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神の力
4.
しおりを挟む遠藤と真一が研究所を出ようとした時に固定電話がなる。時間は夜の11時をとっくに過ぎており、こんな時間に契約先から電話がかかってくることもまずない。
少し怪しげに思いながらも真一が受話器をとる。
「…もしもし、お待たせいたしました。藤江研究所です。」
『……』
受話器の向こうからは何も返ってこない。真一はもう一度「もしもし」と言う。
すると受話器の向こうから何か音と、女性の悲鳴が聞こえた。
『…ぃやぁ…っ』
向こうの受話器からはそれなりに離れているのだろう。声は小さかったが聞いたことのある声だった。とにかく変な電話であることはたしかなのでスピーカーフォンにし、遠藤にも聞こえるようにした。電話の向こうでは今度は殴ったような音と同じ女性の悲鳴。それが3分ほど繋がったままの状態で続き、電話は結局用件を話さず切れた。
しばらく部屋には沈黙が続いた。
そしてその沈黙を真一が破る。
「…な、なんだったんすか。今の電話…。それに悲鳴を上げてた女の声…。」
「…1人、心当たりがあるな。電話してみっか。」
電話の向こうで悲鳴を上げた女性。ふたりとも同じ女性を考えていた。真一はすぐにケータイを取り出し、その女性のケータイに電話をかける。
「…出てくれ…。」
嫌な予感がする。冷や汗が頬を伝う。
ケータイは繋がりコール音がなる。1コール…2コール…。いつもならこのあたりで電話に出る。3コール…、4コール…5コール…。そしてブツっと音がして…出なかった。ツーツーと寂しい音を鳴らし始めた。真一は電話を切り、もう一度かけ直すが今度は繋がらなくなってしまった。
そして遠藤を見て横に首を振る。
「どうして電話でないんだよ…ゆずさんっ。」
二人の心当たり…それは柚杷だった。
だがまだ確信した訳ではない。もしかしたらもう寝ているのかもしれない。
「…っ。ゆずさん…っ。」
情けない声が出る。
ただ信じて待つしか出来ない手詰まり状態だ。遠藤も悔しそうに歯切りする。そのまま時間が経過していくだけであった。ふたりは明日の朝、柚杷が笑顔でいつものように通勤してくるのを信じて待つしかなかった。
自然とふたりは研究所に泊まることを決め、荷物を下ろした。
遠藤は先に家に帰り、父の帰宅を待つ葉月に電話をかける為に部屋を出た。
静かになった研究室の一角にただ1人立ち尽くしていた真一は近くにあった机を力のある限り殴った。その顔は怒りと悔しさが入り交じっていて、静かに涙を流していた。
「守るって決めたのに…。」
誰もいない静かな部屋で拳を握り、ただ下を見て涙を流す。真一にはどうすることも出来ず、ただ無事を願うしかなかった。
夜中の1時半頃、タクシーを使って葉月が荷物を抱えてやってきた。事情を電話で聞いていたのだろう。着いてすぐは慌てていたが、真一を見て、落ち着かなくてはと思ったのだろう。今は家から持ってきた料理を机に並べている。遠藤も食事が出来るように机上を片付けていた。真一はとても食べる気にはなれないが、準備を着々と進める2人を見て少し落ち着きを取り戻し、食事の準備を手伝うため動き出した。
3人は無事に柚杷が来ることを願い、そして待つ。
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