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45.柊の涙
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柊さんの顔が曇り、涙が浮かんだ。
「あれからもずっと悩んできた…。本当にこれで良かったのかって…」
自分が身を引くことでしか、周りを守れないなんて…。
夫や子どもと離れ、見知らぬ異世界で暮らし続けてきたことを想像すると、耐え難い苦痛だっただろう。
「…今は理解しているから」
「…弱い母さんでごめんな」
トーニャはただ黙って首を振る。
理解か…。
きっと納得はできないだろう…。
それでも2人は互いに歩み寄って、ここまで来られたんだと感じた。
「でも、あんなに小っちゃな赤ん坊だったお前が可愛いお嫁さんを貰う日が来るんだもんな。俺はこうやってちゃんと立派に育ってくれて、それだけで嬉しいよ。2人ともありがとな」
その言葉と一緒に柊さんは涙を拭って、交互に俺達へ微笑みを向けた。
少し照れくさそうにしているトーニャは息子の顔になっていて、いつもよりも幼く見えた。
2人は長く離れて過ごしていても、ちゃんと『家族』なのだと思う。
じゃあ俺とトーニャはどれくらいの時間を費せば、『家族』になれるのかな?
考えたけど、孤独だった俺にはやっぱりよく分かんなくて。
ずっと染みついて取れない寂しさが久々にじんわりと広がりそうになった瞬間、トーニャと目が合う。
「あれからもずっと悩んできた…。本当にこれで良かったのかって…」
自分が身を引くことでしか、周りを守れないなんて…。
夫や子どもと離れ、見知らぬ異世界で暮らし続けてきたことを想像すると、耐え難い苦痛だっただろう。
「…今は理解しているから」
「…弱い母さんでごめんな」
トーニャはただ黙って首を振る。
理解か…。
きっと納得はできないだろう…。
それでも2人は互いに歩み寄って、ここまで来られたんだと感じた。
「でも、あんなに小っちゃな赤ん坊だったお前が可愛いお嫁さんを貰う日が来るんだもんな。俺はこうやってちゃんと立派に育ってくれて、それだけで嬉しいよ。2人ともありがとな」
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少し照れくさそうにしているトーニャは息子の顔になっていて、いつもよりも幼く見えた。
2人は長く離れて過ごしていても、ちゃんと『家族』なのだと思う。
じゃあ俺とトーニャはどれくらいの時間を費せば、『家族』になれるのかな?
考えたけど、孤独だった俺にはやっぱりよく分かんなくて。
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