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第2部 人類の反撃
第16話(4)鍵-晴夏と千鶴-
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16:00
授業がひと通り終わり、放課後になった。
千鶴のクラスにいる悪魔はユウカだけでなく、他にも数名、声と服装だけが人間の姿をした悪魔たちが、あたかも普通の学生かのように過ごしていた。そして、その異常な光景に気づいているのは、おそらく千鶴と、晴夏だけだった。
(誰も何も気づいてない…先生も、生徒も…自分のクラスメートが悪魔になってるのに、何も…こんなの絶対おかしい…!!ハルくんだって…!)
千鶴は1番後ろの席から、晴夏の弱々しく丸まった背中を見つめる。そして、千鶴は自分のバッグを持ち、教室を出ようと立ち上がった。
(もう、自分でなんとかする…!みんなを取り戻す…!)
千鶴はそう決意を固めると、雑談を交わす生徒たちの間を堂々と進み、教室を出ていくのだった。
廊下に出た彼女の視線の先にも、制服に身を包んだ悪魔たちが談笑を交わす。千鶴はそれを無視して校舎を出ようと歩き続けた。
(こんなの、終わらせなきゃ…でも、どうしたら…)
(聞こえるか)
「誰...!?」
突然、千鶴の脳内に直接聞こえてきた男の声。千鶴が周囲を見回しても、その声の主はどこにもいなかった。しかし、声はそのまま話を続けた。
(どうやら聞こえているようだな、千鶴)
「幸紀さん…!?」
千鶴はその声の正体に気が付き、声を上げる。しかし、その声は冷静に千鶴に指示を出した。
(声を立てるな。この声はお前にしか聞こえていない。周囲の連中に怪しまれるぞ。このままでは会話もできない、どこか人のいないところに行けないか)
千鶴は聞こえてくる幸紀の声に従い、足を早めて校舎を出る。そんな状況を理解したのか、幸紀は話を続けた。
(そちらが移動している間に状況を説明する。結論から言うと、今お前たちのいる世界にも、悪魔軍が侵攻を開始した。原理は省略するが、お前たちがそちらにいることによって、星霊隊の世界とそちらの世界が繋がっている)
(嘘でしょ…!?)
(星霊隊の世界とお前たちの世界を自由に行き来できる悪魔軍は、悪魔の存在を認識できないお前たちの世界から侵略していくだろう。お前と晴夏がこちらに戻らない限り、悪魔はそちらの世界の住民を食い、増殖するだろうな)
幸紀の声は淡々と状況を語る。千鶴はそれを聞きながら、校門の付近にたむろする学生たちの間をすり抜け、スマホを取り出しながら、人の少ない通りの方へと歩いていく。
千鶴はスマホを耳に当てながら歩くと、あたかも誰かと通話しているかのように見せかけながら話し始めた。
「もしもし、聞こえてますか、見えますか?」
(あぁ。姿は見えないが、声は聞こえる)
「それで、結局私はどうしたらいいですか?」
(俺の刀を探せ。気配から察するに、お前たちに近いどこかの広場に刺さっているはずだ。刀は世界を移動する『鍵』の役割を果たす。これを使ってふたりでこちらの世界に戻ってこい)
「幸紀さん、助けに来てくれないんですか?」
(無理だ)
「どうして?」
(俺たちは世界を移動する手段を持ち合わせていない。お前たちが世界を移動する時に、運良く刀だけは送り込めた状況だ。悪魔を仕留めるはずが世界移動に吸い込まれるとは思わなかったが)
「…とりあえずわかりました。確認させてほしいんですけど、こっちに入り込んだ悪魔は、どうしたらいいですか?」
(明宵によれば、お前たちがこちらに戻った時点でそちらにいる悪魔たちも一緒にこちらに戻るそうだ。だから、とにかく俺の刀を探し出すんだ)
「...了解しました」
千鶴は幸紀からの指示を受けると、それに従って動くため、スマホを耳から離し、地図を確認し始める。自分の現在地に近い最寄りの広場や公園を探し始めた。
(広場…広場…)
「千鶴…」
スマホの画面に夢中になる千鶴の背後から、覇気のない晴夏の声が聞こえてくる。千鶴は振り向き、晴夏の顔を見ると、彼ににじり寄り、彼を見上げながら話し始めた。
