追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-

晴本吉陽

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第1部 星霊隊結成

第9話(2)月暈一家

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数分後 月暈神社

 大通りを歩いてきた幸紀たちは、村の中央にある月暈神社の鳥居をくぐり、神社の境内にやってきた。

「大きい神社だなぁ」

 境内にやってきた晴夏は、正面に見える本殿を見て呟く。そんな晴夏に、華燐が笑顔で話し始めた。

「そりゃそうよ。だってあの月暈神社の本社だよ?この村はこの神社のおかげで栄えてるんだから」

「そうなの?」

「そうだよ。おかげでこの村のみんなはこの神社の宮司さんに頭が上がらないんだ。実質的な村長みたいなものだよ」

 華燐が得意げな表情で語ると、晴夏は感心したように唸る。それも気にせず、幸紀は周囲を見回した。

「巫女も宮司もいないようだが」

「…あちらの管理事務所だと思います」

 幸紀の呟きに、明宵が神社の横にある小屋を指差す。幸紀はそれを見ると、小屋の入り口へと近づいた。
 すると、小屋の中から人の話し声が聞こえてきた。

「…本当にそれしかないというのですか…!!」

「…不本意だとも…しかしこれだけの悪魔の包囲から、この村の人々を守るためには…」

 感情的な女性の声と、冷静だが不服そうな男性の声。幸紀は中の雰囲気を無視して扉を叩いた。

「失礼、どなたかいらっしゃいますか」

 幸紀が尋ねると、部屋の中での会話がぴたりと止まる。そして扉が開いて現れたのは、黒い長髪に赤い瞳、黒い和服に赤い袴姿の若い女性だった。

「はい。どのようなご用件でしょうか」

 現れた女性は、幸紀に丁寧な物腰で尋ねる。幸紀が小屋の中を見ると、目の前の女性の両親と思われる男女がいた。

「...朋夜(ともよ)さん」

 幸紀が部屋を見ているのをよそに、明宵が目の前の女性に話しかける。朋夜と呼ばれたその女性は、明宵の姿を見て目を見開いた。

「まぁ…明宵!よく来てくださいましたね」

「明宵、知り合い?」

 親しげに朋夜と話す明宵を見て、日菜子が尋ねる。明宵は朋夜の横に立って話し始めた。

「…はい。この人が、月暈神社の巫女のひとり、月暈(つきがさ)朋夜(ともよ)さんです」

「美人でしょ?」

 明宵が朋夜を紹介するのに便乗して、華燐も朋夜の隣にきて自慢する。朋夜は華燐の姿を見て驚いた。

「華燐…!家にいなければダメですよ!...いや、それよりも、ご紹介に預かりました、朋夜と申します。以後お見知り置きを」

 朋夜は幸紀たちに向き直ると、丁寧にお辞儀をする。朋夜の上品な佇まいに、日菜子たちも思わずお辞儀を返した。

「こ、こんにちは」

「朋夜、お客様かね?」

 朋夜が幸紀たちの応対をしていると、奥から男の声が聞こえてくる。朋夜はそちらに向き直った。

「はい。そのようです」

「では上がっていただきなさい。父が話す」

「かしこまりました。ではみなさま、中へどうぞ」

 朋夜は幸紀たちを部屋の中に招き入れる。畳が敷かれた小屋の中は、玄関こそ狭いものの、中は大人数が入ってもある程度余裕のある広さだった。
 幸紀は靴を脱ぐと、畳の上で並んで正座している男女の前に正座した。

(白い和服の男に、黒い和服の女…それぞれこの神社の宮司と巫女だな)

