デバフ婆ちゃんのお通りです

古里唯一

文字の大きさ
4 / 33

魔力とか魔核ってなんなんだー!

しおりを挟む
「弱体付与のやり方は2つ!
1つは直接的に付与する方法
もう1つは間接的に付与する方法」

 フィルギャの話によると、直接的に付与するには相手に触れた状態で魔力を注ぎ込むことで付与され、間接的にはアクセサリーや武器に装備できる魔核ジュエルに魔力を封じ込めることで付与されるとのことだった。

「魔力を相手に注ぐって…どうやるの?
そもそも魔力とかってどう操作するの?
魔力封じ込めるってどうやって?
私に使えるの?」

 魔法なんて使えない人間が魔力だの付与だのと言われてもピンと来ない。
どうやったら魔力を練れて注げて封じ込められるのかちゃんと聞いておかないとね。

“なんとかなる!!”

 いや、なんとかなる精神でなんとかなるのは主人公補正とかかかってるメインキャラだけの特権だから。
お婆ちゃんキャラにはそんな特権まで付与されないから。

「うーん…イメージとしては火かな?」

「火?」

「火ってついた瞬間は小さいけど、徐々に大きくなっていくでしょ?
魔力を練るのもそんなイメージだよ
試しに練ってみようか!」

 練ってみようかで魔力練れれば苦労せんよ。
一度説明受けただけで“さあ!一人で仕事してみようか!”にはならないでしょ。
慣れるまでは付き添ってほしいものだよ。
物覚えが良ければ一人でも良いけどさ…魔力とか魔法なんて物覚え云々じゃないよね…。

「火だよ火!
火をイメージして」

「どこかのアニメのキャラが言ってたようなセリフ…イメージ…イメージ…」

 火がついた瞬間は小さい。
徐々に徐々に風に掻き立てられて勢いを増していく。
小さい火は木々に飛び火して炎上する…。

「あ。つまりSNSみたいなものか」

「へ?」

 SNSに投稿した内容が非人道的だったり酷いものだったり。
はたまた絵師さんの盗作だったり不倫問題だったりするとすぐに炎上する…。
人間の心理と考えればなんだか魔力練れそうな気がする。

「つまり!褐色皇子に対する怒りが私の魔力を練り上げる!」

「(わあ…怒りで魔力練り上げた人初めて見た…)
わあああ!アキラストップストップ!
そのまま練り続けると魔力が暴走しちゃう!
頭は冷静に!冷静に!」

 なるほど…頭が冷静じゃないから見境なく怒鳴り散らしたり判断力が低下するんだね。
うん……そういうのはさ、練る前に言っておこうか…。

「わああ!!アキラー!しっかりしてアキラー!」



隔絶世界《リヴァーユ》

 精霊王たちが暮らす世界であり、人間界の様子を垣間見ることのできる場所。
人間たちが暮らす世界《ユースレス》に若い聖女と聖女の身代わりが召喚されたことは、精霊王たちも周知。
今まさに円卓を囲み話し合いがなされているところであった。

