追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-

晴本吉陽

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第1部 星霊隊結成

第10話(3)異世界での再会

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数分後

 草むらを走り続けていた千鶴の背後から、女性の悲鳴のようなものが聞こえてくる。千鶴は思わず足を止めると、振り向いた。

(菜々子さん…!)

 千鶴は菜々子がされたことを思うと、思わず目をつぶる。しかし、すぐに首を横に振った。

(ダメ、止まっちゃ…今は行かなきゃ…!)

「ウビャアアァアア!!」

「!」

 足を止めていた千鶴の横から、突然悪魔の唸り声が聞こえてくる。千鶴がそちらを見ると、筋骨隆々の赤い悪魔が千鶴の首に手を伸ばし、千鶴を締め上げ始めた。

「んぅっ…!!」

(い、息が…っ!!)

 千鶴はそのまま悪魔に押し込まれ、地面に押し倒されると、悪魔に馬乗りされる。千鶴は必死に振りほどこうとするが、悪魔の力は強く、千鶴の抵抗は通用しなかった。

(い…や…っ)

 千鶴の意識が遠のき、息ができなくなっていく。死ぬのはこういう感覚なのかと、千鶴は一周回って客観的になっていた。

「オラァッ!!」

 千鶴が諦めたその瞬間、横合いから裂帛の気合いと共に、スニーカーのつま先が悪魔のこめかみに直撃する。
 悪魔が千鶴から離れて蹴りの飛んできた方を見ると、次の瞬間には、悪魔の脳天にヌンチャクの一端が振り下ろされた。

「アギャアァ!!」

 悪魔は悲鳴を上げながら、体の内側から爆発する。千鶴は、突然の状況に目を見開いていたが、悪魔を倒した人間である華燐は、自分の武器であるヌンチャクに軽く息を吹きかけ、背後に向けて手を振った。

「こっちっす!人が倒れてるっす!」

 華燐が声を発すると、すぐにぞろぞろと人がやってくる。千鶴は見ず知らずの女性達に囲まれて戸惑っていると、朋夜が千鶴に手を差し伸べた。

「お怪我はありませぬか?」

「は、はい…なんとか…」

 千鶴は朋夜に手を引かれながら立ち上がる。直後、幸紀と晴夏が遅れてやってきた。

「遅くなったな。邪魔が入った」

「つっても数体だったけどな!オレと幸紀さんならラクショー…」

 晴夏は調子に乗って話していたが、千鶴の顔を見て急に話を止める。千鶴が晴夏の方を見ると、晴夏は目を丸くした。

「…千鶴…?」

「えっ…?なんで私の名前を…?」

 突然知らない人間が自分の名前を言い当てたことに、千鶴は戸惑いを隠せなかった。一方の晴夏も信じられないようなものを見る目で千鶴のことを見続けていた。

「晴夏、どうしたの?」

 日菜子が晴夏に尋ねる。すると、今度は千鶴の方が晴夏を見て目を見開いた。

「晴夏…鳴神《なるかみ》晴夏《はるか》くん…!?」

「うっ...!」

「ハルくんだよね!?え!?なんでここにいるの!?しかも、女の子になっちゃってるし…」

「あぁちくしょう、なんでよりにもよってこんなめんどくさいのが…」

 驚きを隠せない千鶴に対し、晴夏は頭を抱える。状況が理解できない幸紀は晴夏に尋ねた。

「晴夏、この女は何者だ、どういう関係だ」

「あぁ、ええと…ちょっと複雑で…」

「…待ってください、それよりも重要なものが」

 晴夏が話そうとすると、明宵がしゃがみこみながらそれを遮る。幸紀がそちらに振り向くと、朋夜と華燐もしゃがみこみ、明宵が指差したものを拾い上げていた。

「朋夜!」

「間違いありませぬ、日菜子さまの妹さまにお譲りした武器です!」

「!!」

 日菜子は朋夜の言葉を聞くと、すぐに千鶴の方に振り向き、千鶴の両肩を握った。

「ねぇ!!ねぇ!!」

「え、あ、はい!なんです!?」

「あの武器!この、この銀髪の子から貰わなかった!?」

 日菜子は動揺しながらスマホを取り出し、菜々子の画像を見せる。千鶴は動揺しながら画像を見て頷いた。

「は、はい、この人から…」

「どこ!!菜々子はどこにいるの!?」

 日菜子は血相を変えて千鶴に迫る。千鶴は少し混乱しながら、菜々子の悲鳴が聞こえた方を指差した。

「あ、あっちの方です。私を逃すために、悪魔達と戦ってて…でも悲鳴が…も、もしかしたら、もう…」

 千鶴が言うと、日菜子は無言で俯く。そして、ゆっくりと振り向き、千鶴が指差した方向を向いて、千鶴に背中を向けた。

「ありがとう」

 日菜子はそれだけ言うと何も言わずに歩き出す。そんな日菜子の背中に、華燐が声をかけた。

「日菜子さん、どこいくんすか!」

「止めないで、菜々子を助けるの!」

「ひとりじゃ危ないっすよ!」

「でも行く!」

 日菜子はそう言うと華燐の制止を振り切って走り出す。独断で動く日菜子の姿を見て、朋夜と明宵が幸紀に尋ねた。

「どういたしましょう、幸紀さま」

「…あれほど感情的に動く日菜子さんは初めて見ました…霊力も溢れていますが…どうなるかわかりませんね…」

 幸紀はふたりの言葉を聞くと、黒いロングコートをたなびかせ、彼女達に背を向けた。

「あの方角はおそらく研究所の裏口に通じている。お前達は日菜子を手伝ってやれ」

「幸紀さんは?」

「表からいく」

 幸紀は短くそう言うと、霊力で刀を右手に発現させ、低い姿勢で走り始める。朋夜たちが戸惑う間もなく、幸紀は姿を消すのだった。

「幸紀さま!...行ってしまいましたか…」

「しょうがない、日菜子さん追いかけようよ」

「…賛成です。ですが、そちらの女性…千鶴さんとおっしゃいましたか、霊力を持ち合わせていないようですが、どうしましょうか」

 華燐の提案に対し、明宵が質問する。不安そうにする千鶴の表情を見て、すぐに晴夏が答えた。

「大丈夫、千鶴はオレが守るからさ、みんなで行こうぜ!」

「ま、待ってよハルくん、私が行っても戦えないよ…!」

「でもひとりで居たらもっと危ねぇよ、この武器だけ持ってオレたちについてこい、な?」

 千鶴に対し、晴夏が武器を差し出しながら言う。千鶴は迷いながらも、それを受け取ると、晴夏の方を見て頷き、それを見た晴夏はメンバー達の先頭を走り出した。

「いよーし、みんな!オレについてこい!」

「元気なのはいいけど、足元掬われないでよ?」

 晴夏の言葉に、華燐が釘を差しながら晴夏の後を追うように走り出す。それに続いて他のメンバー達も走り出すのだった。
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