追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-

晴本吉陽

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第2部 人類の反撃

第15話(3)気高い副会長-四葉とすみれ-

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17:00 豪邸のリビング

「では、次はこの作戦で行こう!今日は解散です!お疲れ様でした!」

 偵察班からの通信を受け、情報を受け取った日菜子たちは、それを基に作戦を立案する。作戦会議を終えた彼女たちは、お互いに一礼し、会議を解散した。
 後片付けを焔に任せ、日菜子たちは席を外す。それに合わせて、幸紀も部屋を出た。
 たまたま幸紀が選んだ方向に、四葉だけがやってくる。誰もいない廊下で、幸紀と四葉は並んで歩き始めた。

「四葉、そういえば、日菜子たちが褒めていたぞ」

「え?そうなんですか?」

「あぁ。四葉のおかげで、星霊隊は組織として盤石になった、と」

 幸紀は日菜子たちが話していたことを簡潔にまとめて伝える。四葉はそれを聞くと、目を逸らしてメガネを掛け直した。

「い、いえ、その…私は、みんなに支えられてるからできるのであって…すみれや、心愛、望に、紫黄里。同じ学校のみんながいるから、頑張れているだけです」

 四葉は幸紀に対して謙遜する。幸紀が軽く聞き流していると、廊下の曲がり角から、心愛と望が現れた。

「あ!四葉!シノさんも!」

「お疲れ様です」

 心愛と望は幸紀に挨拶する。幸紀が軽く会釈をすると、心愛は早速、四葉に話しかけた。

「ねぇねぇ四葉!次の作戦決まった?」

「うん!また、心愛の歌声でみんなの傷を治しながら戦ってもらうよ」

「任せて!」

 心愛と四葉が明るくやり取りをしていると、その背後から望が小さくため息をついた。

「ついこの間まで学校に閉じ込められて絶望してたとは思えない明るさ。尊敬するよ、全く」

 望の言葉を聞くと、四葉は改めて幸紀の方に向き直って頭を下げた。

「東雲さん、あの時は、無茶を聞いてくださって、本当にありがとうございました」

「どういうこと、四葉?」

「私たち、本当だったら学校を素通りする予定だったの。でも、私、どうしても皆の様子が気になって…だから、東雲さんに無理を言って、ルートを変えてもらったんだ」

 四葉が言うと、心愛は素直に驚き、望も小さく眉を上げる。すぐに心愛は幸紀の方に向いて礼を言い始めた。

「本当にありがとう!シノさん!」

「…ありがとうございます、東雲さん」

 心愛に続いて、望も礼を言う。それに対して幸紀は鼻で笑い飛ばした。

「『優秀な人間がいる』、四葉がそう言ったからそれを信じただけのことだ。実際、あれだけの悪魔の攻勢を凌いできたのは褒められて然るべきだな」

「やっぱり、すみれちゃんが頑張ってくれたおかげだね!」

「どういうことだ?」

 幸紀の言葉に、心愛が言う。状況が飲み込みきれない幸紀が尋ねると、望が話し始めた。

「学校で籠城していた時、私たちの指揮を執っていたのはすみれなんです。四葉が生徒会長、すみれが副会長なので、四葉がいない間は、すみれが頑張っていました」

「そうそう!先生たちも皆殺されちゃって…そんな中で頑張ってくれてたのがすみれちゃんだったの!」

「東雲さんたちが助けにきてくれたときは、本当にギリギリのタイミングでした私たちも、すみれも、本当に追い込まれてて…」

「ね。助けてもらえなかったらって思うと、今でもゾッとするよ…殺されちゃった人も、かなり多かったし…」

 望と心愛が、自分たちの経験してきたことを語る。改めて、仲間たちの晒されていた危機的状況を思い知らされた四葉は、俯いて眼鏡に手を置いた。

「そんなことになってたんだ...すみれにはかなり無理させちゃったな...」

「四葉のせいじゃないよ。それに、私たちだってすみれに背負わせてた部分もたくさんある」

「それでも、すみれちゃんは本当にすごく頑張ってくれてたんだよ!『四葉がいないぶん、私が頑張るんだ』って!あの日まで生き残れたのも、すみれちゃんのおかげだよ、本当に!」

 
 望と心愛は四葉をフォローするように口々に言う。

「すみれはかなり頼りにされていたようだな」

 ふたりの態度を見て幸紀はつぶやく。そんな幸紀の言葉に、四葉は強くうなずいた。

「そうです。すみれは、身体的にも、精神的にも強くて頼りになる人なんです。一緒に生徒会の仕事をするときも、いつも副会長として支えてくれて。私が星霊隊の副長をやるってなったとき、一番参考にさせてもらったくらい、私は彼女を頼りにしています」

 四葉はすみれへの信頼を臆面もなく語る。幸紀はそれを聞いて、静かに頷いた。

(確かにすみれは大柄で、パワーもあり、戦闘能力も高い部類だ。頼りにされていたのも納得だな)

 幸紀がひとりそう思っていると、そこに紫黄里がやってきた。

「むむ、四葉たちではないか!みんな揃ってどうしたのだ?」

「あ、紫黄里!偵察お疲れ様」

「たまたま集まって話してただけ。学校に閉じ込められてた時のことをね」

 心愛があいさつし、望が紫黄里に状況を説明すると、紫黄里は幸紀のほうに向きなおって頭を下げた。

「あの...その節は、ありがとうございました」

 紫黄里はいつもの芝居がかった口調ではなく、しおらしく礼儀正しい口調で幸紀に礼を言う。幸紀は小さく肩をすくめると、言葉少なく返した。

「気にするな」

「そんなこと言っても…あのときは、すみれすらもヤケになるくらいだったから、本当に危なかったんです。それを助けてくれたんですから、いくらお礼を言ってもいい足りないですよ。そうだろう!?皆のもの!」

「急に切り替わるね」

 真面目に礼を言っていた紫黄里が、唐突に芝居がかった口調に戻る。紫黄里は同意を求めるためにメンバーたちの顔をうかがったが、直後、違和感に気がついた。

「あれ、すみれは?」

「そういえば見かけないね」

「どこか歩いてるんじゃないの?」

 紫黄里の問いに、心愛と望は短く答える。何か嫌な予感を覚えた四葉は、少し表情を固くして紫黄里に尋ねた。

「紫黄里、なにか心当たりがあるの?」

「いや、そんな大層なことじゃないんだけど…偵察行く前にすみれに会ってね?そのときのすみれ、なんか…様子が変っていうか…疲れてたのかな?とにかく、ちょっと気になったんだ」

 紫黄里の言葉を聞くと、四葉はふと数時間前のことを思い返す。ほんの一瞬だが、すみれの様子がおかしい瞬間があったのが、四葉の記憶の中にあった。

「...」

「四葉?」

「...みんな、とりあえず、すみれを探してくれる?何もなかったらそれでいいんだけど…」

 四葉は自分に自信が持てないような様子で他の3人に指示を出す。3人は、不思議に思いながら四葉の方を向いた。

「どうしたの?」

「まだわからないけど...何か嫌な予感がするの。とにかく、手分けしてすみれを探して!」

 四葉が指示を出すと、それに応じて望、心愛、紫黄里の3人は散らばって動き出す。その場に残っていた幸紀にも、四葉はすぐに頭を下げた。

「東雲さん、すみれを探すの、手伝ってください!」

「いいだろう」

 四葉に頼まれた幸紀は、そう答えると、四葉と共に歩き始めた。
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