異界の師、弟子の世界に転生する

猫狐

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三章 破滅のタルタロス

「加減はしない」

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城内に入り、各部隊が罠やルートを調べ始める。その時、奥からカツ、カツと歩いてくる足音が聞こえた。
「やァ。久しぶりだネ」
「……案内屋」
イシュリア王が警戒した声でそう呟くと案内屋は肩を竦めながら両肩をあげて下げる。
「ツレナイネェ。タルタロスを滅ぼス……。その為に来たのダロウ?」
「あぁ。そうだ。私たちはタルタロスを滅ぼす」
キッパリと言い切ったイシュリア王に対し、パチパチパチと賞賛の拍手が送られる。
「いやぁ。そのケツイ。カタイネエ。一つの真実を教えてオコウ。この城の中に罠はナイ。デモ……」
そこで区切ってその手に影の弓を持つ。
「敵は。イル」
「イシュリア王ッ!」
咄嗟に一人の兵がイシュリア王を突き飛ばす。その兵の上スレスレを矢が通って行った。
「……案内屋」
「ウン?ナンダイ?」
自分がそっと手に剣を持つと、ひとつ問いかける。
「罠はない。そう言ったな」
「言ったよ言った!敵はイルケドネ!」
「……ならお前は何だ?」
そう言って光を纏わせると、そのまま風を足に纏わせて数十メートルはあった距離を急接近。一瞬にして切り伏せる。
すると案内屋はサラサラと姿を消す。これは生きた影の死に方では無い。これは……。
「皆!案内屋の影には気をつけろ!案内屋自体が罠だ!案内屋を『増やして』この城の兵として配置している!やはり侵攻は読まれていた!」
「なっ……」
その言葉に罠を調べていた兵や他の兵が絶句する。だが今は言葉を選んでいる時間はない。そのままの口調で叫ぶ。
「恐らく今の撃破で侵入も感知されたはずだ!全隊進軍せよ!留まれば弓の餌食だ!広域探知出来る魔術師は急いで広域探知!結果を走りながら報告せよ!」
その言葉に若干の戸惑いを隠せない兵だったが、イシュリア王が決定的な権限を自分に与えてくれた。
「この時のみ、フードの司令の権限レベルを守護者とする!皆!従え!そして動け!止まれば殺られる!」
(助かる!権限があれば兵も動きやすいはずだ)
その瞬間から兵は走り出した。広域探知の魔術師は即報告する。
「城内に敵影なし!」
「同じくこちらもありません!」
その報告を聞くとアグラタムが走りながら叫ぶ。
「案内屋の影は探知に引っかからないのだと思われます!各自結界を展開!城の構造は恐らく単純!故に強行突破します!」
そう言うと彼が一番最初に通路を駆け出した。それに続くように兵が続き、自分が後ろを見張る。
「……いや、見張る必要なんて無いな。皆!衝撃に一瞬備えよ!」
そう言うとアグラタムも含め、一瞬だけ皆の動きが止まり、衝撃に備えた。それを確認すると顕現で大きな光の球体を生み出し、それを剣で突き刺す。
直後。球は爆発四散し、城を反射するように太い線が伝っていく。そして隠れていた案内屋の影も、光を失った城の内部も破壊していく。
「……これが、フード殿……」
誰がそう呟いたかは分からない。しかしこれで敵の罠が減ったのは確かだ。
「よし!これで大半の罠は減ったはずだ!だが油断はするな!再度進撃!警戒を怠るな!」
そう言うとまた進軍していく。城の作りは本当にシンプルで、入口から入って上への階段があり、様々な部屋がある……いや、あった、というのが正しいだろう。小部屋の入口は全て光が崩してしまったのだから。
一目散に登っていく中、広域探知の魔術師から報告が上がった。
「敵影!前方500メートル!」
「……案内屋の本体か」
一気に駆け上がると、そこにはパチパチとやはり拍手で迎える案内屋の姿がいた。
「イヤアお見事。まさか分身をアンナ力技で消すなんて思ってなかったヨ」
「それにしては嫌らしい配置や言い回しをしてくれたな?案内屋」
自分が前に出ると、案内屋はふわりと浮き上がり、周りに複数の球体を展開する。
「それがボクのシゴトだからね。そしてこの先を通すワケにはいかないのサ」
「……操られた、か」
「お見通しカイ?幼いナガラヤルネエ。我は王。この傀儡を使って撃退させてモラオウ」
そう言うと球体から複数の線が放たれる。着弾するそれを防ぎながら、フツフツと怒りが湧いてきた。
「……傀儡、か。お前は生み出した唯一の子供をそう思っているわけだな?」
「何を言っているんダイ?君たちも知っているダロウ。コイツは異邦人を殺すための案内屋。それ以外でもそれ以上でも、それ以下でもそれ未満でもナイ」
「……以前、案内屋はお前を……王のことを父と呼んでいた。唯一の子供だと。誇りに思っていた。それを蔑む訳だな?」
そう言うと不思議そうに首を傾げてケタケタと笑う。
「だからどうしたのサ。案内屋に情でも湧いたカイ?たった一度会っただけで?温いネエ」
「……一度会えば十分だ。案内屋は、アイツはこの国を想っていた。自身が生み出されたと分かっていてもお前の事を、王妃ティネモシリの事を何よりも犠牲を嫌う人達だと言っていた。お前が愛していなくとも、アイツは愛していた」
「……ヘェ?だから?」
すっと冷たい口調になる案内屋……否。王に対して言い放つ。
「お前に対して、加減はしない。それが例え案内屋の身体であろうとも。それを昇天させてあげることが唯一できる自分の救いであり、王たるお前の本体を倒す事があの優しい案内屋の悲願だった」
「ソウカソウカ!これはユカイ!……やれるものならヤッテミナ。小僧」
そう言って自分は顕現にて騎士を呼び出すと、周りの兵に命じた。
「先に進軍を。コイツは……自分が決着を付けます」
そう言うとアグラタムが突撃する。それを阻止しようと球を生み出した案内屋の影に騎士を一人ぶつけて妨害する。
「相手はこっちだ。……やれるものならやってみろ。自分は軽く死ぬほど甘くないぞ」
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