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三章 破滅のタルタロス
タルタロス侵攻 5
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一方場所は少し離れ、正規の軍がミヤコで撹乱している中になる。
「ふぅっ!」
剣に付与された風により、目の前の影……敵を吹き飛ばす。他にも二つの短剣を巧みに扱い、抵抗する影を素早く斬る兵、魔術師と連携して建物を破壊する兵など役割分担がしっかりとされていた。
「……この地区は落ち着いたか。一旦休む場所を探すぞ」
俺はそう言うとガラガラと崩れていく建物と、それに押し潰される人だった影を見ながら安全地帯を探し始めた。
(ここは崩れているな。……ここも崩れて……いや、この瓦礫は影になるな。少しだけ休むにはちょうどいいだろう)
そう分析すると、瓦礫を少しだけ退かして八人がギリギリ忍べるようなスペースを作る。
「ここで少し魔力と武器の確認をするぞ」
「「はっ!」」
敵地の真ん中だが、無駄に兵は死なせられない。そう思いながら手に持った剣を見る。
(刃こぼれ無し、付与による負荷もまだまだ耐えられそうだな)
そう思ってみていると、仲間の一人が尋ねてくる。
「あの、隊長」
「どうした?」
その仲間は衰弱もしておらず、至ってまだまだ戦えそうな槍士だった。どこか気まずそうに聞いてくる彼女に少し気をかける。
「……何か、引っかかることでもあったか?」
「いえ。その……私達はこういう事には多少なりとも慣れています。人を……影を倒すのも、撹乱するのも……外敵から身を守るのも。ですが、隊長のお子さんやその友人は……」
「……そういう事か」
最後渋った彼女の言葉を察して天を見上げる。相変わらず時間も天候も分かりはしない、夜空でもない、不気味な空だった。
「正直な話だが……耐えられない、だろうよ。今は戦って生き残るという事を考えているから行動出来るが、全てが終わった時……その反動が来るんじゃねえか、ってね」
「……そう、ですよね」
そう言うと皆が俯く。軍議で薄々勘づいている者もいた。イシュリア王の声明に魔力が込められていたことも気付いていた。
なのに、彼らは来た。本来なら抵抗することの出来ない魔力を受けたはずなのに。
「……イシュリア王はよ、軍議で提案されてもあんな小さな子供には戦わせたくなかった……そう思ってるんじゃねえかな。俺たちと同じで」
そう言うと別の兵士が頷く。
「本来は俺たちが担うべき領分。……なのに、まだ学院生が参加して手伝うなど……そもそもイシュリア王の洗脳じみた魔力をどうやって解いたのですか?」
それについてはもう答えはひとつしか思い浮かばなかった。一つ大きな息をつくと、答える。
「……俺の、息子だ」
「息子……というと、フード殿……」
「アイツは俺の自慢の息子だ。魔術学院に一年飛び級で首席入学、フードとしての活動。……いや、それは褒められたことじゃないがな。とにかく、自慢の息子だ。……アイツが打ち消したんだろうよ、あの魔力を」
その言葉に少しどよめく部下達。しかしそれ以外に彼らが抵抗する手段など無いはずだ。
「王の魔力を……感じ取って打ち消した、というのですか……!?いくら何でも……」
「……出来る。アイツには出来るんだ。五歳、まだ五歳だ。だがその五歳にフードという魔力のハンデを負ってもなお、訓練兵と共に鍛錬を積み、圧倒した。気づいてさえいれば、対抗する事ぐらいアイツは平気で出来るだろうよ」
最終段階に組み込まれた息子を思いながら少し俯く。それを察したのか、また別の兵士が話しかける。
「……確か、フード殿は城攻め……でしたね」
「ああ。軍の精鋭とアグラタム様、イシュリア王。そして俺の息子だ」
「……やはり、不安はありますか」
「当たり前だ」
ふぅ、とまた息をひとつ大きく吐いて話し出す。
「……最初から分かっちゃいたんだ。俺の息子は……俺では勝てないってな」
「な……隊長で勝てない!?」
動揺する兵に頷いて続ける。
「確かに俺には特異能力はねえ。その分努力と系統を積み上げてここまで上がってきた。……だがアイツは違う。特異能力をまるで……そう、扱い方を最初から知っていたかのように使い、系統や属性の戦い方も熟知していたような動きをしたんだ。……これが入学前だぜ?そして、俺は手加減したとはいえ……負けた。もし本気で手合わせしたらアイツはどんな手を使っても勝ちに来るだろうよ」
「……神童……」
ポツリと呟いた女兵士に頷く。
「ああ、アイツは間違いなく神童だ。……けどな、不安もあるさ。当然だ。俺とあいつには決定的な違いがあるからな」
「……それは?」
「影……人を殺した、という経験と場数だ。そしてその魔力量。……神童だ何だと言ってもまだ五歳だぜ?人を殺して……何も思わねえはずがない。それこそ達観していればだが、俺はそうは思わねえ。以前友達を家に連れてきてな。本当に楽しそうだった。自分の誕生日の日は友達と一緒に祝ってもらうって手紙も寄越した。……人並みの生活を送っているんだよ、どんなに強くても、な」