「ハルくん、聞いて。今、幸紀さんから指示を聞いたの。こっちの世界に幸紀さんの刀が来てて、それを使って向こうの世界に帰らないと、こっちの世界に悪魔が侵略してくるって。一緒に探して!」
「向こうの…世界…」
「そう!こっちの世界を守るには、向こうの世界に戻るしかないみたいなの!だから、私は向こうに戻る!ハルくんも手伝って!」
「ち、千鶴…オレは…!」
「木村さん、鳴神さん」
千鶴の言葉に、晴夏は悲痛な面持ちで言葉を発する。そんなふたりの横から聞こえてくる男性の声。ふたりがそちらを向くと、スーツ姿の男性が、ゆっくりと2人の方へと歩いてくる。彼は、2人をこちらの世界に戻した松本だった。
「松本さん!」
「覚えていてくれて嬉しいです。早速ですが、調査のために来ましたので、いくつか質問をさせていただいてもよろしいですか?」
松本はジャケットの内ポケットからメモ帳を取り出しながらふたりに歩み寄る。千鶴はそんな松本に向き合った。
「松本さん、聞いてください。私たちを元の世界に戻してほしいんです!」
「…なんですって?」
「私たちがこっちに来たせいで、向こうの世界の悪魔たちがこっちの世界に来てしまってるんです!ですから、私たちを元の世界に…」
懸命に説明する千鶴の頬を、突然松本は殴り抜く。千鶴が地面に倒れると、松本は千鶴を見下ろした。
「『元の世界』ぃ?こっちが元の世界でしょう。戻してやったのは私たちです。それに感謝もしないで『帰りたい』?ふざけるなよ小娘?」
「ま、待ってくだ…あぐぅっ!!」
松本は倒れた千鶴の腹に蹴りを叩き込む。千鶴の体が大きく跳ね上がるのを見て、晴夏は千鶴を助けようとしたが、同時に、晴夏の目には松本の顔が悪魔に変わっているのが見えた。
(…!)
「反省しろ!小娘!反省しろ!反省しろ!!」
松本は怒鳴りながら千鶴を踏みつけていく。目の前で千鶴が蹂躙される姿と、蹂躙する悪魔の姿。晴夏はそこから一瞬目を逸らしたが、恐怖を振り切って動き始めた。
「やめろっ!!」
次の瞬間、晴夏は松本の体に、タックルを叩き込む。千鶴を踏みつけようとしていた松本は、晴夏にタックルされてその場に倒れ込んだ。
「がぁっ!こんの…!」
「逃げるぞ、千鶴!」
晴夏は倒れた千鶴を立ち上がらせ、松本から逃げるように、千鶴の手を引いて走っていく。松本は内ポケットからスマホを取り出すと、どこかへと連絡し始めた。
「逃げられると思うなよ…『星霊隊』!」
授業がひと通り終わり、放課後になった。
千鶴のクラスにいる悪魔はユウカだけでなく、他にも数名、声と服装だけが人間の姿をした悪魔たちが、あたかも普通の学生かのように過ごしていた。そして、その異常な光景に気づいているのは、おそらく千鶴と、晴夏だけだった。
(誰も何も気づいてない…先生も、生徒も…自分のクラスメートが悪魔になってるのに、何も…こんなの絶対おかしい…!!ハルくんだって…!)
千鶴は1番後ろの席から、晴夏の弱々しく丸まった背中を見つめる。そして、千鶴は自分のバッグを持ち、教室を出ようと立ち上がった。
(もう、自分でなんとかする…!みんなを取り戻す…!)
千鶴はそう決意を固めると、雑談を交わす生徒たちの間を堂々と進み、教室を出ていくのだった。
廊下に出た彼女の視線の先にも、制服に身を包んだ悪魔たちが談笑を交わす。千鶴はそれを無視して校舎を出ようと歩き続けた。
(こんなの、終わらせなきゃ…でも、どうしたら…)
(聞こえるか)
「誰...!?」
突然、千鶴の脳内に直接聞こえてきた男の声。千鶴が周囲を見回しても、その声の主はどこにもいなかった。しかし、声はそのまま話を続けた。
(どうやら聞こえているようだな、千鶴)
「幸紀さん…!?」
千鶴はその声の正体に気が付き、声を上げる。しかし、その声は冷静に千鶴に指示を出した。
(声を立てるな。この声はお前にしか聞こえていない。周囲の連中に怪しまれるぞ。このままでは会話もできない、どこか人のいないところに行けないか)
千鶴は聞こえてくる幸紀の声に従い、足を早めて校舎を出る。そんな状況を理解したのか、幸紀は話を続けた。
(そちらが移動している間に状況を説明する。結論から言うと、今お前たちのいる世界にも、悪魔軍が侵攻を開始した。原理は省略するが、お前たちがそちらにいることによって、星霊隊の世界とそちらの世界が繋がっている)
(嘘でしょ…!?)
