デバフ婆ちゃんのお通りです

古里唯一

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ギルド受け取り?いいえ、対面受け取り派です

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「……こんなとこか」

 ユーリスたちに納品するレジンアクセは服やマントにつけることができるピンバッチタイプにしてみた。
封入した素材はそれぞれ初対面での印象を元に組み込んでみた。

 まずユーリス……爽やか系男子。
 見た目だけなら貴族街を歩いてても違和感ないレベル。主人公級なのに、蓋を開ければ介護男子だったことに驚きを隠せない。世話焼き。オカンか?
そんな彼には、澄んだ海と青空をモチーフにしたデザインを選んだ。
 清涼感のある青と白のレイヤーに、小さな剣をクロスさせたパーツを封入。
双剣使いっぽかったしクロスさせるっきゃないに至ったこの中二病思考!誰か殴ってくれ。
 効果は反応速度上昇を一点狙いピンポイントCで添えてみた。

 ロットン……圧倒的チャラ男。二重人格者であったことに驚いたがチャラ男成分が強すぎる。
そんな彼には、豪華絢爛なデザインにしてみた。
 艷やかな紫と金のグラデーション。煌めく金粉と小さなハートのチャームを封入。遊郭の花魁チックな見た目からしてもうナンパ仕様である。
魅了効果を付与したから、これで撃沈率も少しは減るだろう。多分。あとは本人の性格の問題だ。

 グラント……胸筋ゴリラ。いや違う、守護系胸筋ゴリラ。悪口ではない。良い意味でだ。
 家族を守るために力を求めたその生き様は私には到底真似できん。
そんな彼には砕いた鉄鉱石の欠片と、小さな銀の盾のパーツを使用。
 色味はなし。余分なものは要らん。あいつは純粋に真っ直ぐがよく似合う!
実際につければグラントの漢度も3割増し……いや、筋肉に押し負けて目立たない可能性あり。むしろ目立たないなレジンアクセ。
効果はもちろん防御力アップ。紙装甲のタンクにタゲ取りさせてみろ、余裕で床ペロだぞ。

 ギリィ……積極的に話すタイプではなさそうな青年。
格闘家の割にかなり細身だけど、きっと脱いだらすごいんですな細マッチョ。
顔立ち的にもカッコいいとは思うが、道中そんなに会話がなかったから謎多き人物。
彼には燃え上がる感情みたいなのが見えないから、下地は黒のレジン液。そこに赤とオレンジのレジン液で作った炎型のパーツを封入、少しだけ銀の粉をあしらってみた。
 完成してみれば和な仕上がりになっていた。三日月か満月のパーツも入れれば良かったかなと思ったがこれでも十分だろう。
効果は格闘家にあれば嬉しいと思う素早さアップを仕込んだ。

 できれば全部にもう1つ追加付与をしたかったが、変な効果がついたら作り直しだからやめた。
考えてもみたまえよ?
この一点狙いピンポイントCの効果は優秀なのに、ここに“装備時に衣服が弾け飛ぶ呪い”が付与されましたなんて出た日にはあいつらが変態扱いされてしまうよ。そして確実に私は袋叩きにされる。恩を仇で返す行為だよこれ……。
 見たさ的には100%なんだけどね。腹抱えて笑えそうだよ。

「婆ちゃん見て見て!できたー!」

 リオンが差し出してきたのは、剣と盾のチャームを封じ込めたキラキラの青いレジンアクセ。
見た目は完全に“冒険者予備軍”のそれだ。さっき私が話していた邪魔になるかもしれないというのをしっかり覚えているようで、私が作ったのと同じピンバッチタイプで仕上がっている。

「僕のはこれ!」

 シオンはというと、緑のレジン液で作った葉と小さな白い花を封入したシンプルなデザインのレジンアクセ。
シンプルだがどこか上品さがある。初心者とは思えないほど配置センスがある。私よりセンスあるのでは?
シオンの方は冒険者になるつもりはそこまでないのか、ヘイスが作ったミール皿に固定しネックレスタイプに仕上がっている。

「(二人ともセンス良いね)」

「(フィルギャもそう思う?
私よりも良い出来すぎて泣きそうなんだけど)」

 こんな何気なく作った初めてのアクセサリーが、双子の将来にどう影響するのかはわからない。影響を与えるほどのものではないかもしれない。それでも物作りを経験することは決して無駄なことではない。自分で考え形にする、発想力と創造力は培っておいて損はないはずだ。
 冒険者になるのか、ヘイスの跡を継ぐのか……まあ、私には関係ないな。所詮は赤の他人なもんで。

 まあレジンアクセを販売するという目標があるから、腕を見込んでクラフターになってほしいという気持ちはある。私の代わりに作ってクレメンス。ただし売り上げは私の懐に入るがな!