 幸紀は目の前にいる男女をそう判断すると、背筋を正す。そんな幸紀を見て、男から切り出した。

「私はこの神社の最高責任者であります、月暈(つきがさ)道長(みちなが)。こちらの妻はミヤコと申します」

「…東雲幸紀と申します。清峰侯爵の名代として参りました。ご高名はかねがね」

 幸紀は丁寧に話し始める。そんな幸紀の様子を見て、星霊隊の他のメンバーたちも思わずかしこまって正座した。
 道長は少し会釈をすると、話を始めた。

「東雲殿、清峰殿の名代ということですが、いかなご用ですかな?」

「現在我々は悪魔に対抗する部隊、『星霊隊』のメンバーを集めています。選抜条件は霊力を扱えること。ここの巫女をひとりでもお借りできないかと思い、ここまで来ました」

 道長の問いに、幸紀は冷静に答える。道長はそれを聞くと、残念そうに俯いた。

「残念ながらお力にはなれそうにありませんな…せっかくこの悪魔の包囲を切り抜けてきていただいたのに…」

「悪魔なんて…」

 道長に対して反論しそうになった晴夏と華燐を、幸紀は手だけで制止する。ふたりはそれに従うと、大人しく正座しなおした。

「…そうですか。では、引き下がりましょう。お邪魔いたしました」

「またいつでも。力になりましょうぞ。朋夜、送って差し上げなさい」

 幸紀が立ち上がると、道長はその背中に言う。一方の幸紀は、他の星霊隊のメンバーたちを引き連れ、朋夜に案内されながら小屋を出て行くのだった。

 小屋の外に出て、神社の鳥居の前まで戻ってきた幸紀たち。早速、華燐が幸紀に尋ねた。

「幸紀さん?なんで言わないんすか、『悪魔なんていない』って」

「華燐ちゃん、幸紀さんには考えが…」

 日菜子の制止も聞かず、華燐は話を続けた。

「月暈神社のあの3人は、存在もしない悪魔たちに脅されてることになるんすよ?」

「どういうことだ?」

 華燐の言葉を理解しきれなかった幸紀は、華燐に尋ね返す。華燐は神社から離れ、誰にも聞かれてないことを確認すると、小声で話し始めた。

「…この間盗み聞いちゃったんすけど、なんか、悪魔が交渉にきたらしくて…月暈神社のあの3人の命を差し出せば、村を囲んでいる悪魔も撤退させるし、村人も助けるって…」

「本当、それ?」

「うん、悪魔の侵略が始まった日、宮司さんと悪魔が話してるっぽいのを聞いちゃったんだ。でも、宮司さんたちアタシらには何も言わないから、たぶん…アタシらを守るために自分たちだけ犠牲になろうとしてるんじゃないかと思って…!」

「そんな…」

(何か変だな…)

 華燐の話に言葉を失う日菜子たちに対し、幸紀はひとり無言で違和感を覚えていた。そんなことをよそに、華燐は話を進めた。

「でも、これでわかった。村のみんなに『悪魔なんていない』って伝えてくる!アタシひとりじゃ確信持てなかったけど、外から来た人もそういってるんだから間違いない!村のみんなで宮司さんに訴えれば、きっと止まってくれる!朋夜も助けられる!アタシ行ってくる!」

「あ、待って華燐ちゃん!」

 日菜子が止めるのも聞かず、華燐は走り出す。日菜子は幸紀の方を向いた。

「どうしましょう!?」

「日菜子と晴夏で華燐を追え」

「よっしゃ」

 幸紀が指示を出すと、日菜子と晴夏は華燐の後を追って走り出す。その場に残った明宵に、幸紀は話し始めた。

「明宵、魔力を調べるんだ」

「魔力…?...!そういうことですね、わかりました…!」

 明宵は幸紀の指示を受けると、自分の武器である魔導書を発現させ、それを開く。明宵がそうしている間に、幸紀は周囲を見回した。

(悪魔は『いる』。だがこの村を囲んでいるわけじゃない…たった数体でこの村に潜り込み、村人全体に幻覚を見せている…だとすれば、怪しいのは当然あの神社…最低でもあの3人のうちの誰かが、悪魔のはずだ)

 幸紀はそう考えつつ、明宵の調査結果を待つのだった。
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