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第34話 ハイテンションラリー
しおりを挟む「そ、その、メイドさん可愛かったですね」
僕らは1年生の催し物を満喫し終えると、小休止の為に中庭に足を運んでいた。
「でもくっそつまらなかったわね」
「わわわ。瑠璃川さん、そんなはっきり言っちゃ駄目だよ! D組の子達頑張っていたんだから!」
雨宮さんの言う通りメイドさんは可愛かった。ていうよりかは接客してくれた女子が可愛かっただけでメイド衣装自体は一目で安物だとわかるクオリティだった。たぶんド〇キ辺りで買ったんだろうなアレ。
それだけならまだ良かったのだけど、メニューが飲み物しかなかった。多分食べ物系は衛生許可がおりなかったのだろう。
ついでに言うと注文したコーヒーからはいつも自販機で飲んでいるものと同じ味がした。
コーヒー以上に苦い顔をしている瑠璃川さんにはお気に召さなかったようだ。
ついでに他の1年生の催し物も見て回ったが、『輪投げ』、『休憩所』、『瓶のふたコレクションの展示』とどれもパッとしないものばかりであった。
「雨宮さん、これがノンフィクションの文化祭だよ。アニメやドラマみたいなお祭りは現実には存在しないんだ!」
「わーん! そんなことないですもん! ノンフィクション文化祭もきっと楽しいことありますもんー!」
「そうだよキュウちゃん! 催し物はちょっと残念でもこうして友達と一緒に回ることに意味があるんだよ」
「み、水河さん……! そ、そうですよね! 何をして過ごすかより誰と過ごすかって所に大きな意味があるのです! わかりましたか!? 雪野さん!」
確かは一理ある。今までは一人で過ごしていた文化祭は図書館で本を読んで過ごすだけのくっそつまらないものだったけど、4人で回る文化祭は新鮮さが感じられるし、こうして会話をして過ごせるだけでもありがたい。
「ふぁ~わ。私飽きたから図書室にでも行ってていいかしら?」
「「「瑠璃川さぁぁぁぁぁん!!?」」」
瑠璃川さん的には4人で過ごす文化祭より1人で読書する文化祭の方が好みのようであった。
雨宮さんが慌てて引き留める。
「だ、駄目です! 瑠璃川さんも一緒じゃなきゃ、わ、私、その……」
「花恋ちゃんがくっそ可愛いからもうちょっと一緒にいてあげるわ」
意思よっわ。ぐらっぐらだ。
「ねね。体育館とかなら面白そうなイベントやっているんじゃないかな? 漫才とかライブとか!」
「体育館は卓球部によるガチラリ―対決が開かれているらしいよ」
「一体何のために!? しかも体育館全部使って!?」
「どうする?雫。ガチラリ―見に行く?」
「や、やめとく……」
つまらなすぎるだろ我が校の文化祭。世のリア充はどのようにしてリアル文化祭を楽しんでいるんだろうか。
「そういえばライブといえば雨宮さんのクラスは黒龍がバンドライブ開いているんだよね?」
「は、はい。一応その予定です」
「なに? 雪野君あんな奴のライブ見に行きたいの?」
「正直卓球部のガチラリ―よりは興味あるけど、一応雨宮さんのクラスだし催し物をみていくのはありかなと」
「そうだね。キュウちゃんが対峙しているドラゴンさんがどんな人なのか私も見ておきたい。行ってみよ?」
「私は反対よ。この私があんな奴の音楽を聴きに行くなんてプライドが許さないわ」
「わ、私もすみません。全く準備に携わっていなかった故にちょっと顔を出しづらくて」
あらら。意見が割れてしまった。
まぁ、僕もアイツのライブを絶対にみたいというわけでもないし、案は却下の方向に――
「じゃ、ちょっとだけ別行動しよっか。私とキュウちゃんはライブ、瑠璃川さんと雨宮さんはガチラリ―。お互い頃合い付いたら落ちあお♪」
「「私たちガチラリ―に行かなきゃいけないの(ですか)!?」」
悲痛の叫びを残している二人を尻目に僕と雫は二人で再び校内に入っていった。
改めて考えると私服の女の子とふたりっきりって中々目立つよなあ。外部客事態が少なめだし、それに――
「てなわけで、キュウちゃんエスコートよろしくね。ねね、手つなぐ?」
「それは普通に恥ずかしい」
――改めて見るとこの子とんでもなく『可愛い』部類に入るんだもんなぁ。周りの視線を集めるレベルに。