「二人ともセンス良いな
これを機にアクセサリー職人になるのはどう?」

 そう問えば二人は少し考えるも首を横に振った。

「俺は冒険者になって
父さんにお宝持ってかえるんだ!」

「僕は困ってる人を助けられる人になりたいなぁ」

「(エリュシオンくんは魔法の才があるし
シュベリオンくんは万能型だから
二人とも冒険者コース突き進みそうだね)」

 なんと面白みがない世界なんだろうか。冒険者以外の選択肢はないのか?
もう少し広い視野を持とうぜ異世界人!

「そっかそっか……
まあがんばんなさいよ」

 外野が文句言ったところで自分の人生だ。好きに選択して好きに生きれば良い。ただし自己責任な。自分の選択に他人は関係ない。八つ当たりも責任転嫁もするんじゃないぞ。

「これお父さんに見せてくる!」

「俺も!」

「あー……ちょい待ち」

 せっかくの処女作だ。役立ちそうな効果だけでも付与しといてあげるかな。

「(なにか付与してあげるの?)」

「(そうだね。上昇能力バフのランク上げしたいし)」

 付与の能力があったところで使わないことにはランクアップもしないからね。
一点狙いピンポイントCのスキルレベルも上げたいから特別に付与しといてあげよう。

「(魔力アップとか?器用さアップとか?)」

「(魅了アップ)」

「(今でも十分可愛い子たちを
これ以上可愛くするつもりなの!?
ショタコンの登場待ったなしになるよ!)」

 ショタコンが双子に群がったところで一斉検挙。
《ディブル》の治安がよくなる未来が見えるというのにご満足いただけない?
どこが不服なんだ。

「婆ちゃん?」

「どうしたの?」

 ……危ない目には合わすのはダメよな。

かけといてあげるよ」

 のろいと書いてまじないと読む。

「シオンとリオンに危害を加えるべからずってな」

「「べからず?」」

 これはアフロディーテ様が教えてくれた制約付きの付与だ。
シオンとリオンに危害…つまり悪意や殺意を持って接する相手を対象に発動するもの。
具体的にどうなるって?
そこは発動してからのお楽しみだよ。はっはっは!

「(アキラ……今日一番の悪い顔してるよ)」

「(褒め言葉ありがとねフィルギャ!)」

 さて……双子もヘイスのところに向かったわけだし、私も商業ギルドへ納品しに行くか。

 そういえばふと疑問に思うんだよね。
納品したタイミングでどうやってユーリスたちに納品されたことが伝わるんだろ?
伝書鳩でもいるのか?
それとも前にギリィが使っていた伝令水晶クリスタルメッセンジャーでも使うのか?



「納品登録と同時に、対象者に通知が届くようになってます!」

 商業ギルドへ到着し、受付のベルを鳴らせば奥の方からタルディちゃんが転びそうになりながらも、今日は転ばず姿を見せたことに一瞬舌打ちをしそうになった。ドジっ子は本日旅に出ているようだ。
 納品するレジンアクセをカウンターの上に置くとタルディちゃんは「これがレジンアクセですか…」と呟くも手続き書類を手渡してきた。
 必要なことを記入しながら納品について話を聞けば通知がいく仕様になっているそうだ。

「へぇ……そんな仕組みなんだね」

「はいっ!ギルド証と連動してますから、皆さんすぐに気づかれ――」

「通知を受け取りました」

「「!!?」」

 ギルドの扉はいつ開かれたのだろうか?
まさかのユーリスの声が私の背後から降ってきた。
私とドジっ子タルディちゃんが驚き振り返ればイケメン見た目寡黙系男子ユーリスが、相も変わらずクールで涼やかな表情をして立っていた。

「(……って、いやいやいや!?
タルディちゃんが通知送ってから
まだ数分も経ってないんだけど!?
通知システムと心が繋がってんの?
一心同体か!?)」

「ユーリスさん早過ぎでは!?」

 タルディちゃんも吃驚の速さ。
まさかーー考えたくないがユーリス……お前商業ギルドの周りを常にうろうろしてたわけではなかろうな?
ちゃんとダンジョンとかに潜ってモンスター討伐してたんだよな?
爽やか青年がまさかのストーカーなんて笑えないぞ。

「冒険者ギルドに依頼達成の報告をし
宿に戻ろうと思っていたところ
商業ギルドへ入って行くアキラさんを見かけたので」

 喜べ。ストーカーの容疑は晴れたぞ。
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