世界が終わる頃に

mahina

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神の力

3.

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 ----時は少しさかのぼり、柚杷が研究所を出て帰路についた頃、真一は遠藤の指導のもと、薬品作りをしていた。

「遠藤さん、言われていた薬品出来ましたよ。」
「おう。ありがとさん。」
 書類に目を通しながら答える遠藤の近くに作った薬品を置く。
「あっ、朝堀。」
 名前を呼ばれ振り向くと遠藤が手で来い来いと言っている。名前を呼んだのだからそのまま言えばいいのになんて思いながら、遠藤の横に近づく。
「なんすか、遠藤さ……んっ!?」
 言い終わりもしないうちに遠藤は近くにあったハサミを逆手で持ち狙ってきた。真一は咄嗟にそれをかわしながら、バランスを立て直し、次々と襲ってくる遠藤の手を払い続けた。だが、気を緩めたほんの一瞬をつかれ、足を蹴られバランスを崩し倒れた。そして気付いた時には既に遅くハサミの先端が真正面にあった。
「…まぁ、65点ってところか。」
 そうつぶやきながら真一に手を貸し起き上がらせる。
「何、急に襲ってきて点数つけてんすか。しかもなんか微妙な点数ですし。」
 遠藤は器用にハサミをクルクル回してデスクに置く。そして椅子に座りタバコに火をつけ、真一の方に向く。
「お前、今のままだと北川にも勝てねぇぞ?お前たちがやってる吸血鬼対策の研究は色んな奴から狙われる。吸血鬼本人たちはもちろんだし、吸血鬼の信者や逆に吸血鬼を利用してやろうと思ってる奴とかからな。もし、襲われた時に対応出来ないと命がいくつあっても足りねぇ。自分を守る為の必要最低限の実力は身につけておけ。」
 視線をずらすことなく力強く言う遠藤から目を離せなかった。真一は小さい時から空手をやっていてそれなりの段もあるが今の遠藤の攻撃をかわしているのがやっとだった。
 この研究を続ける為には、自分自身の力が必要。研究の最中に危険だと判断されたら辞めさせられる。辞めさせられない為にも守る為の力が必要だった。
 そして解決する為の道へ導いてくれた人も一緒に守れるなら守りたい。
 真一は少し考え、そして思う。
「遠藤さん」
 椅子を揺らしながら書類に目を通していた遠藤は名前を呼ばれ真一の方に向く。
 真一はプライドを捨て、深く頭を下げる。
「遠藤さん、お願いします。俺に力を教えてください。自分を守る力を、大事な人を守る為の力を…。」
「…頭上げろ、朝堀。」
 朝堀に頭をあげさせ目を見る。かなり本気なんだろう。真一の目は何を言ってももう揺らぐことはなさそうだった。
「わかった。みてやるよ。ただしだ、絶対途中で弱音吐くんじゃねぇぞ?一度でも言ったらそれまでだ。いいな。」
 真一は少し笑い答える。
「もちろんです。よろしくお願いします。」


 ある程度、雑務を片付け研究所の地下へ連れてこられる。地下にはジムがある。遠藤は隅に荷物を置き、近くの棚からゴム製のナイフを2つ取り出す。
「…ナイフっすか?」
 渡されたゴム製のナイフを見つめながら問う。
「おう。あとそこのメガネかけろ。」
 遠藤はナイフを片手に未だ作業し、準備をしながら答える。
 真一はナイフを下ろし、遠藤に言われた通り近くの机に置いてあった防護メガネのようなメガネをかける。すると急に周りの景色が廃れた街並みに変わった。物陰で何かが動き、襲いかかる。それを思わず反射で避ける。正体を知るために急いで目で追うと人だった。いや、よく見ると服装は廃れているものの吸血鬼だ。吸血鬼は再び真一を目掛けて襲いかかる。襲いかかる吸血鬼に対抗すべくナイフを構えるがナイフを握る恐怖に襲われ動けない。すると後ろから遠藤が飛び出し鮮やかなナイフ捌きで吸血鬼に攻撃を加える。悲鳴をあげ吸血鬼は姿を消す。
 遠藤は動けずにいる真一を見て言う。
「これはホロだ。実際に襲われたりはしねぇよ。…お前は基礎は出来てんだ。だからまずは武器に慣れろ。」
 そう言って遠藤は人差し指で真一を…いや、そのさらに後ろを指す。指された後ろを急いで振り返ると目の前に別の吸血鬼が迫っていた。
「うわ…っ」
 我ながら情けない声を出しながら避ける。そして体制を立て直し、ナイフを構え、向き合う。再び恐怖に襲われるがそれと同時に相手への復讐心を抱くようにし、相手を落ち着いて見る。吸血鬼が襲いかかってくるが真一は近くに来るまで待ち、あと一歩のところで殺られるというところでナイフを向ける。見事ヒットしたようで吸血鬼は消える。ほっとひと息ついた時、急に目の前が暗くなりだす。何事かと思い、後ろを振り返ると間近に吸血鬼はいた。その時襲われたのだと実感した。少しすると先程までの部屋で佇んでいた。
 近くには書類を読む遠藤。ふと、疑問に思う。
「遠藤さん、あんな鮮やかなナイフ捌きをどうやって身につけたんですか。」
 遠藤は書類から目線を上げずに言う。
「元々、剣道やら空手やら色々やってたからな。後は自己流だ。」
 少し自慢げに言ってくるが、そこはもう何も言わない。自己流で相手がホロであろうとすんなりと倒せてしまっている。少し疑うがそれほど相手に執着していて倒したいと思うのだろう。
「…俺もやってみます。自分のやり方で鍛えます。色んなもの、守ってみせます。」
 真一は決意を声に出す。
「だから遠藤さん。俺に足りないもの、見つけたら言ってください。」
 遠藤は真一を見て、微笑み答える。
「おう、やってみせろ、朝堀。まぁ、教えてはやるが結局は強くなるのも賢くなるのも自分次第だ。お前が成長するのに必要であれば言ってやるからやってみせろ。」
 この時の真一の顔は清々しいかった。
 その後、ホロでの模擬戦と遠藤との組手を2.3時間行い、帰路に着こうと支度を始めた。
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