「王都の者たちは遂に若い聖女の召喚に成功した
我らはそのことについて話し合わねばならない」

 話の進行を務めるのはライトグリーンの切れ目に金色の髪を持つ男。
――光の精霊王・ヘーメラー。

「話し合いもなにも王都の者たちの愚行に手を貸す必要はないと
再三話し合ったではありませんか」

 そう意見するはマルーン色の髪を持ち、瞳は閉じられたままの女。
――地の精霊王・デメテル。

「左様。創世の頃は不憫にとさえ思っておりましたが
昨今の人間たちの行動には目も当てられない」

 意見に賛同するは菫色の瞳を持ち、勿忘草色の髪を持つ老男およしお
――水の精霊王・ポセイドン。

「でもさー。史実とは異なるとはいえ、若い聖女様が召喚されたのに
聖女伝説通りにならなかったら、人間たちの私たちに対する信仰心が消えちゃうんじゃない?」

 そう反論するは鳩羽色に鴇色のメッシュが入った髪を持ち、アンディゴの瞳を持つ片目眼帯の少女。
――闇の精霊王・ニュクス。

「そうさなぁ。人間たちの信仰心が俺様たちが存在できる力の根源
無下に扱えば俺様たちの存在すら危ぶまれる」

 反論に賛同するのは浅緋色の瞳と髪を持つ男。
――火の精霊王・へーパイストス。

「私としては、何も知らずに召喚された若き聖女と
身代わりにされてしまった子のことが気がかりですわ」

 そう言ったのは煉瓦色の髪にときがら茶色の瞳も持つ女。
――木の精霊王・アフロディーテ。

「ユースレスのごたごたに巻き込まれた…可哀想」

 か細い声で主張するはフードの下からチラッと見える若竹色の髪に墨色の瞳を持つ少年。
――風の精霊王・ヘルメース。

「若い聖女は王都で手厚いもてなしを受けているそうだ
しかし身代わりとなった者は《ディブル》という田舎街方面に飛ばされたとのこと」

「守護妖精が今度はちゃーんと契約できたみたいだし
身代わりちゃんの方は心配ないんじゃない?」

 ヘーメラーの説明に足をバタつかせながらそう言い放つニュクス。
その主張に続くようにヘルメースがスッと手を上げた。

「身代わりさんには…守護妖精の加護の他に
精霊の加護も…少しくらいあげても良いんじゃない、かな?
説明も、衣食住の保障もないわけだし…」

 その主張にパチンと両手を叩くアフロディーテ。

「まあ。素敵な案ですわ!
でしたら木の精霊の加護を与えましょう
皆さんの信仰者はたくさんいるのですから…ね?」

 満面の笑みを浮かべるアフロディーテの背後に見えるブラックな人格は、6人の精霊王たちに向かって中指を立てながら威圧の眼光を向けていた。

「え、ええ…木の精霊の加護は例年不人気…
い、いえ、減少傾向にありますからね」

 慌てて言い直すデメテルに続きポセイドンも口を開いた。

「左様。精霊の加護も等しく存在しなければならぬ」

「俺様の眷属である火の精霊サラマンダーの加護を受けた人間の中には
世界屈指と呼ばれる剣豪もいて例年人気だからな!
身代わりに与えなくても問題な――」

 最後まで言い切ることなく、火の精霊王・ヘーパイストスは木の精霊王・アフロディーテによりバックドロップを決められていた。

「ゴホッ…で、では精霊の加護についてはアフロディーテの眷属・ドリュアスに任せるとしよう」

 隔絶世界《リヴァーユ》
今日も平和的に話し合いが進められていた。



「アキラー!良かった!
目が覚めて本当に良かった!」

 フィルギャの顔が目の前にあってビックリした。
危うく虫と勘違いして潰してしまうところだった。

 フィルギャの話では魔力を練り過ぎて気を失っていたらしい。
魔力の使い過ぎイコール気力の消費。
気力は精神力に精通しているため、使い過ぎると私がなったように気絶したり、運が悪いと精神崩壊を起こしたりするそうだ。
そういうのは本当…最初に言っておいてほしいな。

「魔力の練り方はわかった…
魔力を注ぎ込んだり封じ込めるのはどんなイメージ?」

「魔力を注ぎ込むイメージは水をコップに注ぐ感じで
封じ込めるのはこう手で包んじゃう感じだよ」

 ふむ…水をコップに注ぐ感じ…。
いやいや。水をコップに注ぐ感じだと相手に逃げられるよね?
遅過ぎて逃げられるか返り討ちに遭っちゃうよね。
つまり注ぐスピードが命!
 そして封じ込めるは手のひらでなんて生ぬるい優しさではなく、監獄に入れるくらいの強固なイメージ!


「つまり水鉄砲の噴射速度的なアレと
ガチャガチャのカプセルくらいの固さか」

「?」

 ガチャガチャのカプセルって本当に開かないんだよ。中身取り出させてくれないの!?
ってくらい固いし滑るしテープでベトベト。
魔力をあのガチャガチャのカプセルの中に入ってる景品とイメージすればなんかいけそうな気はする。

「よし…練習あるのみ」

「じゃあ手始めに魔核ジュエルに魔力を封じ込めてみようか!
直接的には練習相手かモンスターでも出てこないと出来ないし…」

 フィルギャはそう言って指をパチンと鳴らした。
上空からふわりふわりと重力に逆らいつつもゆっくり降りてくるナニカ。
手を受け皿のようにして落ちてきたものをキャッチしてみれば、なんと落ちてきたのは透明なビー玉だった。
しかも5個も落ちてきた。

「それが魔核ジュエルって呼ばれる石だよ
稀にモンスターが落としたり商人が売ったりしてるけど
魔核ジュエルに能力を付与できる人間は少ないから
結構安値で手に入るよ
今回は練習ってことで僕がプレゼントするけど
練習したくなったら次からは自分で用意してね」

 呪い持ちがどうやってモンスターを倒せると?
武器もない。防具もない。お金もなければ住むところもない!
私こんな異世界嫌だー!
早く村とか街に行ってバイトしたい!
衣食住大事!

魔核ジュエルに能力付与した後はどうすれば良いの?」

「世間一般的には装備品に嵌め込むよ!
武器にも防具にも魔核ジュエルを嵌めるための凹みがあるから
そこに嵌めるだけで能力が付与されるよ」

「なるほど…」

「あ。魔核ジュエルに魔力封じ込めても武器がなかったら使えないね!
じゃあオマケで武器もプレゼントしちゃう!
剣、杖、槍、大槌、ダガー、ムチ…どれが良い?」

 どれが良い?
なんて笑顔で聞くんじゃない。
こちとら使ったことあるのは鉄パイプと拳だけよ。
 剣…学生時代の時真面目に選択授業受けとけば使えたね…却下。
 槍…薙刀だったら祖母が得意だっただろうね…却下。
 ダガー…刃物怖い刃物怖い却下!
 大槌…小さい子に大きな武器ってゲームしてて思ったけど良きものだ。
しかしお婆ちゃんはぎっくり腰が怖いので却下。
 消去法でいくと杖かムチか…。
ムチは競技にもなってるくらいだけど、私自分の顔面に当てそうで怖いから無理だな…却下。

「うん…お婆ちゃんだし杖かな」

 立ち上がるのも“どっこいしょーいち”言っちゃうし。
普通に立ってるだけなのに関節や節々痛いし。
経験してみないとご老体のつらさはわからないね。

「はい。どーぞ!」

 いつの間にか目の前に浮かぶ杖。
某魔法使いの世界の浮かぶ箒を見ているようだ。

「この杖には魔核ジュエルを嵌める凹みが2つ空いてるよ
モンスターを殴るのに特化させるなら弱体能力デバフを!
今後誰かを仲間にして冒険するなら上昇能力バフを付けると良いよ!」

 仲間と冒険ね…。
こんなお婆ちゃんと冒険するもの好きがいるなら、アンタ変わってるねって言ってやるわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...