異界の師、弟子の世界に転生する

猫狐

文字の大きさ
129 / 198
三章 破滅のタルタロス

タルタロス侵攻 4

しおりを挟む
「……ここが、タルタロス」
門を抜け、異界へと辿り着く。門を通った感覚は少し妙だった。感覚で表現するなら一瞬だけ眩む、という感じだろうか。身体がどこかへ移動するだけでなく失って構築されるような、変な感覚。
私はそう感じた。
とはいえ留まっているだけでは居られない。唯一現状を見ているミトロに声をかける。
「ミトロ、指示頼んでいい?」
その声に呆然としていた他の皆もミトロの方を向く。門から離れた所に移動したミトロに着いていくと、彼女は頷いた。
「わかりました。とにかく私達の役割は撹乱、そして生還。万が一にもはぐれた場合は空へ目立つものを打ち上げてください。……出来れば、魔法で」
私も含めてクロウやニア達が頷くとミトロはこっちだ、というように走り出した。
少しして、居住区だろうか。そんな感じの場所に辿り着くとミトロは建物に向けて魔法を放つ。
「……え、撹乱じゃないのか?」
ショウがそれでは殺してしまう、と言わんばかりの声で言うとミトロは答える。
「建物が無事じゃないと分かれば外に出てきます。そうすれば勝手に自ら混乱状態に引き摺りこんでくれるのですよ。それに慢心してはいけません。相手だって反撃してくる可能性があるのですから」
「……それもそうだな」
そう言ってレンターも光の弾を放つ。
それに納得したのか、ショウが炎の剣を顕現させる。
「そういう事なら行ってきなぁッ!」
建物にグサグサ刺さる炎の剣。そこから炎が広がり、微かな光と熱気だけが伝わってくる。
「ありゃ、燃えなかったか?」
「いいえ。この世界からは全ての光が失われています。炎とて例外では無いのでしょう。……次の建物に行きますよ」

そして幾つ建物を壊しただろうか。幾つ燃やしただろうか。幾つ消し飛ばしただろうか。
分からないけれど、中から狂乱した影が出てくるのだけは確かだった。そして次の建物へ向かおうとすると、声がかかる。
「キサマラ……!」
影が建物の中から刃物を持って飛びかかってくる。
「っ!」
皆避けると、私が素早くその背中に水の槍をぶつける。
「……ナメルナ」
影からは何か液体が流れている。それが血なのか、涙なのか……暗くて分からなかった。だが、再びこちらに刃物を持って走ってくる。
「ふっ!」
「せやぁっ!」
クロウとニアが同時に土の魔法を使って影に同時攻撃を仕掛ける。特にニアは殲滅者を使用したらしい。流石の影も少し怯んだようだった。
「ゲンブ!」
私は咄嗟にゲンブを呼び出して壁を作り、皆の退避場所を作る。
「……オマエラガ!ヒカリヲ……!」
「光を奪ったのは私達ではなく、貴方達の王。それが真実です」
「タワゴトヲッ!」
ミトロが告げるも聞く耳を持たない。それもそうかと思いつつ、ゲンブが巨体の足を持ち上げる。
「……ゲンブ」
「オマエラガアアアア!」
突撃してくるその影に向かって、ゲンブの足が振り下ろされた。
ドスン!と土埃が舞う中、ゲンブの足の下から何かが流れてくる。
(……あぁ、あぁ……)
それを見て、嗅いで。皆も察したようだった。最初に声をかけてくれたのはミトロだった。
「……我々の生存が第一優先です。抵抗が、それも明確な殺意を向けられたらもうそれは片方が倒れるまで終わりません。……次に行きましょう。撹乱に」
そう言ってミトロは私を支えてくれた。ゲンブが消える。その様子を私は見ていない。
しかし、レンターが一言だけ呟いたのが聞こえた。
「……せめて、安らかに」

それからも建物や商店街らしき場所を荒らして回った。抵抗もあった。そして、皆応戦していた。
「……そうだよな、いきなり攻撃なんて受けたら……」
「戦える人は~……戦うよね……」
そう言ってダイナが風を起こす。複数人が舞い上がったところにクロウが土の杭を飛ばす。
それを避ける影もいれば、刺さる影もいる。それでもしぶとく生き残っていた。
「ワレワレハキサマラヲ……!」
「ヒカリノタメニ……!」
「ユルサナイ……ユルサナイ……!」
怒りの声。怨嗟の声。それを何度聞いたか。それに目を瞑りながらゲンブを出して影からの攻撃を防ぐ。
そして防いだところにレンターが光の球体を空に投げる。その一瞬後。影のいた場所に圧倒的な光を放つ柱が立ち上がった。
最後にトドメとばかりにショウが炎の剣を地面に串刺しにしていくように刺していく。
「……元々は、同じ人だった……んだよね」
「……」
ニアが呟き、ショウは黙る。それに私は答える。
「……今でも、同じ人だよ。でも私達は負けられない。……負けちゃいけないの」
今まで犠牲になった人のためにも。その言葉を飲み込むとミトロが淡々と指示を出す。
「次はあっちに行きますよ」
「……っ!ミトロはどうしてそんな平気そうに!」
「クロウ!」
珍しくダイナが声を荒らげてそっとミトロの頬の部分を指で示す。
そこには既に涙の流れた跡が、微かだが見えていた。ミトロも握り拳を強く握っている。
「私達は生き残らなければならないのです!例え人を……殺しても……!それが彼との約束なのだから!」
「……そう、だったな。すまない」
そうだ。これは私たちが協力したこと。
けれど、そこで初めて本当に取り返しのつかないこと、という事を学んだ気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

処理中です...