47 / 111
40.ルナマリアの正体
しおりを挟む
こういうことは初めてだから、とても緊張する。
だけど、大丈夫だ。
俺の手には文字通り『切り札』があるんだから。
汗ばむ両手をぎゅっと握りしめ、意を決して対峙する。
「俺、氷雪真白と言います。半年ほど前にトーニャさんと結婚しました」
そう言うと、シューさんは少しだけ驚いたような顔をした。
「ソル、悪いけど戻っててくれる?」
ソルは俺たち2人の顔を心配そうに見つめながらも言いつけ通りに去っていく。
建物の中に入ったのを確認して、シューは続ける。
「…なぜ結婚の話を私にするのでしょうか?」
「あなたにはきちんと知らせなければいけないと思って…。ルナマリア・ミシェルはあなたですよね?」
シューさんは肯定も否定もなく、ただ口を閉ざしている。
きっと彼から『真実』を明かすっもりはない
のだと悟る。
だから勝手だけど、一方的に話すことにした。
「ずっと不思議だったんです、トーニャの瞳。彼の家族の誰とも異なる色をしていますから」
俺の言葉にシューさんはびくりと肩を揺らす。
「本当は…、あなたがトーニャの…」
「……真白?何でここに…?」
そこにはひどく驚いた表情をしたトーニャの姿があった。
まさか俺がいるなんて想像していなかっただろうから、当然の反応だ。
ふと彼の手元を見ると、見覚えのない紙袋を持っている。
見失ってからトーニャの方が先に到着したと思っていたが、ここに来る前に市街地にある店でルナマリアのために手土産を購入して寄り道していたのだと察する。
「昨日、お前がユージーン王太子と話しているのを聞いたんだ。エルシエル孤児院のルナマリアに会いに行くって…。なぁ、俺と一緒にいたいって思ってくれてるなら、本当のことを話してくれないか?ルナマリアがお前のお母さんなんだろ?」
だけど、大丈夫だ。
俺の手には文字通り『切り札』があるんだから。
汗ばむ両手をぎゅっと握りしめ、意を決して対峙する。
「俺、氷雪真白と言います。半年ほど前にトーニャさんと結婚しました」
そう言うと、シューさんは少しだけ驚いたような顔をした。
「ソル、悪いけど戻っててくれる?」
ソルは俺たち2人の顔を心配そうに見つめながらも言いつけ通りに去っていく。
建物の中に入ったのを確認して、シューは続ける。
「…なぜ結婚の話を私にするのでしょうか?」
「あなたにはきちんと知らせなければいけないと思って…。ルナマリア・ミシェルはあなたですよね?」
シューさんは肯定も否定もなく、ただ口を閉ざしている。
きっと彼から『真実』を明かすっもりはない
のだと悟る。
だから勝手だけど、一方的に話すことにした。
「ずっと不思議だったんです、トーニャの瞳。彼の家族の誰とも異なる色をしていますから」
俺の言葉にシューさんはびくりと肩を揺らす。
「本当は…、あなたがトーニャの…」
「……真白?何でここに…?」
そこにはひどく驚いた表情をしたトーニャの姿があった。
まさか俺がいるなんて想像していなかっただろうから、当然の反応だ。
ふと彼の手元を見ると、見覚えのない紙袋を持っている。
見失ってからトーニャの方が先に到着したと思っていたが、ここに来る前に市街地にある店でルナマリアのために手土産を購入して寄り道していたのだと察する。
「昨日、お前がユージーン王太子と話しているのを聞いたんだ。エルシエル孤児院のルナマリアに会いに行くって…。なぁ、俺と一緒にいたいって思ってくれてるなら、本当のことを話してくれないか?ルナマリアがお前のお母さんなんだろ?」
229
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる