異界の師、弟子の世界に転生する

猫狐

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四章 黄昏のステラ

一学年首席の訪問 1

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休日、武術学院から魔術学院へと向かいながらアステスは考えていた。

(……顕現の、神童。その人なら光魔法を教えられるとナイダ先輩は言っていたけれど……何故そんな事を知っているのだろう?)

下を向きながら顎に手を当てて歩いていると、ゴン、と人に当たってしまう。

「あ、ご、ごめんなさい……」
「いいえ、大丈夫ですよ。……あれ、アステスさんではありませんか」

その声に顔を上げると、魔術学院の首席……ネイビアさんがいた。

「ネイビアさん。こんにちは」
「ええ、こんにちは。良い天気ですね」

魔術学院の扉の前でこんな会話をするのはどうかと思うが、どうせならネイビアさんにも聞いてみる。

「ネイビアさん、『顕現の神童』と呼ばれている人をご存知ないですか?」

その問いかけに彼は首を横に振る。

「いいえ、残念ながら……。けれど、武術学院まで噂が広がっているのであれば、魔術学院の先輩方が知っているかもしれません。話を一緒に聞きに行きましょう!」
「……お優しいのですね」

ポツリと小声で漏らす。あまり交流のない私に対しても一緒に聞き込みをしてくれる。何故そんなに優しいのだろう。
その答えは直ぐに返ってきた。

「優しい……。そうかもしれません。自分が憧れた孤児院の先輩はいつも皆の事を見ていて、優しかった。それに影響されているのかもしれないですね」
「なるほど。……ああ、こんな所では邪魔になってしまいますね。中に入りましょうか」

そう言って二人で魔術学院の中に入る。
とりあえず談話室に行けば噂は耳に入るだろうと思い、向かうことにした。
複数人が楽しそうに話している中、そこに入ると視線がこちらに向く。

「おや、今年の首席二人じゃないか!どうかしたのかい?」

先輩が話しかけてくる。そこで、問いかけをする。

「私、『顕現の神童』と呼ばれている人に話を聞きたくて探しているのですが……心当たりはありませんか?」

その言葉に先輩方が反応する。それは喜びというよりも、ザワザワと言った様に。

「今年の首席にまで届いてるよ……」
「やっぱりおかしいよね、あの子。学院がタルタロスに襲われた時もグラウンドの救援を先生と一緒にしていたし」

(先生と、救援?先輩方を差し置いて?)

考えに耽ける私を置いて、ネイビアさんが明るく話しかける。

「そんな先輩がいるんですね……!実はその先輩に会いたくて居場所を探しているのですが……ここにはいないのですか?」

そう言うと、先輩の一人が言う。

「うーん、ここの談話室にはいないね。部屋にいるか……あ、そういえば朝、あの子がいるSクラスの教室に皆が向かっていたからそこかもしれない」
「なるほど!探してみます、先輩方、これからよろしくお願いします!」

そう言って丁寧に頭を下げるネイビアさんに釣られて私も頭を下げる。

「うん!談話室にいつでもおいで!……ただ、あの子は本当におかしいよ。会ってみればわかると思う」

廊下を歩きながら、私は少し怒っていた。

「先輩だからって……後輩をおかしい人扱いするなんて失礼じゃないですか?」

「まあまあ、多分先輩方も悪い意味で言ったのじゃないと思うよ。でなければ神童なんて呼び方が続くはずもない……と考えるけど、どうなんだろうね」

苦笑しながらネイビアさんが答える。私は、唯一の希望を持つ人に対して失礼な物言いをされたのを少し過剰に反応されただけなのだと思った。

「それに、その『顕現の神童』の先輩には自分も用があるんだ。多分、ね」

「あれ、ネイビアさんも?」

それは驚きだ。同じ目的だったとは。つい好奇心で聞いてみる。

「ネイビアさんはどうして?」

「んー、学年対抗戦で戦った同じ孤児院の人が言っていたんだよ。『私じゃ攻撃ひとつ当てられない』『家族』ってさ。
……孤児院にとって、家族は言葉以上の意味を持つから。同じ孤児院のアステスさんならわかると思うけど。それをその人が理解しているのかって思って。会いに行こうと思ったんだ」

「なるほど……」

確かに孤児院の家族は、皆が皆を知り、そんじょそこらの家族とは違う。繋がりが太いと言えるだろう。

やがて、先輩に言われた通りの教室に辿り着いた時泣き声と、それを諭すような声が聞こえた。

「確かに生まれの差、育ちの差は大きい。それこそファレスとフォレスと比べれば天と地の差ほどある。
……けれど、それをものともせずシアも二人も同じSクラスに入った。
それで全て説明出来るんだよ。孤児だなんだって、ここでは関係ない。ここは皆で学ぶ場所で、皆が集まる居場所だ」

「……皆が学ぶ」
「皆が、集まる……」

思わず固まってしまう。特に、私は前者の二人の名前に聞き覚えがあった。
ファレス様、フォレス様。それは三代目ラクザ様のご息女様だ。
それをものともせず入った、ということはそのシアという先輩は。

「……少しだけ、待ちましょう。自分の先輩が……シアさんが泣いています」

中から堰を切ったように泣き出した声が聞こえてくる。
それにしても不思議だ。確かにファレス様もフォレス様も立場を悪用するようなお人ではなかった。それにしても快活に笑っていられるなんて。
それだけ、諭した人物が影響力を持っているのだろうか。だとすれば、その先輩は。

(こんな、こんな優しい人を、先輩方は『おかしい』というの……?)

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