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第6話 一難去れず、また一難
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「に……ににに……兄さん!?」
「あ、悪いな。荷物みたいにお前を担いじゃって」
石使い女から全力で逃げている最中、肩に抱かれている小鳥が声を震わせながら話しかけてきた。
「そ、そそそ、それはいいんだけど……あの……重くない?」
「いや? 全然」
強がりでも何でもない。むしろあまりにも軽いためビックリしたくらいだ。
「ほ、ほんと?」
「ああ。むしろ昔の方が重かったんじゃないか?」
「~~っ!!」
あっ、今のはノンデリ過ぎたな。
あの大人しい小鳥が俺の頭をぽかぽか殴ってくるくらいだもの。
「あ、えと、そうだ。最近、俺体力作りしているから筋力ついたんだと思う! だからお前の重さも感じないだと思うんだ」
「~~~~っ!!」
言ってから気づく。なんのフォローにもなっていないのだと。
小鳥のぽかぽか攻撃は更に強くなっていた。
「——ただの筋トレにしてはちょっと体力付き過ぎなのではありませんこと?」
「……へっ?」
虚空から石使いの女の声が響く。
だけど振り返っても姿は見えない。
ど、どこだ!?
ボコッ
「うわぁぁぁ! 地面から出てきた!?」
「きゃああああ! ゾンビぃぃ!」
突然目の前の土が割れ、まるで生霊のように地面から現れた石使いの女に思わず悲鳴を漏らしてしまう俺たち兄妹。
「やっと——」
「えっ?」
「やっと見つけましたわ異能使い牛嶋来海! 私と戦いなさい!」
「訳わからんわ! なんでお前はいちいち戦いを始めたがるんだよ!」
「異能力者が集ったのですから誰が一番優れているのか戦って確かめるのは自然の流れですわよ!」
こいつやべぇ。
根っからの戦闘狂じゃねーか。
まぁ、人とは違う能力を手に入れたからには試してみたくなる気持ちはわかる。
だからといって通り魔のように襲われるは勘弁してほしい。
「わ、わかった! 金を払おう! 1000円……いや2000円払う! その代わり金輪際俺たちに突っかかってくるのはやめてくれ!」
「そんなはした金で納得するわけないでしょう!」
はした金……俺の全財産がはした金だと。
やっぱり俺の小遣いって少なかったんだ。今日一番のショックだよ。
「二人同時にかかってきてもよろしくてよ? いきますわ! ストーン——」
やばい。土の矢を放つ異能だ。
さっきは小鳥が上手く撃ち落としていたが、小鳥は恐怖で顔を引きつらせている。
俺が何とかするしか——
ギュォォォォォォォォンッ!
不意に——
耳を劈くような獣の遠吠えが木霊した。
あまりにも現実離れした大声量にこの場にいた全員が耳を塞いだ。
「な、なんだ? 今の」
「犬? 狼? でもなんの姿も見えないけど……」
犬にしては変な鳴き声だった。
聞いたこともないような獣の咆哮に腰が引けてしまう。
3人は警戒するように背中合わせに集結し、辺りを伺う。
ボコッ!
「下ですわ!」
石使いの女の一言で一同の視線は地面に集中する。
瞬間、地面は割れ、ヒビの隙間から黒い影が飛び出した。
「地面から何かが出てきましたわ!」
「お前も地面から出てきた何かだけどな!?」
「揚げ足取っている暇があったら足元を警戒なさい!」
地面から出てきた黒い影は俺たちの周りを飛び回るように跳躍し続けている。
地を蹴り、宙を飛び回るその姿は明らかに異質さを放っていた。
姿は獣のように見えるが、真っ黒に塗りつぶされている姿はどう見ても異質。
もしかして、あれって——
「ま、魔族……っ!」
「あ、悪いな。荷物みたいにお前を担いじゃって」
石使い女から全力で逃げている最中、肩に抱かれている小鳥が声を震わせながら話しかけてきた。
「そ、そそそ、それはいいんだけど……あの……重くない?」
「いや? 全然」
強がりでも何でもない。むしろあまりにも軽いためビックリしたくらいだ。
「ほ、ほんと?」
「ああ。むしろ昔の方が重かったんじゃないか?」
「~~っ!!」
あっ、今のはノンデリ過ぎたな。
あの大人しい小鳥が俺の頭をぽかぽか殴ってくるくらいだもの。
「あ、えと、そうだ。最近、俺体力作りしているから筋力ついたんだと思う! だからお前の重さも感じないだと思うんだ」
「~~~~っ!!」
言ってから気づく。なんのフォローにもなっていないのだと。
小鳥のぽかぽか攻撃は更に強くなっていた。
「——ただの筋トレにしてはちょっと体力付き過ぎなのではありませんこと?」
「……へっ?」
虚空から石使いの女の声が響く。
だけど振り返っても姿は見えない。
ど、どこだ!?
ボコッ
「うわぁぁぁ! 地面から出てきた!?」
「きゃああああ! ゾンビぃぃ!」
突然目の前の土が割れ、まるで生霊のように地面から現れた石使いの女に思わず悲鳴を漏らしてしまう俺たち兄妹。
「やっと——」
「えっ?」
「やっと見つけましたわ異能使い牛嶋来海! 私と戦いなさい!」
「訳わからんわ! なんでお前はいちいち戦いを始めたがるんだよ!」
「異能力者が集ったのですから誰が一番優れているのか戦って確かめるのは自然の流れですわよ!」
こいつやべぇ。
根っからの戦闘狂じゃねーか。
まぁ、人とは違う能力を手に入れたからには試してみたくなる気持ちはわかる。
だからといって通り魔のように襲われるは勘弁してほしい。
「わ、わかった! 金を払おう! 1000円……いや2000円払う! その代わり金輪際俺たちに突っかかってくるのはやめてくれ!」
「そんなはした金で納得するわけないでしょう!」
はした金……俺の全財産がはした金だと。
やっぱり俺の小遣いって少なかったんだ。今日一番のショックだよ。
「二人同時にかかってきてもよろしくてよ? いきますわ! ストーン——」
やばい。土の矢を放つ異能だ。
さっきは小鳥が上手く撃ち落としていたが、小鳥は恐怖で顔を引きつらせている。
俺が何とかするしか——
ギュォォォォォォォォンッ!
不意に——
耳を劈くような獣の遠吠えが木霊した。
あまりにも現実離れした大声量にこの場にいた全員が耳を塞いだ。
「な、なんだ? 今の」
「犬? 狼? でもなんの姿も見えないけど……」
犬にしては変な鳴き声だった。
聞いたこともないような獣の咆哮に腰が引けてしまう。
3人は警戒するように背中合わせに集結し、辺りを伺う。
ボコッ!
「下ですわ!」
石使いの女の一言で一同の視線は地面に集中する。
瞬間、地面は割れ、ヒビの隙間から黒い影が飛び出した。
「地面から何かが出てきましたわ!」
「お前も地面から出てきた何かだけどな!?」
「揚げ足取っている暇があったら足元を警戒なさい!」
地面から出てきた黒い影は俺たちの周りを飛び回るように跳躍し続けている。
地を蹴り、宙を飛び回るその姿は明らかに異質さを放っていた。
姿は獣のように見えるが、真っ黒に塗りつぶされている姿はどう見ても異質。
もしかして、あれって——
「ま、魔族……っ!」
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