(星霊隊の世界とお前たちの世界を自由に行き来できる悪魔軍は、悪魔の存在を認識できないお前たちの世界から侵略していくだろう。お前と晴夏がこちらに戻らない限り、悪魔はそちらの世界の住民を食い、増殖するだろうな)
幸紀の声は淡々と状況を語る。千鶴はそれを聞きながら、校門の付近にたむろする学生たちの間をすり抜け、スマホを取り出しながら、人の少ない通りの方へと歩いていく。
千鶴はスマホを耳に当てながら歩くと、あたかも誰かと通話しているかのように見せかけながら話し始めた。
「もしもし、聞こえてますか、見えますか?」
(あぁ。姿は見えないが、声は聞こえる)
「それで、結局私はどうしたらいいですか?」
(俺の刀を探せ。気配から察するに、お前たちに近いどこかの広場に刺さっているはずだ。刀は世界を移動する『鍵』の役割を果たす。これを使ってふたりでこちらの世界に戻ってこい)
「幸紀さん、助けに来てくれないんですか?」
(無理だ)
「どうして?」
(俺たちは世界を移動する手段を持ち合わせていない。お前たちが世界を移動する時に、運良く刀だけは送り込めた状況だ。悪魔を仕留めるはずが世界移動に吸い込まれるとは思わなかったが)
「…とりあえずわかりました。確認させてほしいんですけど、こっちに入り込んだ悪魔は、どうしたらいいですか?」
(明宵によれば、お前たちがこちらに戻った時点でそちらにいる悪魔たちも一緒にこちらに戻るそうだ。だから、とにかく俺の刀を探し出すんだ)
「...了解しました」
千鶴は幸紀からの指示を受けると、それに従って動くため、スマホを耳から離し、地図を確認し始める。自分の現在地に近い最寄りの広場や公園を探し始めた。
(広場…広場…)
「千鶴…」
スマホの画面に夢中になる千鶴の背後から、覇気のない晴夏の声が聞こえてくる。千鶴は振り向き、晴夏の顔を見ると、彼ににじり寄り、彼を見上げながら話し始めた。
「ハルくん、聞いて。今、幸紀さんから指示を聞いたの。こっちの世界に幸紀さんの刀が来てて、それを使って向こうの世界に帰らないと、こっちの世界に悪魔が侵略してくるって。一緒に探して!」
「向こうの…世界…」
「そう!こっちの世界を守るには、向こうの世界に戻るしかないみたいなの!だから、私は向こうに戻る!ハルくんも手伝って!」
「ち、千鶴…オレは…!」
「木村さん、鳴神さん」
千鶴の言葉に、晴夏は悲痛な面持ちで言葉を発する。そんなふたりの横から聞こえてくる男性の声。ふたりがそちらを向くと、スーツ姿の男性が、ゆっくりと2人の方へと歩いてくる。彼は、2人をこちらの世界に戻した松本だった。
「松本さん!」
「覚えていてくれて嬉しいです。早速ですが、調査のために来ましたので、いくつか質問をさせていただいてもよろしいですか?」
松本はジャケットの内ポケットからメモ帳を取り出しながらふたりに歩み寄る。千鶴はそんな松本に向き合った。
「松本さん、聞いてください。私たちを元の世界に戻してほしいんです!」
「…なんですって?」
「私たちがこっちに来たせいで、向こうの世界の悪魔たちがこっちの世界に来てしまってるんです!ですから、私たちを元の世界に…」
懸命に説明する千鶴の頬を、突然松本は殴り抜く。千鶴が地面に倒れると、松本は千鶴を見下ろした。
「『元の世界』ぃ?こっちが元の世界でしょう。戻してやったのは私たちです。それに感謝もしないで『帰りたい』?ふざけるなよ小娘?」
「ま、待ってくだ…あぐぅっ!!」
松本は倒れた千鶴の腹に蹴りを叩き込む。千鶴の体が大きく跳ね上がるのを見て、晴夏は千鶴を助けようとしたが、同時に、晴夏の目には松本の顔が悪魔に変わっているのが見えた。
(…!)
「反省しろ!小娘!反省しろ!反省しろ!!」
松本は怒鳴りながら千鶴を踏みつけていく。目の前で千鶴が蹂躙される姿と、蹂躙する悪魔の姿。晴夏はそこから一瞬目を逸らしたが、恐怖を振り切って動き始めた。
「やめろっ!!」
次の瞬間、晴夏は松本の体に、タックルを叩き込む。千鶴を踏みつけようとしていた松本は、晴夏にタックルされてその場に倒れ込んだ。
「がぁっ!こんの…!」
「逃げるぞ、千鶴!」
晴夏は倒れた千鶴を立ち上がらせ、松本から逃げるように、千鶴の手を引いて走っていく。松本は内ポケットからスマホを取り出すと、どこかへと連絡し始めた。
「逃げられると思うなよ…『星霊隊』!」
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