デスゲームが始まるかは私次第

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第1章 なぜ出会ってしまったのだろう

3 いつも通り

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ミヤゾノが最後に残したあのセリフが染みのように頭から離れなくなっていた。

「いい加減気づけよ。」

その言葉の真意は分からないがひたすら頭の中で木霊する。

「いい加減気づけよ。」

手探りでしか前に進めないほどの暗闇の中、ミヤゾノの声だけがハッキリと響く。

「いい加減気づけよ。」

「いい加減気づけよ。」

「いい加減気づけよ。」



けたたましく鳴る金属音で闇に光が差し込んだ。

気持ち悪いほどかいた汗と乱れた呼吸で状況を把握した。すべて夢だった、と。

深呼吸で整えてから布団から起き上がるといつも通りの私の部屋が広がっていた。

今となってはどんな夢を見ていたかすら覚えていない。それ位の事だったのだろうと言い聞かせ、半ば強引に納得させた。

それよりお風呂入らなきゃ。



通学途中、例のキツネは出てこなかった。聞きたいことがあるというのに、肝心な時に出てこないのだから。

朝のホームルームが始まる五分前にいつも着席するようにしている。いつも通りだ。

人数が増えてきて、会話も盛り上がり、どんどん騒がしくなってくる教室。何ら変わりない。

私の右斜め前の席の、油性ペンで汚い言葉が書かれた机に突っ伏してる子が居ることも、変わらない毎日の象徴だった。

聞き飽きたチャイムが響き渡り、担任が教室内に入ってくる。何の変哲もない日常が今日も幕をあげる。

「起立、礼、着席。」



いつも通り適当に過ごし、帰ろうとしていた矢先のこと。校門に見覚えのいるキツネがいた。

私の存在に気づくや否やノソノソと近づいてきた。

「昨日ぶりだね!梨乃さん!」

「馬鹿!こんな所で話しかけないでよ!」

立ち止まり、慌ててミヤゾノに向かって小さい声で叫んだ。

「大丈夫だよ!ほかの人には見えてないよ!」

ミヤゾノがその場でクルクルと回ってみせる。

周りを見ても誰もミヤゾノの方を見ている人などいなかった。寧ろ立ち止まってる私を何人かチラホラ見ていたくらいだった。

少し恥ずかしくなり、早歩きで歩き始めた。ミヤゾノもそのあとを追って付いてくる。

「で、なんでまた現れたのよ。」

「そろそろスイッチが欲しいんじゃないかなと思ってね!」

んなわけないでしょ!と昨日の自分なら言っていただろう。でもよくよく考えるとこれはスイッチを貰っておいた方がいいのかもしれない。

「昨日考えたんだけどさ、それって私が断固拒否したらどうなるの?」

ミヤゾノの尻尾がピンと上に立つ。待ってましたと言わんばかりの反応だ。

「ほかの人に渡るかもしれないね!」

「じゃあ、スイッチ貰っておくわ。」

ミヤゾノが近くのポストの上に飛び乗ったので、私も立ち止まってポストの方を見る。

「これまたどういう風の吹き回しかな!?」

挑発するように尻尾を左右に揺らす。

「ほかの人に渡ったら、押すかもしれないじゃん。私はデスゲームを始めるために貰うんじゃなくて、デスゲームから守るために貰うの。」

だから早く頂戴、と右手を差し出す。

「わかった!」

左手を招き猫のように掲げて円を描く。この間と同じスイッチが現れた。

「ほんと、アンタってぶっ飛んでるね。」

ん?と首を傾げられたが、何でもない、と返しておいた。

「このスイッチを押すとデスゲームが始まるよ!1回始めちゃったらもう後戻りは出来ないと考えた方がいいね!」

「もし間違って押しちゃった場合は?」

ミヤゾノはうーん、と唸る。

「じゃあこうしようか!」

右手を掲げ、円を描くとそこにあったスイッチが消えた。

「何してんの?」

「スイッチのデザインを変えるのさ!」

今度は左手を掲げて円を書くように回した。

またスイッチが現れ、今度はボタンにカバーがかけられていた。例えるなら学校の消火栓に付いてる非常ボタンのような、自分の意思で押さないと押せない感じだ。

「これで問題ないよね!」

「多分。」

ミヤゾノはおもむろに立ち上がり、尻尾を大きく揺らした。

「僕、これから用事があるから行かないと行けないんだ!またね!梨乃さん!」

そう言ってポストから飛び降り、ポテポテと歩き始めた。

「ちょっと待って。」

私がミヤゾノに呼びかけると、すぐにクルっと振り向いた。

「スイッチの返品はしてな」

「違う。私、絶対におさないから。」

少し間を開けてミヤゾノは微笑み、また歩き出した。
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