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第1部 星霊隊結成
第9話(1)狙われない村
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前回までのあらすじ
清峰侯爵の屋敷を目指す幸紀たちは、その途中四葉の通う高校にやってくる。高校に避難していた大勢の生徒たちを救い出した幸紀たちは、生徒たちを帰宅させる2チームと、清峰侯爵の屋敷を目指す1チームに分かれる。
3つのチームはお互いに清峰侯爵の屋敷で合流することを約束し、それぞれの道を進むのだった。
チーム分け
A:幸紀、日菜子、晴夏、明宵→屋敷を目指す
B:四葉、璃子、すみれ、望、心愛、紫黄里→生徒たちを帰宅させる
C:結依、弥生、雪奈、咲来、麗奈、水咲、江美→B班と別ルートで生徒たちを帰宅させる
6月20日 9:30 真川(さねがわ)県 久野(ひさの)町
清峰屋敷を目指すマイクロバスが、この町を進む。このバスの中にいるのは、幸紀、日菜子、晴夏、明宵の4人だけだった。
「いやぁ、随分人が減って寂しくなったなぁ」
晴夏は前方の席に座り、後部座席を眺めて呟く。つい1時間前までは10人以上いたはずのバスには、晴夏とその両隣に座る日菜子と明宵、そして運転席の幸紀の4人しかおらず、会話の声もほとんど聞こえなかった。
「そうだね…こんなに人がいないと、ちょっと逆に変な感じするね」
「な。可愛い子があんなにたくさんいたのに、オレと日菜子と明宵以外はみんな別行動って…悲しいぜ」
「でも、また、みんな、侯爵のお屋敷で会えるよ。それまで頑張ろう!」
愚痴っぽく言う晴夏を日菜子は明るく励ます。その会話に加わらず、黙って本を読んでいた明宵は、ふと窓の外を見ると、何かに気がついて席から立ち上がり、幸紀の近くへと歩き出した。
「…幸紀さん…」
「?」
「…強い霊力を扱える人間を探しているのですよね…でしたら、少し寄り道になりますが、この先の村に、ふたりほど心当たりがあります」
明宵の言葉に、幸紀の眉が動く。同時に、晴夏と日菜子も立ち上がり、明宵の話に耳を傾けた。
「明宵、その人たちのこと聞かせて!」
「可愛い?彼氏いる?」
明宵は本を閉じ、目を隠すほどに長い前髪の一部を弄びながら話し始めた。
「…簡単に申しますと、月暈(つきがさ)神社の巫女(みこ)と、そのお手伝いをしている人です」
「月暈神社…!決まりだな、行くぞ」
明宵の言葉を聞くと、幸紀はすぐに言い、車のハンドルを切る。状況が理解しきれない晴夏は、肩をすくめて尋ねた。
「おいおい、なんすか。めっちゃ食いついてるけど?その、神社っていうのは何?」
「昔から悪魔との戦いで活躍してきた神社だよ!そこの巫女さんは、代々強い霊力を持っていて、悪魔が現れた時にはそこの巫女さんが退治してくれてるんだ!」
晴夏の疑問に、日菜子が答える。晴夏はそれを聞くと、目を見開いた。
「じゃあ、マジで悪魔と戦う専門家じゃん!絶対仲間にしようぜ!」
「…しかし、この緊急事態、巫女が出払っている可能性は高いです…ましてや月暈神社の本社ですし、先ほど言った巫女は今から行く場所にはいないかもしれません…」
「構わん。行くぞ」
不安を口にする明宵に対し、幸紀は短く言い切る。彼の脳裏には、ひとつの考えがあった。
(月暈神社は悪魔軍が最も警戒している拠点のひとつ…となれば必然的により多くの悪魔と戦えるはず…巫女も味方にできれば、なお好都合だ)
幸紀はニヤリと口角をあげ、バスのアクセルをより深く踏む。バスは次の村を目指して走っていくのだった。
1時間後 10:30 真川県 月暈(つきがさ)村
1時間の間、悪魔から攻撃を受けることもなく、幸紀たちの乗るバスは山道を走り、目的地の村へと近づいていた。
前方の座席に座っていた日菜子は、昼間だというのになんとなく辺りが薄暗く、白い靄(もや)が出ているのに気がついた。
「ん?幸紀さん、霧が出てますよ!」
「山だからか…?明宵、道は合っているな?」
「…えぇ、このまま直進すれば月暈村です」
「ならばこのまま行くぞ」