手なんか繋いで歩いていたら奇異の目で見られるだろうな。どうしてあんな美少女がこんな冴えない奴なんかと……みたいな視線。
「なんでー? 女の子慣れしているキュウちゃんなら私と手を繋ぐくらい余裕でしょ?」
「女の子慣れなんてしてないよ!? 雫の中で僕はどんなナンパ野郎なの!?」
「や、第2印象くらいからこの人女の子慣れしてるなーとは思っていたよ? 実際雨宮さんや瑠璃川さんにも慣れた様子で接しているし」
「慣れてなんかないよ。正直いっつも緊張しているよ。二人共とびっきりの美少女だし」
「むむっ、それはアレかね? 雫ちゃんは美少女じゃないから緊張しないと?」
「雫もとびっきりの美少女で驚いているけど、それ以上に長い年月過ごした特別な仲だからねぇ。緊張したら負けだと思ってる」
「ほら! そういうところー! 普通に女の子に対して『キミ美少女だねー』とか言わないんだよ。言うとしても女の子慣れしたナンパ野郎だよ」
「うそぉ!? 僕は本音を伝えていただけなのに」
「少なくとも童貞ではないと見た」
「ど、どどどどどど童貞ですけど!?」
「なんで声震えてるの?」
「雫が変なこと言ってくるからだよ!」
ビックリした。
普段の会話でもプライベートな質問などはしないようにお互い気を付けているのだけど、急にド直球な下ネタを言ってくるとは思わなかった。
「キュウちゃん可愛い♪」
なんて言いながら結局手を繋いでくる雫。
いやいや、だから目立つって。それとドキドキするんだって。
「ちなみに私も処女だよ」
「なんでカミングアウトしたの!?」
「んー、私に対して特別な仲と言ってくれたのが嬉しかったからかな。同じように思ってくれていたのはポイントアップ」
「そ、そっか。そ、その、僕も嬉しいよ」
「私が処女だったってことが?」
「特別な仲だと思ってくれたことに対する同意だよ!」
くそー、雫からのからかいには慣れてきたと思っていたのに、こういうド直球な下ネタは全然耐性がない模様だ。童貞故の悲しさである。
このままだと顔が茹でだこみたいに真っ赤になりそうだったので無理やり話題をそらしてみることにした。
「親友って手を繋いで歩くものなの?」
「もちろんだよ。たまに街中で手を繋いでいる男女いるでしょ? あれって実は半数が親友同士なんだよ」
「し、知らなかった……!」
「もちろん嘘だよ」
「もちろん嘘なのかよ!?」
「やーいキュウちゃん騙されてやんのー。男女で手を繋ぐって普通恋人だよ」
「そうだよね!? 僕の認識間違えてなかった!」
えっ? じゃあ今僕ら手を繋いでいることも色々まずくない?
ま、まぁ、雫理論でいうと親友って恋人よりも上の立場らしいから、いい……のか?
「キュウちゃん。指絡める手のつなぎ方していい?」
「本っ当。耐性ないんだからこれ以上は勘弁してください雫さん!」
「あー、『さん』付けで呼んだ。マイナスポイント。罰ゲーム」
指と指の間にひんやりとした感触が入ってくる。
やばい、これやばい。このつなぎ方やばい。理性が持つ気がしない。
このつなぎ方が恋人繋ぎと呼ばれる所以が少しわかった気がする。これ恋人以外がやると憤死するやつだ。今の僕状態になるやつだ。
「えへへへ」
僕が悶える姿をみて雫は愉快そうに終始笑っていた。
ドギマギしているのが僕だけみたいでちょっと悔しかった。
「やっば……超ドキドキするコレ。私何やってるんだ」
「こっちが聞きたいっ!?」
雫も緊張してるんやないかい。急に素に戻らないで。
普段の通話よりもずっとテンション高めだったからこれが素なのかと思っていたけど、テンパって暴走しているだけだこれ。
「あはは~。今日の私変だ。自分でも分かる変さだ。あ、あはは、ごめんねキュウちゃん、私キュウちゃんに会えて自分の想定以上に舞い上がっているっぽいや。それとキュウちゃんが私の想像通りの人で嬉しかったってのもあるかな」
絡めた相手の指の温度が上がっているのが伝わってくる。
おおぅ。熱暴走起こしていらっしゃる。
「童貞とか処女とか言ったの忘れてください」
「もうデリート不可レベルで脳内に刻みこまれているよ」
「ぁぅぅ~」
真っ赤にして縮こまる雫。
だけど絡めた指が離れる様子だけはなかった。
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