世界が終わる頃に

mahina

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神の力

1.

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 ----2026年4月1日。

 仕立てたばかりの紺色のジャケットとふわっとしたプリーツスカートに真っ白のブラウスを着て、いつものように軽めの化粧、そして髪の毛をまとめる…あぁ、そうだった。髪に伸ばした手を下ろし鏡台から少し離れる。少し折れた裾を払って直す。
「…よし。」
 鏡のなかの自分に微笑み、そして見る。今日から真一が正式に研究員として入社する。
 10ヶ月前から真一は週に二、三度程手伝いに来ていた。最初のうちは多少の文句は言っていたものの掃除や片付け、準備といった事を淡々とこなし、今年に入ってからは隙を見ては私の研究技術を盗み見ていた。それだけ必死なんだろう。
 柚杷は迷いを振り払い、玄関へ向かう。
 そして新たな気持ちで家を出たのであった。

「わぁ!柚杷ちゃん可愛い!髪が長い時も大人びててとても良かったけど、毛先が肩までの長さだと可愛らしくなるねー。」
 研究所の扉を開けて、一番に葉月に言われた。周りも私が髪を切ったことを物珍しそうに見に来て囲む。玄関から動けずにいると再び扉が開く。そこに居たのは遠藤と真一の2人。
 2人とも柚杷だと気付かずに少し驚いていたが、そのうち遠藤が笑みを浮かべて言う。
「あぁ、北川か。なんだ、イメチェンか?」
 少しニヤニヤして聞いて来る所は嫌だが、笑顔で答える。
「そうですよ、イメチェンです。雰囲気変わるでしょう?」
 手でわざと髪をなびかせ揺らす。こころなしか真一の顔が赤い気がする。何も言わずにいた真一の背中を隣の遠藤が軽く叩く。それではっとしたように口を開く。
「…いいんじゃねぇの?」
 予想外の答えに少し驚くが笑顔で「ありがと」という。真一は先程より顔を赤めてそっぽを向いてしまった。その様子に周りは、特に葉月と遠藤がニヤニヤしている。そんな状態だったからか急に恥ずかしくなり柚杷は研究室に飛び込んだ。

 少しして落ち着いた柚杷が戻ったところで真一の入社式を開いた。入社式と言っても真一しかいないので軽い挨拶だけで終わった。その後はいつもの仕事に手を付け始め1日を終えた。


 真一が正式に迎え入れられてから二週間ほど経ち、桜の花も散り始めた。

 その日も柚杷は1日研究と事務作業に勤しみ、帰路についていた。駅までの道のりで桜並木の小道を一人のんびりと歩く。前に吸血鬼に襲われた時の道ではあったが、まだ明るいのでその道を選んだ。
 夕飯を考えながら歩いていると木の影から静かに人が出てきて、柚杷の行く手を防ぐように立ち止まる。
 綺麗に手入れをされた長い黒髪を横に流し、高級そうなストールをなびかせながらこちらに顔を向ける。暗がりではっきりと見えないが、柚杷は目の前にいる人物をよく知っている。

 女は口の端を少し上げ、妖しく微笑み、そして口を開いた。


「…久しぶりね、北川柚杷…?」
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