幸紀は明宵に確認を取ると、アクセルを踏む足を緩めながら、バスで村の目印である大きな木製の鳥居をくぐるのだった。
白い靄の中をゆっくりと走り続けること数分、バスの窓からようやく民家が見え始める。見える建物の全てに、一切の攻撃を受けた様子がなかった。
(静かすぎる…悪魔の襲撃もないし、各地で悪魔が出没している状況でこの村の建物は全て無傷…何かがおかしい。悪魔軍にとって最も厄介なこの場所に、何の攻撃もないはずがない…)
幸紀は霧の中に漂う異様な静けさと建物や道路の清潔さに警戒を強める。そのうちに駐車場を見つけると、そこに慣れた手つきでバスを停車させた。
「着いたぞ。警戒を怠るな」
「了解!」
幸紀に言われながら、日菜子、明宵、晴夏の3人はバスを降りる。人の気配のない村は、やはり白い靄で包まれており、4人が周囲を見回すと、少し離れたお互いの顔は認識できても、さらに離れた景色は見えない状況だった。
「神社に向かう。明宵、神社はどっちだ」
「…あちらです」
幸紀は指示を出し、明宵に尋ねる。明宵が指で方角を指し示すと、靄の中に大通りがあり、さらにその先に大きな鳥居がぼんやりと見えた。
幸紀が歩き出し、他の3人もその後に続き、鳥居までの大通りを歩いていく。
大通りの横に見える建物は、今まで見てきた街と異なり、傷ひとつすらあるようには見えなかった。
「ここの村は悪魔に襲われてないんだな。ラッキーだね」
「…ここは悪魔にとっても厄介な場所なので…そんなはずはないのですが…」
晴夏の呟きに、明宵も違和感を口にする。
その瞬間、幸紀の前に、誰かが飛び出してくる。幸紀が足を止めると、その場の全員が足を止めた。
(ただの村人か)
幸紀は正面に現れた中年の男性を見てそう判断する。しかし、中年の男性は、幸紀たちの顔を見ると、信じられないものを見るような顔をした。
「あんたら…村のもんじゃないな…どこから来た…?」
「…そうだな…白鷺市の方から、だが」
「ぇええ…!と、とんでもないやつらだ…!あ、悪魔なんじゃないか…?」
村人の質問に幸紀が答えると、村人は驚いたように声を上げ、腰を抜かす。そんな村人の言葉を聞いた日菜子は、否定した。
「違いますよ!私たちは…」
「ひぃいっ!許してくれぇ!!」
村人は悲鳴にも似た声をあげながら、幸紀たちから逃げていき、靄の中に消えていく。幸紀たちは彼の背中を見送った。
「なんだあのおっさん?」
「私たち、そんなに変なことはしてないよね?なのに、なんであんなに…」
日菜子と晴夏が疑問を口にしていると、また別の声が聞こえてきた。
「お姉さんたち、村の外の人?だったら、ちょっと許してあげてほしいな」
聞こえてきたのは若い女性の声。幸紀たちが見ると、日焼けした褐色の肌に、赤茶色の跳ねた短髪の若い女性が立っていた。
明宵は、その女性の顔を見ると、わずかに微笑んで声をかけた。
「華燐(かりん)...」
「え、明宵、知り合いなの?」
「…えぇ。彼女が私の言ったふたりのうちのひとり、天道(てんどう)華燐(かりん)さんです」
明宵は日菜子たちに目の前にいる褐色肌の女性を紹介する。紹介された華燐は、小さく会釈をした。
「あぁ、明宵の友達だったんだ。アタシは華燐。よろしくね」
「華燐…村の様子がおかしいのですが、何が起きているのですか?」
華燐が軽く挨拶すると、明宵が本題を尋ねる。華燐は周囲を見回しながら話し始めた。
「それがね、アタシにもよくわからないんだけど、みんな、この村が悪魔に取り囲まれてるって思ってるらしいんだ」
「え?でも、私たちが見る限り、悪魔なんて…」
「そう、『いない』んだよ。アタシが見ても悪魔なんてどこにもいない。なのにみんな口を揃えたように『悪魔に囲まれてるから村から出ちゃいけない』って」
華燐は周囲を見回しながら村の状況を話す。理解に苦しむ状況に、日菜子たちは頭を抱えた。
「うーん…どういうことなんだ?みんな幻を見せられてるのか?」
「どうだとしても、ここにいても埒が明かない。神社に行くぞ」
晴夏の疑問を気にせず、幸紀はそう言って歩き出す。他のメンバーたちも幸紀に続いて歩き出すと、華燐もその列に加わった。
