暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第2章 海を目指して

第37話 伝統

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 なんだかんだで別の宿からシャワーを借りることができ、私は元通りの身体になった。

「四季折祭はどうやら今日が最終日みたいなんだよねー。これからどうするの?」

「そうだなぁ。海も早く行きたいし、残りの3人と合流次第この街を出発しちゃおっかな?」

「うん、私はさんせーい」

「それじゃあ行こっか、シルフ!」

 そうして私たちは時間まで祭りで遊ぶことにした。

 モースたちとは日が真上に登った頃にギルド内に集合だと事前に伝えてある。つまり正午までこの四季折祭を楽しめるという訳だ。

「日の角度的に、……あと3時間は遊べそうかな?」

「あっ、ルミツ! あれやろあれ!」

「んー?」

 私はシルフの指さす方向を見る。

「ビチビチビッッチィィィ!!!」

「すごいすごーい! これ数年ぶりに見た!!」

「……ねぇ、これなに……?」

 巨大な水槽の中に巨大な魚が1匹泳いでいる。10m以上あるような大きさに、鱗は緑色、まるで古代魚のような見た目だ。

「7年振りのチョーー大物!! 金魚すくいならず、古代魚釣り!! 地下迷宮からの使者、アスカトラルを釣り上げられる力自慢は集まれぇぇぇぇい!!」

「うっしゃ、コイツと対峙するんぁ、3回目じゃの」

 そう言って肩を回す1人の男が水槽に近づいた。

「「うぉぉぉぉ!!」」

 あの男が現れた瞬間、ものすごい歓声が辺りに響いた。

「あー、あれ知ってる。7年前、9年前のこの古代魚釣りを制した伝説の男、クリョウ」

「へー。確かに筋肉はゴツイけど」

「……今年はアイツでも無理だと思うなー。サイズ感がまるで違うし」

「サイズ感?」

「例年の主は大きくても8メートルとかそこら。10メートル越えの超大物を、クリョウが上げられるとは思えないなー」

 そんなシルフの発言が、完成によって掻き消されていく。

「……ま、楽しそうだし見てみよ!」

「そーだね! クリョウのクソダサシーンも気になるし!」


「うぉぉぉぉぉお!!!」

 雄叫びを上げるクリョウ。

「ふん!!」

 クリョウが力を入れると、全身の筋肉が一回り大きくなる。
 その現象に歓声もまた一回り大きくなる。

「うっしゃあいくぜぇぇ!!」

 水槽の周りを囲むようにして出来ている高台にクリョウは上り、背中の釣竿を持って水槽に垂らす。

「負けんなよー!」
「やってやれー!」
「今年も美味い刺身食わせろー!」

「……刺身?」

「そー、刺身。釣り上げた主は釣り上げた本人が調理する伝統なんだ」

「へぇ。私たちも食べれるんだ?」

「そうだよー。といっても釣り上げた本人が振舞ってくれればの話だけど。……まぁあのサイズだし十中八九誰もが振る舞うとは思うけどね」

「ッ!! かかったぁ!!」

 豪快に陸にぶち上げることが釣ったの条件とされる。
 暴れ狂う主は、水を辺りにはね散らかす。

「ふんが! どいやさ! すんこらどっこい!」

「……独特な掛け声だね」

「あれがクリョウの面白いとこだけどねー。ま、応援だけでもしとくかな。がんばれー!」

「おっ、おー! がんばれぇー!」

「……!! 来た!!」


 スキル『爆釣ばくちょう』!!


「とんぐぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 顔が真っ赤になるほど竿を引いている。主も負けじと抵抗している。
 あれ程の大物に対しここまで動かさせるなんて、ものすごいスキルだ。

「思ったより善戦してんじゃん。すごいねクリョウ」

「……いや、もうダメだね」

「?」


 水魔法『水極の進撃タイタン・ウォータ


「ぬ、うごぉぁぁあぁぁぁぁぁああぁあまあぁあ!!」

 主が魔法を使った瞬間、クリョウは空高く吹っ飛んで行った。

「ありゃ」

「ほら、飛んでっちゃった。やっぱり今年のは化け物だなー……」

「……じゃあさ、私行ってみてもいいかな!」

「えっ、ルミツ? 無理だよムリムリ! そんな華奢なルミツがどうこうして上がる代物じゃないよ!」

「へへん、私を舐めちゃいかんよ?」

「うーん、まぁやりたいならいいんだけどさぁ……」

 そうして私は人混みの中へと突っ込んだ。




 ◆◆◆

 ルミツ、大丈夫かなぁ……。
 確かにルミツはかなりの猛者だ。凶大な力を持っている。

「でもどう見たって、質量的にかないっこないでしょ……!」

 高台に上がったルミツを見る。
 そしてその下にはルミツの何倍も何十倍もある超巨大魚。

 ふと、私は後ろからつんつんされる。

「シルフじゃん。ここで何してんの?」

「サラマンダー……。あれ、大丈夫かな……?」

「あれって……主様!? あの下にいる魚を釣り上げるっていうの!?」

「うん。らしいね」

「いやいやいやいや……流石の主様でもあのサイズは……」

「だよね、私もそう思ったんだよ! でも、止められなかったんだよなぁ……」

「シルフはここぞという時に押しに弱いんだから……。あっ、仕掛けを投入したよ」

 ルミツは仕掛けを水に投入した。
 歓声は一時的に止み、独特の緊張感が漂う。

「……よしっ!」

 かけた!! だが餌を食わせるのまでは簡単、ここからどうやって巻き上げるんだ……!?

 ルミツの持っている竿は恐らく貸し出されたものだろうが、このイベントの為特別に作られたのだろう、物凄いしなりとは裏腹に折れる気配は一切として無かった。

「……!! 結構重い……!」

「うおー!」
「あの嬢ちゃんすげぇ!! 何もんだ!?」
「あのサイズの魚の引きに対して全く動じてねぇぞ!!」

 観客は大盛り上がりだ。まぁさっきのクリョウと比べても軽々しく耐えている。
 だけど奴には……


 水魔法『水極の進撃タイタン・ウォータ


「あっ……!」

「あの魚、魔法が使えるのか……!」

 ルミツとは反対側に突進する主魚。

 だがルミツはその突進する方向へと大ジャンプをし、魚の上空を追い抜かした。

「ルミツ……!?」

「一体何を……!」

 そのまま水槽の反対側を過ぎ、地面に叩きつけるようにして竿を振った。

 その瞬間、主魚は空高く舞い上がった。

「魔法の勢いを利用し、上に方向転換をさせることで釣り上げた……!」

「確かに十分スゴ技ではあるけど、逆側に引っ張るよりも遥かに釣りやすい……! 主様、すごい……!」

 そして釣り上げられた主魚は地面に叩きつけられる。
 ビチビチと地ならしが起こったのも束の間。
 ルミツがエラの辺りを刀で切り裂き、所謂〆の処理によってその魚は動きを止めた。

「……す、すごい」

「改めて、これが私たちの主人なんだね……。その力もさながら、技術、応用力、瞬発力。全てを兼ね備えてる。……恐ろしいね、ホント」

「でも、今の主様はすごい心の底から楽しそうだよ?」

「おーい! シルフー! 釣れた釣れた!」

「……確かにそうだね! 今そっち行くー!」

「えっ、僕も僕も!」

 こうしてルミツは巨大な古代魚を釣り上げ、知らず知らずのうちに四季折祭の伝説になったのであった。
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