そう言って休憩は終わりだ、とばかりに立ち上がると最後に一つだけ質問が飛んでくる。
「……生きて帰ってくる、それは確信しているのですか?」
それに対して俺は頷いた。
「ああ。アグラタム様やイシュリア王に護られるからじゃない。……アイツは、大事な約束は絶対破らないんだ。だから信じている」
「ふぅっ!」
剣に付与された風により、目の前の影……敵を吹き飛ばす。他にも二つの短剣を巧みに扱い、抵抗する影を素早く斬る兵、魔術師と連携して建物を破壊する兵など役割分担がしっかりとされていた。
「……この地区は落ち着いたか。一旦休む場所を探すぞ」
俺はそう言うとガラガラと崩れていく建物と、それに押し潰される人だった影を見ながら安全地帯を探し始めた。
(ここは崩れているな。……ここも崩れて……いや、この瓦礫は影になるな。少しだけ休むにはちょうどいいだろう)
そう分析すると、瓦礫を少しだけ退かして八人がギリギリ忍べるようなスペースを作る。
「ここで少し魔力と武器の確認をするぞ」
「「はっ!」」
敵地の真ん中だが、無駄に兵は死なせられない。そう思いながら手に持った剣を見る。
(刃こぼれ無し、付与による負荷もまだまだ耐えられそうだな)
そう思ってみていると、仲間の一人が尋ねてくる。
「あの、隊長」
「どうした?」
その仲間は衰弱もしておらず、至ってまだまだ戦えそうな槍士だった。どこか気まずそうに聞いてくる彼女に少し気をかける。
「……何か、引っかかることでもあったか?」
「いえ。その……私達はこういう事には多少なりとも慣れています。人を……影を倒すのも、撹乱するのも……外敵から身を守るのも。ですが、隊長のお子さんやその友人は……」
「……そういう事か」
最後渋った彼女の言葉を察して天を見上げる。相変わらず時間も天候も分かりはしない、夜空でもない、不気味な空だった。
「正直な話だが……耐えられない、だろうよ。今は戦って生き残るという事を考えているから行動出来るが、全てが終わった時……その反動が来るんじゃねえか、ってね」
「……そう、ですよね」
そう言うと皆が俯く。軍議で薄々勘づいている者もいた。イシュリア王の声明に魔力が込められていたことも気付いていた。
なのに、彼らは来た。本来なら抵抗することの出来ない魔力を受けたはずなのに。
「……イシュリア王はよ、軍議で提案されてもあんな小さな子供には戦わせたくなかった……そう思ってるんじゃねえかな。俺たちと同じで」
そう言うと別の兵士が頷く。
「本来は俺たちが担うべき領分。……なのに、まだ学院生が参加して手伝うなど……そもそもイシュリア王の洗脳じみた魔力をどうやって解いたのですか?」
それについてはもう答えはひとつしか思い浮かばなかった。一つ大きな息をつくと、答える。
「……俺の、息子だ」
「息子……というと、フード殿……」
「アイツは俺の自慢の息子だ。魔術学院に一年飛び級で首席入学、フードとしての活動。……いや、それは褒められたことじゃないがな。とにかく、自慢の息子だ。……アイツが打ち消したんだろうよ、あの魔力を」
その言葉に少しどよめく部下達。しかしそれ以外に彼らが抵抗する手段など無いはずだ。
「王の魔力を……感じ取って打ち消した、というのですか……!?いくら何でも……」
「……出来る。アイツには出来るんだ。五歳、まだ五歳だ。だがその五歳にフードという魔力のハンデを負ってもなお、訓練兵と共に鍛錬を積み、圧倒した。気づいてさえいれば、対抗する事ぐらいアイツは平気で出来るだろうよ」
最終段階に組み込まれた息子を思いながら少し俯く。それを察したのか、また別の兵士が話しかける。
「……確か、フード殿は城攻め……でしたね」
「ああ。軍の精鋭とアグラタム様、イシュリア王。そして俺の息子だ」
「……やはり、不安はありますか」
「当たり前だ」
ふぅ、とまた息をひとつ大きく吐いて話し出す。
「……最初から分かっちゃいたんだ。俺の息子は……俺では勝てないってな」
「な……隊長で勝てない!?」
動揺する兵に頷いて続ける。
「確かに俺には特異能力はねえ。その分努力と系統を積み上げてここまで上がってきた。……だがアイツは違う。特異能力をまるで……そう、扱い方を最初から知っていたかのように使い、系統や属性の戦い方も熟知していたような動きをしたんだ。……これが入学前だぜ?そして、俺は手加減したとはいえ……負けた。もし本気で手合わせしたらアイツはどんな手を使っても勝ちに来るだろうよ」
「……神童……」
ポツリと呟いた女兵士に頷く。
「ああ、アイツは間違いなく神童だ。……けどな、不安もあるさ。当然だ。俺とあいつには決定的な違いがあるからな」
「……それは?」
「影……人を殺した、という経験と場数だ。そしてその魔力量。……神童だ何だと言ってもまだ五歳だぜ?人を殺して……何も思わねえはずがない。それこそ達観していればだが、俺はそうは思わねえ。以前友達を家に連れてきてな。本当に楽しそうだった。自分の誕生日の日は友達と一緒に祝ってもらうって手紙も寄越した。……人並みの生活を送っているんだよ、どんなに強くても、な」
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