「ところで明宵、この人たちとはどういう関係なの?」
「…『星霊隊』の仲間同士です…歩きながら話しますね」
清峰侯爵の屋敷を目指す幸紀たちは、その途中四葉の通う高校にやってくる。高校に避難していた大勢の生徒たちを救い出した幸紀たちは、生徒たちを帰宅させる2チームと、清峰侯爵の屋敷を目指す1チームに分かれる。
3つのチームはお互いに清峰侯爵の屋敷で合流することを約束し、それぞれの道を進むのだった。
チーム分け
A:幸紀、日菜子、晴夏、明宵→屋敷を目指す
B:四葉、璃子、すみれ、望、心愛、紫黄里→生徒たちを帰宅させる
C:結依、弥生、雪奈、咲来、麗奈、水咲、江美→B班と別ルートで生徒たちを帰宅させる
6月20日 9:30 真川(さねがわ)県 久野(ひさの)町
清峰屋敷を目指すマイクロバスが、この町を進む。このバスの中にいるのは、幸紀、日菜子、晴夏、明宵の4人だけだった。
「いやぁ、随分人が減って寂しくなったなぁ」
晴夏は前方の席に座り、後部座席を眺めて呟く。つい1時間前までは10人以上いたはずのバスには、晴夏とその両隣に座る日菜子と明宵、そして運転席の幸紀の4人しかおらず、会話の声もほとんど聞こえなかった。
「そうだね…こんなに人がいないと、ちょっと逆に変な感じするね」
「な。可愛い子があんなにたくさんいたのに、オレと日菜子と明宵以外はみんな別行動って…悲しいぜ」
「でも、また、みんな、侯爵のお屋敷で会えるよ。それまで頑張ろう!」
愚痴っぽく言う晴夏を日菜子は明るく励ます。その会話に加わらず、黙って本を読んでいた明宵は、ふと窓の外を見ると、何かに気がついて席から立ち上がり、幸紀の近くへと歩き出した。
「…幸紀さん…」
「?」
「…強い霊力を扱える人間を探しているのですよね…でしたら、少し寄り道になりますが、この先の村に、ふたりほど心当たりがあります」
明宵の言葉に、幸紀の眉が動く。同時に、晴夏と日菜子も立ち上がり、明宵の話に耳を傾けた。
「明宵、その人たちのこと聞かせて!」
「可愛い?彼氏いる?」
明宵は本を閉じ、目を隠すほどに長い前髪の一部を弄びながら話し始めた。
「…簡単に申しますと、月暈(つきがさ)神社の巫女(みこ)と、そのお手伝いをしている人です」
「月暈神社…!決まりだな、行くぞ」
明宵の言葉を聞くと、幸紀はすぐに言い、車のハンドルを切る。状況が理解しきれない晴夏は、肩をすくめて尋ねた。
「おいおい、なんすか。めっちゃ食いついてるけど?その、神社っていうのは何?」
「昔から悪魔との戦いで活躍してきた神社だよ!そこの巫女さんは、代々強い霊力を持っていて、悪魔が現れた時にはそこの巫女さんが退治してくれてるんだ!」
晴夏の疑問に、日菜子が答える。晴夏はそれを聞くと、目を見開いた。
「じゃあ、マジで悪魔と戦う専門家じゃん!絶対仲間にしようぜ!」
「…しかし、この緊急事態、巫女が出払っている可能性は高いです…ましてや月暈神社の本社ですし、先ほど言った巫女は今から行く場所にはいないかもしれません…」
「構わん。行くぞ」
不安を口にする明宵に対し、幸紀は短く言い切る。彼の脳裏には、ひとつの考えがあった。
(月暈神社は悪魔軍が最も警戒している拠点のひとつ…となれば必然的により多くの悪魔と戦えるはず…巫女も味方にできれば、なお好都合だ)
幸紀はニヤリと口角をあげ、バスのアクセルをより深く踏む。バスは次の村を目指して走っていくのだった。
1時間後 10:30 真川県 月暈(つきがさ)村
1時間の間、悪魔から攻撃を受けることもなく、幸紀たちの乗るバスは山道を走り、目的地の村へと近づいていた。
前方の座席に座っていた日菜子は、昼間だというのになんとなく辺りが薄暗く、白い靄(もや)が出ているのに気がついた。
「ん?幸紀さん、霧が出てますよ!」
「山だからか…?明宵、道は合っているな?」
「…えぇ、このまま直進すれば月暈村です」
「ならばこのまま行くぞ」
幸紀は明宵に確認を取ると、アクセルを踏む足を緩めながら、バスで村の目印である大きな木製の鳥居をくぐるのだった。
白い靄の中をゆっくりと走り続けること数分、バスの窓からようやく民家が見え始める。見える建物の全てに、一切の攻撃を受けた様子がなかった。
