追放された俺は逆行転生した〜TS吸血姫は文化を牛耳る〜

石化

文字の大きさ
7 / 49
第1章至る平安

恋バナ

しおりを挟む
言われた通りに西に進んで行くと、街が見えてきた。
とはいえ、さっきまでいた農村の3倍くらいの大きさでしかない。
市場が開かれているらしき広場もないし、少し規模が大きいだけの農村かもしれない。

俺は落胆を隠せなかった。

ようやく本に繋がる手がかりが見つかったと思ったのに。

気を落とすのはまだ早い。この街をとりあえず見回ってみよう。

木造に藁葺きの家。高床の倉庫に、見張り台。
一つの街として重要な部分はきちんと備えているようだ。

外からは市場として見えにくいが、露店も少しはあって、野菜を売っていた。

本屋はどこにも見当たらない。
一番古い紙はパピルスだろ?パピルスくらいなら作れそうな感じなんだけどな。
そのくらいの文明レベルはありそう。

仕方がないから、ヤガミ姫という人の家を訪ねるか。

仮にも姫と名がつく御仁だ。
もしかしたら庶民には手の届かないものであるところの本を所持しているかもしれない。


街の人に居場所を聞いたら簡単に教えてくれた。
その代わりこちらの名前を熱心に聞きたがっていたので夜と答えておいたけど、なんだったんだろう。

まあいいや。

薄々気づいていたが、この街で一番目立つ建物が、彼女の居場所だった。坂の上にあるということと、高床式の建物であるという二点で、他とは隔絶している。あそこに住むなんて怖くないんだろうか。支える板が崩れてしまったら一瞬で死んでしまう。

大丈夫だから住んでいるんだとは思うけど、なかなか勇気ある御仁だなと思う。

少なくとも俺は無理だわ。死にはしないけど不安で眠れなくなりそう。俺が繊細ってより、ここに住んでいる人が豪胆なだけだろうけど。

ちょっと、階段上がるのが怖いな。今は意識が戦闘モードじゃないし、割と風も吹いているし。

風に煽られて落ちたら洒落にならない。化け物だってバレてしまう。

慎重に行こう。

幸いにして警備の人とかはいないみたいだ。まだそこまで社会が発達していないのかな。
あり得る。

ゆっくりと歩みを進めて、家の前に作られた床板スペースで人心地をつける。

冷静になるとここも割と危ないな。

早く入らせてもらおう。

「ごめんください。」

「はーい。」

顔を出したのは、お手伝いさんらしきおばさんだった。
いや、母親かもしれない。

「ヤガミ姫はいらっしゃいますか?」

「おりますが、あなたは?」

「私は夜と申します。オオナムジ様からの伝言を預かっております。」

「へえ。お聞きしましょう。」

⋯⋯俺を中に入れない構えだな。いきなり訪ねてきた謎の女だ。そりゃ怪しいもんな。
このまま引き下がるのも悪くはない。
だが、一番確かめたいのはこの街で一番権力を持つ姫が、書物を持っているかいないか、だ。
なんとか言いくるめて、中に入って観察したい。

「オオナムジから直接姫にお伝えするようにと仰せつかっています。」

言われてないけど。
それでもこれで信ぴょう性は増したはずだ。

「今、オオナムジって言ったわよね!」

奥から姫さまがすっ飛んできた。耳が良い。
ちょっともう少し落ち着きを持った行動をして欲しかった。さっきまでの言い訳じゃ入れないじゃん。
ここで直接言えば良くなっちゃってる。

いや。まだある。ここから逆転する手立ては残っている。

どうにか中に入れてもらう方法だ。

一番いいのはこのおばさんがいなくなることだ。彼女さえしのげば、ヤガミ姫は簡単に言いくるめられそうだ。

「はしたないですよ。」

たしなめるおばさん。

多分従者だな。

「お母さんは黙ってて!」

違った。見立て違いだ。恥ずかしい。

「それで、オオナムジはなんて?」

「できれば二人っきりでお伝えしたいです。」

「そうね。あなたとオオナムジの関係から聞く必要がありそうだし。」

俺の上から下までジロジロ見ながらヤガミ姫は言う。

俺とあいつの関係を怪しんでいるようだ。
少なくともヤガミ姫も好きなのは間違いなさそう。今の俺は美しい女の姿をしているから、不安になったのだろう。

オオナムジとは両思いのようだ。

⋯⋯ 恋愛小説の参考にするためにもう少し観察していこうかな?
こう言う人の感情の揺れ動きを観察することでより魅力的なキャラクターが作れるようになるはずだ。

「姫の部屋に上がらせていただけませんか?」

「いいわ!」

「姫!」

「いいでしょ。男性って訳でもないんだし。」

「それはそうですが⋯⋯ 。くれぐれも気をつけてくださいよ。」

あっ。押し通せた。ワンチャン気絶させようかなと思っていたから助かった。

「お邪魔させていただきます。」

ようやく、風の強い外から中に入れる。
一安心だ。



上がった部屋には、俺が期待していたような本棚など存在していなかった。

どでんと鎮座した機織り機が目を惹く程度だ。

「純粋な疑問なんですけど、本って持ってませんか?」

「何よそれ?」

「わかりました。」

⋯⋯ ダメみたいですね。
ダメじゃん。割と都会なここで一番の権力者の娘が本について知らないとしたら、本が作られていると考えることはできない。無理筋だ。

「で、オオナムジの伝言ってなによ?あとあなた達の関係も教えて。」

彼女は気になって仕方がない様子だった。

まあ、口実とはいえここに潜り込むのに役に立ったし、伝えるのはやぶさかではない。

「これからこのオオナムジが求婚に行くから待っていてくれとのことです。」

「求婚?!あの優柔不断男が?」

「確かに言ってましたよ。」

「信じられない⋯⋯ 。」

口ではそう言っているけど、隠しきれない喜びの感情が彼女の表情にはあふれていた。

幼馴染的な関係だったんだろうな。

「もう一つの質問に答えると、私は所用があって、オオナムジの家を訪ね、それからこちらに来る用事があったのでそのついでに伝言を頼まれただけの女なので、彼と特別な関係があるという訳ではないです。」

「そうよね。わかってたわ。」

露骨にホッとした顔をしている。うん。ずいぶんわかりやすくて可愛らしい姫だな。

「良ければですが、彼と姫の馴れ初めを聞かせてもらえませんか?」

「えー。恥ずかしいなー。」

これは、もっと聞いてというブラフだな。
恋話を始める前の女子がよくやるやつだ。

「そう言わずに。」

「仕方ないわね。」

ちょろい。

という訳でn番煎じの恋物語を聞くことになった。

当事者から直接聞くのはやっぱりいいな。

表情の移り変わりを眺めるのが楽しすぎる。

恋愛は主軸とは言わないまでも、そこそこ取り入れて書くのが正解かもしれない。人間的な魅力を書く上では一番役に立つだろう。

そんなことを考えながら俺は長くなっていくヤガミ姫の話を聞くのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...