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短編用
10 騎士のプライド
しおりを挟む初めて使った贈り物の成功に安堵した瞬間、見つめていた額が遠ざかっていきます。上にではなく、前方に。
「危ない!」
チャーリー様がバランスを崩したのだと理解し、咄嗟に目の前にあった彼の頭を抱き寄せました。
「大丈『クレア!何をしているのだ!』夫ですか?」
抱え込んだ彼の頭頂部に向かって声をかけましたが、先程まで頭を悩ませていた声がそれを覆うように響きます。
「聞いていなかったのですか?お礼をしたまでの事です」
「お前の礼とは額に口付ける事なのか!お前はチャーリーに懸想していたのか!」
わからないのは無理もないのですから、それはいいですが…。
しかし、先刻話した事も忘れてあらぬ疑いをかけられている事に苛立ちが募ります。それが誰かに懸想していた本人からだと思うと、もう!もう!!
「ぅ…ぐ…」
胸元から呻く声と少しの熱を感じてハッと気付きました。
どうやら怒りのままにチャーリー様の頭を締め上げていたらしく、彼の手が私の腕を掴もうか迷い、宙を舞っているのが見えました。
「申し訳ありません。あ…えと、離しても大丈夫ですか?」
急に離すと危険かもしれないと伺うと、暫し沈黙のあとで微かに頷いたのがわかり、ゆっくりと絡めていた腕を解きました。
解放され、スっと姿勢を正した彼は口元を片手で覆って、真っ赤な顔をしておりました。
そこで私は重大な事に気付いたのです。私の姿は戻っているのです。今まで可も不可もないような胸も、今では割りと、そこそこに?あるようには思うのですが。
もしや私はチャーリー様を窒息させてしまうところだったのでは?!
病や怪我も無くとは思いましたが、窒息は病でも怪我でも無いような気がすると思い至って、自分行為に血の気が引きました。
「チャ…。チャー『 チャァァアリィィィイイイイイ!!!』リー様ご無事ですか?」
私の心配はバカ王子によって届かず、先程の事も相まって、怒りの頂点に達した私は王子の声を封じました。
「チャーリー様!ご無事ですか?苦しくはないですか?痛いところは?」
「……大丈夫だ」
矢継ぎ早に距離を詰めて伺いましたが、大丈夫だと言う彼はどこか言い淀んだ気がします。
「ご遠慮なさらず!何か異常を感じるなら仰って下さい!」
「いや、本当に…無事だ。何も心配はいらない」
詰まる言葉に疑いを持つと、チャーリー様は目を泳がせながら、私から離れるように数歩下がりました。
「あぁ……その、あれだ。騎士をしているのに女性に助けてもらうなんて、と。そういう事だ。体は健康だし、どこも異常はない…」
依然口に手を当てて顔を染めたチャーリー様が言いました。
そうです、彼は騎士なのです。私にはわかりませんが騎士としてのプライドとかもあるはずです。護る側の者が庇われたなんて、恥ずかしいに決まっています。もしかすると、そういうものを傷付けてしまったのかもしれません。
「その…申し訳ありません。チャーリー様なら私が庇わなくとも平気でしたのに…。余計な事をしてしまいました」
「そんな事は無い。その、助かったよ……礼を言う」
「大事にならず良かったですわ」
本当に申し訳なかったと謝罪すると、いつも通りの笑顔で返されて胸をなでおろしました。
「その…。王子が……」
安堵で笑顔を向ける私に、王子を見遣り言いにくそうにチャーリー様が言いました。
王子を見ると、声は発していないが何かを叫んでいるようです。
聞きたくないなとチャーリー様を伺うと、すまなそうにするので、仕方なく王子の声を解放しました。
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