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短編用
12 ごきげんよう
しおりを挟む「婚約は白紙になりました。陛下にも伝わっている事と思いますし、もうお会いする事も無いでしょう」
「クレ…ア……」
掠れた声が私の名を呼びます。
"魔女"や"ハイエルフ"の血を王家に入れる機会を、自分の一言で逃してしまったのですもの。王族として、それはとてもお辛い事と思います。
一応皆さんには聞こえてはいないので、それを非難される事はないでしょうけれど。
そんなお顔をさせたくなかったのも、言いたくなかった理由の一つです。王子として懸命に努力していたのは見ておりましたもの。
「そうですね。王子とも婚約者であった月日は短くありませんし、一つご忠告致しましょう」
王子としてこれ以上辛い思いをしないようにと、口を閉ざし、私の言葉を待つ王子を確認してからお伝えしました。
「ヴィクトリア嬢と婚姻されるのでしたら、魔法契約で結ばれた方がよろしいですわ。王子のお子ではない者が王族になってしまいます」
「ちょっと!何をいい加減な事を言っているのよ!この無礼者!不敬罪で処刑してやるんだから!」
ヴィクトリア嬢が騒ぎ立て、耳が痛いので声を封じました。
「今宵、婚約破棄の暁には契るつもりでいらっしゃったのでしょう?ですが、よくよく背中をご確認下さいませ。他の者の所有印が刻まれていましてよ」
後半はヴィクトリア嬢にも向けて言ったが、みるみると青ざめてしまいました。
そんな顔をなさるなら、控えればよろしかったのに。
私は遮音している魔法とヴィクトリア嬢の魔法を解き、念の為に距離をとってから王子とヴィクトリア嬢の拘束を上半身からゆっくりと解きました。
ヴィクトリア嬢は座り込み、王子は鋭い視線をヴィクトリア嬢へ向けていらっしゃいますが、私は急ぎ足で音を立てぬように扉へ向かいました。
扉を押しながらホールの中を振り返ると、王子はヴィクトリア嬢へ詰め寄り、チャーリー様はそれを諌めるように間に立っておりました。
チャーリー様が私に気付いて顔を向け、王子も倣うように私へと半身を向けるのが見えます。
「クレア!」
王子の叫ぶような声に、周囲は次々と私を視界に入れました。
「それでは、ごきげんよう」
やっと家に帰れると、私は満面の笑みで誰へとなく言葉を投げかけ、身を潜らせた扉をそっと閉めました。
───────
「クレア、おかえり」
「おかえりなさい。クレア!」
一度戻って荷物を持ってからと、寮に帰ると、お父様とお母様が迎えてくれた。
お母様。そんなにギュウギュウと抱きしめられると苦しいよう!
「ローズ、クレアが苦しそうだよ」
「あら嫌だ!ごめんなさい。大丈夫?」
お父様の声で、お母様はパッと体を離し、私の頬を両手で包んで顔を覗き込む。
「ふふっ。大丈夫です!ただいま戻りました。お父様!お母様!」
最近合わすことがなかった両親の顔に、嬉しくて顔が綻んじゃう。
「ふふっ。クレアはラルフに似てくれて良かったわ~」
すりすりと、私の顔に頬擦りするお母様。私としては、お母様に似てもお父様に似ても嬉しい。
「父様にもよく顔を見せて」
ニコニコと私の頬を包むお父様。久しぶりに見ると眩しい!
お母様は綺麗だけど可愛らしい感じなのに、お父様はとても美人、じゃない美エルフ…でもなくて、美ハイエルフ。
エルフとハイエルフは違うんだよって、前にお父様が言ってた!目が笑って無くて怖かったから、きっと間違えちゃダメなやつ!
「でも、目元はローズに似てるね。可愛いよ」
お父様が嬉しそうにそう言うから、元に戻れて良かったなとしみじみ思う。
「伯爵家の荷物はもう運び終わったし、ここの荷物も先に運んじゃったから、このまま森の家に行くよ」
お父様が頭を撫でて言うから驚いたけど、私が大きくなったから森の家の増築や修復をしたり、買い物に行ったり、周囲の安全確認なんかをしていたそう。
それで、なかなか会えなかったのね。
「じゃあ帰ろうか」
お母様の腰を抱いて、お父様が差し出した手の平。足元には既に紋様が浮かび上がっている。
私は迷わずその手を握り、無事に家へと帰ったのでした。
▷end
▷to be continued
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