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事の始まり
1.
しおりを挟む---2025年8月
温暖化の影響で年々暑くなってる日本。その都市部の外れに勤務する社会人3年目の北川柚杷(きたがわゆずは)。今年で23になる。乗り換えの為に降りた駅で都市部ならではの人混みの多さに嫌気を差しながら目的地へ足を進める。
人の気配もほとんどないの市街地から少し離れた場所にある少し古びた建物、藤江研究所。ここが柚杷の仕事場である。研究所とは言っても全員が研究している訳ではなく、ある人は探偵紛いなこと、ある人は小説家紛いなことなど様々である。柚杷はある目的の為、今は研究一本で働いている。古びたドアを開け中に入ると外からでは想像できないくらいに綺麗な部屋である。柚杷は既にいる職員に軽く挨拶をしながら奥の部屋へ行く。ガラス張りのドアを開け部屋に入り電気を付ける。荷物を端に置き、椅子にかけてあった白衣を着て、少し癖のある長い黒髪を後ろでひとつにまとめながらデスクに向かう。
「…長谷部さんは成分調査依頼っと…。山川さんは足跡の写真…?あぁ、足跡から靴を断定しろってことね。」
研究者というよりは警察の鑑識に仕事内容が近い気がする。実際、たまにではあるが警察から直々に依頼が来ることもある。そんなことを思いながら、早速仕事に取り掛かろうと踵を返した時だった。
『ピロリン♪』
滅多にならない携帯が通知音をあげる。仕事を始める前だったので携帯を手に取る。
『ゆずさん!
元気ー?
仕事は上手くいってるかい?
まぁ、都合がつかなかったらいいんだけど、今月の下旬にOB.OG会をしようかと思って出欠確認の為に連絡したんだけど、まぁ出る出ないどちらにしろ連絡ちょーだい(^-^)』
高校の同級生である朝堀真一(あさぼりしんいち)からのSMSであった。
「あぁ、真から…OB会か。そんな時期になったんだなぁ。」
返信はすぐにはせず、そのまま電源を消し、仕事に取り掛かる。
柚杷の仕事スタイルは与えられた仕事を淡々とこなし、依頼に+αの情報をつけて依頼を達成する。精密な検査結果に+αの情報を付け足すことで仕事を依頼するひとは絶えない。また少し柚杷自身も自分の好きなように仕事が出来るので今の仕事環境は気に入っていた。先程まで無表情だった顔に少し笑みを含ませ、実験室に足を踏み入れたのだった。
そんな仕事始めからしばらく経って他の社員に声掛けられた。
「おーい、北川。お前にお客さんだ。」
顔にかかった髪を手で流しながら声のした方へ振り向く。声をかけた人物…遠藤は何も言わず自分の後ろを指差す。結っていた髪を解き、手櫛で軽く髪を梳きながら指で差された先…応接室に向かう。途中、遠藤の横を通り過ぎる際に「何か怪しいから気を付けろよ」と言われ、「はい」と短い返事をし、身なりを正しながら部屋の前まで行く。そして部屋の前でひとつ大きく深呼吸をし、しっかり前を向いてドアをノックしてドアを開けた。
「失礼します。お待たせして申し訳ございません。研究員の北川と申しま…す……。」
部屋に入りながら挨拶をしたら驚きのあまり言葉が止まった。部屋で待っていたのは怪しい人物でもなんでもない。先程LAMYを送った朝堀真一であったからだ。
「やっ、ゆずさん♪」
唖然とする私に笑顔で手を振る真一…
「…えっ、やっじゃないよ!?なんで真がここにいるの!私の仕事教えてないはずだよ!?」
未だに整理のついてない考えを必死にまとめながら真一に質問をぶつける。
「まっ、待った!ちゃんと質問には答えるから落ち着いて…」
どうどうと手を前に慌てた柚杷を落ち着かせ、とりあえずと真一の前の椅子に座るように促した。
「落ち着いたね。じゃあ、話をしていこうか。まぁ、今回ここの研究所に調査依頼をしたくて来たら研究担当員がゆずさんだったんだ。
単なる偶然だよ。」
俺だって名前を聞いた時は驚いたんだよ?と話して柚杷に微笑みかける真一。嘘か真か分からない話を疑いの目で見るがやがて諦め、柚杷は本題を促した。
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