(静かすぎる…悪魔の襲撃もないし、各地で悪魔が出没している状況でこの村の建物は全て無傷…何かがおかしい。悪魔軍にとって最も厄介なこの場所に、何の攻撃もないはずがない…)
幸紀は霧の中に漂う異様な静けさと建物や道路の清潔さに警戒を強める。そのうちに駐車場を見つけると、そこに慣れた手つきでバスを停車させた。
「着いたぞ。警戒を怠るな」
「了解!」
幸紀に言われながら、日菜子、明宵、晴夏の3人はバスを降りる。人の気配のない村は、やはり白い靄で包まれており、4人が周囲を見回すと、少し離れたお互いの顔は認識できても、さらに離れた景色は見えない状況だった。
「神社に向かう。明宵、神社はどっちだ」
「…あちらです」
幸紀は指示を出し、明宵に尋ねる。明宵が指で方角を指し示すと、靄の中に大通りがあり、さらにその先に大きな鳥居がぼんやりと見えた。
幸紀が歩き出し、他の3人もその後に続き、鳥居までの大通りを歩いていく。
大通りの横に見える建物は、今まで見てきた街と異なり、傷ひとつすらあるようには見えなかった。
「ここの村は悪魔に襲われてないんだな。ラッキーだね」
「…ここは悪魔にとっても厄介な場所なので…そんなはずはないのですが…」
晴夏の呟きに、明宵も違和感を口にする。
その瞬間、幸紀の前に、誰かが飛び出してくる。幸紀が足を止めると、その場の全員が足を止めた。
(ただの村人か)
幸紀は正面に現れた中年の男性を見てそう判断する。しかし、中年の男性は、幸紀たちの顔を見ると、信じられないものを見るような顔をした。
「あんたら…村のもんじゃないな…どこから来た…?」
「…そうだな…白鷺市の方から、だが」
「ぇええ…!と、とんでもないやつらだ…!あ、悪魔なんじゃないか…?」
村人の質問に幸紀が答えると、村人は驚いたように声を上げ、腰を抜かす。そんな村人の言葉を聞いた日菜子は、否定した。
「違いますよ!私たちは…」
「ひぃいっ!許してくれぇ!!」
村人は悲鳴にも似た声をあげながら、幸紀たちから逃げていき、靄の中に消えていく。幸紀たちは彼の背中を見送った。
「なんだあのおっさん?」
「私たち、そんなに変なことはしてないよね?なのに、なんであんなに…」
日菜子と晴夏が疑問を口にしていると、また別の声が聞こえてきた。
「お姉さんたち、村の外の人?だったら、ちょっと許してあげてほしいな」
聞こえてきたのは若い女性の声。幸紀たちが見ると、日焼けした褐色の肌に、赤茶色の跳ねた短髪の若い女性が立っていた。
明宵は、その女性の顔を見ると、わずかに微笑んで声をかけた。
「華燐(かりん)...」
「え、明宵、知り合いなの?」
「…えぇ。彼女が私の言ったふたりのうちのひとり、天道(てんどう)華燐(かりん)さんです」
明宵は日菜子たちに目の前にいる褐色肌の女性を紹介する。紹介された華燐は、小さく会釈をした。
「あぁ、明宵の友達だったんだ。アタシは華燐。よろしくね」
「華燐…村の様子がおかしいのですが、何が起きているのですか?」
華燐が軽く挨拶すると、明宵が本題を尋ねる。華燐は周囲を見回しながら話し始めた。
「それがね、アタシにもよくわからないんだけど、みんな、この村が悪魔に取り囲まれてるって思ってるらしいんだ」
「え?でも、私たちが見る限り、悪魔なんて…」
「そう、『いない』んだよ。アタシが見ても悪魔なんてどこにもいない。なのにみんな口を揃えたように『悪魔に囲まれてるから村から出ちゃいけない』って」
華燐は周囲を見回しながら村の状況を話す。理解に苦しむ状況に、日菜子たちは頭を抱えた。
「うーん…どういうことなんだ?みんな幻を見せられてるのか?」
「どうだとしても、ここにいても埒が明かない。神社に行くぞ」
晴夏の疑問を気にせず、幸紀はそう言って歩き出す。他のメンバーたちも幸紀に続いて歩き出すと、華燐もその列に加わった。
「ところで明宵、この人たちとはどういう関係なの?」
「…『星霊隊』の仲間同士です…歩きながら話しますね」
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