはこんな状態にもかかわらず、冷静にそう言った。
…きっと、終夜くんにはもう電話の相手が誰なのかも分かっていたんだと思う。
実際オレも、そうだった。
ベッドから降りて、オレはそのまま机に置いてあるスマホを取りに行った。
「…も、もしもし」
すかさず出た。
出ざる得なかった。
…そして、電話口の相手は…案の定、オレの予想してた相手だった。
「死にたがりオーディションの事務局のものですかーーこちら、月鎖兎馬様のご連絡先でお間違いないでしょうか?」
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