追放された俺は逆行転生した〜TS吸血姫は文化を牛耳る〜

石化

文字の大きさ
6 / 49
第1章至る平安

何年後?

しおりを挟む

起きた。
朝の日差しに小鳥の鳴き声。爽やかな陽気だ。季節は初夏あたりだろうか。

記憶は山神様と呼ばれていた頭が8つある蛇を倒したところで終わっている。

あのあと、毒入りの血を飲んで、意識を失ったんだったな。

思い返すと間抜けだった気がしてくる。

もう少し吸血衝動を抑える努力をした方がいいかもしれない。

まあ、起きたんだしもういいか。
クシナダに戦勝報告しに行こう。

そういえば、あの蛇の死体がどこにもないけど、誰か片付けたのかな。



山をくだって村について、俺は違和感を覚えた。

竪穴式住居ばかりだったはずの村に、木造のきちんとした住居が建てられているのだ。
その中に、一際目立つ建物がある。
よくみるとそこはクシナダの家があったはずの場所だ。

意識を失う1日前にいたから流石に覚えている。

⋯⋯ まるで浦島太郎のような体験だ。そんな感想が頭に浮かぶ。

浦島太郎って誰だっけ。
前世の記憶の気がするけど、思い出せない。


くそう。クシナダはなんでもするって言ってたんだぞ。せめて一目会いたい。

潜り込むか。潜り込もう。

俺は一瞬で犯罪者になる決意を固めた。
あの家のクシナダの親は、俺を罠にはめて捕まえたんだしおあいこだと思う。


そういや、山神と戦ってた時に服かなり破けてた気がするけど、いつの間にか直ってるな。
無意識に血で作ってるとかかな。ありうる。自分のスペックをまだ把握できてないし。あとでやってみよう。

とりあえず最初は正攻法で行こう。入れなかったら、壁を破壊しよう。
どんどん思考が人外じみてきている気がする。気のせいだ。

門を叩いた。
この前の焼き直しだ。
⋯⋯ 今度は不用意にご飯を食べないようにしないと。

それだけは固く心に刻む。

「はい。」

扉が開いて、気弱そうな男が顔を出した。

⋯⋯ 。見覚えがない。強いていえば、かすかにあのクシナダ父の面影がある気がする。

「この家にクシナダという人はいませんか?」

「⋯⋯ 聞いたことないです。人違いでは?」

男は、寝耳に水とでも言った調子でそう返してきた。

そう言われるとこちらも強く出れない。
嘘は言っていないようだし。


うーん。

様々な違和感が俺の脳裏を刺激する。

まず、倒したはずの山神の蛇の死体がどこにもなかったこと。
次に、村の様子が様変わりしたこと。
クシナダのことを知らない様子の男。

⋯⋯ 。これ、俺の休眠期間がめちゃくちゃ長かったということでは。

蛇は、分解されたんだろうし、村は発展したんだろう。
そしてクシナダはとっくの昔に死んでしまった。
そういうことなのだろう。

ちょっとどうだかなと思わなくもないが、今の俺は吸血姫だし、そのくらいの時間休眠しててもおかしくない。
クシナダは何でもするって言ってくれたのになあ。

「あのー、どうしました?」

気弱そうな男は固まってしまった俺を恐る恐る眺めながら、確認の言葉をかけて来た。

流石に不自然だったか。どうせだったら、そうだな。都会の場所でも聞いておくか。結局クシナダには聞けなかったし。

「いえ。お聞きしたいのですが、近くの大きな町に行くにはどうすればいいでしょうか。」

「ここも、割と大きいんですけどね。でも、そういうことなら、西に向かえばいいですよ。」

「⋯⋯ 。西はどっちです?」

「わからないんですか? どうやって生活してきたんだ⋯⋯。あっちです。」

おい今かなりの煽りを受けた気がするぞ。見た目に反して口が悪いなこいつ。

「あと、そこにはヤガミという姫がいるので、これからこのオオナムジが求婚に行くから待っていてくれと伝えてくれませんか?」

そしてリア充か。⋯⋯ まあ、恋愛小説も悪くはないし、暇があったら伝えておこう。

「善処します。助かりました。」

とりあえずお礼は言っておく。

何百年経ったか知らないが、ようやく本筋に戻ってくることができた。

都会で、小説もしくは、紙の存在を確認する。

時代が降ったのなら、小説が書かれるようになった可能性も高い。

結果オーライってやつだ。

「では。」

「ええ。兄達に見つからないうちに、早く行った方がいいですよ。あの人たちは女好きなので。」

「心します。」

襲われても何とでもなるだろうが、心遣いは受け取っておこう。

足がかりを得た俺は意気揚々と目的地へ向かうことにした。

るんるん気分で田んぼの間の道を歩いていく。

「あの女激マブじゃね。」

「因幡の方に向かってるみたいじゃん。」

「求婚の用意を整えよう。」


途中でそんな声を耳に拾った気がしたが、俺の心は、次の街へ行くことでいっぱいになっていた。

「俺、因幡に向かって女口説いてくるわ。」

「は?俺が先だし。」

「彼女は私のものだ。」


家に帰ってきた兄達が、口々にそんなことを言ったので、オオナムジは焦った。

このままでは、ヤガミ姫が取られてしまう。

彼は顔を青くして焦る。
基本的に兄達は横暴だ。強引に話を進められたらまずい。

早く行かなくては。

しかし、抜け出そうとした彼は兄達に見つかり、問い詰められ、気絶させられてしまう。

意識を取り戻すと、すでに兄達は出発した後だった。彼は取るものとりあえず駆け出した。

彼が求婚対象の行き違いに気がつくことはなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...