俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね？〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

22．王妃はゴシップ紙を思い出す

とぼけているのか？
本当に心当たりがないのか？
いや、そんな訳ないない。

あぁ、でももうよそう。
考えたって、こいつが不倫しているのは事実なのだ。
そんな奴に時間を割くのは無駄だ。

「陛下の胸に聞いてみてはいかかです?」
「どういう意味だ?」
「あと先程の質問ですが、正直まだ本調子ではありません。移動中は眠らせてもらいます」

そう言って、俺は目を瞑る。
これで話しかけてくることはもうないだろう。
キースはそれ以上何も言わなかった。

「着いたぞ」
「ふぇっ!?」

気付くと、馬車は止まっていた。
いつの間にか眠っていたらしい。
相向かいに座るキースは腕組みをしながら、俺を凝視する。

「何？」
「…涎、ついてるぞ」

彼は自分の口の右端を指差し、俺に教える。

「うげっ！」

慌ててゴシゴシと口元を雑に拭うと、キースの冷たい視線が注かれる。
ふと、『下品な王妃』と書かれたゴシップ紙の記事を思い出す。
こういうがさつな行動がダメなんだろうな。
はぁと大きなため息を吐く。
キースの視線から逃れようと、窓から辺りをそっと覗く。
既に日が落ちて、真っ暗だ。

だとすると、ここは移動初日の宿泊地となる中継地点だ。
えーと、1日目に泊まるのは確か、んーと…ホスミシン領だったわ。
…マジかぁー、最悪。