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用意してもらった食事はとてもおいしかった。さすが日本が作った世界、口にあう。そしてお酒もとても美味しい。発砲ワインと言っていた。シャンパンだシャンパン。デキャンタには赤ワインにフルーツやスパイスがたくさん入っていた。サングリアだ。わーいやったー
「ミズキはお酒、好きなんですね」
「ザルってわけじゃないけど好きだよ。仕事でも飲んでたけど、こうやって誰かと楽しく食事しながら飲むのが一番好き」
ワイングラスを傾けながらナッツやチーズ、ドライフルーツなどをつまむ。おつまみの概念も一緒でよかった。欲を言えばピーナッツではなく柿のほうとビールがよかったが。ビールは常温らしい。エール?ラガーのほうは高級品らしい。あたしが缶で冷やして飲んでたのはラガーか。コンビニで買えたと言えば彼らはコンビニのほうに興味津々であった。
飲みながらノアとジョエルとは国のことや家族構成や誕生日、年齢(ジョエルは26だって!)仕事のことなんかを話をした。
この国は森と海に囲まれてるらしい。国境が他国と接していないので国同士のいざこざはないらしいが、魔物がでるので魔物退治があるらしい
ノアは魔術師団だから魔物を倒したりするらしい。やばい、マジでゲームじゃん。でもノアは魔力が国一番だからあまり遠征にはいかないらしい。ノア一人に任せるなよとアルフォンソマンゴーに言ってやりたい。
「マンゴーではありませんよ」
とジョエルに注意された。たぶん王家の人に言ってしまいそうだから注意してくれたんだろう。確かに陛下にマンゴー野郎って言ってしまいそうではある。
ジョエルはお父様が宰相(王様の右腕!)だからその補佐をしているらしい。「面倒事と雑用をやらされてるだけですよ」と言っていたけど「国や城のことなら誰よりも把握してるつもりです」と頼もしかった。それにはノアも関わってるらしいけどノアは空笑いして多くを語らなかった。これは聞かないほうがいいってことだな
楽しく話をしていたら扉がノックされた。
『執事長、騎士団長より異世界の花嫁様にお仕えするよう申されて参りました。侍従並びに近衛兵ですが御挨拶宜しいでしょうか』
え?インターホンもないのに用件先に言うの?
「まぁ、予想はしていましたよ。厄介ですね」
ジョエルが面倒だと言わんばかりに重い腰をあげて扉へ向かう。
あちらから開けてくることはないのかと問えば「ミズキのような方がいらっしゃるのにいきなり開ける無礼な者はジョエル様に処分されてしまいますよ」とノアは笑っていた。そうか、ノックしたからってこっちからあけちゃいけないのか。でもこの距離でも聞こえるってめっちゃ大声じゃん。すごっ。
***
「みごとに御子息達の息のかかった者ばかりですこと」
「…陛下ならびに宰相様にも許可はいただいております」
「どうせこちらを把握しておくためでしょう?わかりきっていますよ。あわよくば息子も夫の一人にと執事長も騎士団長も考えていることくらいわかりきっているのですから」
ロランとミシェルの腹心の部下を送ってきたことで親達の本気度も窺える。自らの腹心を送ろうにも要職に就いているし、息子達の評価をあげるためには些か心許ない。しかし息子の腹心であればミズキと歳もさほど離れてもいないし息子達を下げるような発言をすることもない。予定も把握しているので城内で遭遇することも御安い。
「私とノアールで凡て事足りるのですが」
「しかし卿もノアールもいつもお側におられるわけではないのですから私達が」
もう1つあった、こいつらはノアールよりも爵位は上だ。ノアールが強く出れないことも見越している。不愉快な人選だ。
「であれば侍従も近衛も1人ずつで結構です。ただし私とノアールがいる時は近づくことも室内に立ち入ることも禁じます。扉や壁、窓にはノアールに防音の魔法もかけてもらいますし、あなたたちが彼らに報告できるようなことはなにもありませんから無駄だと思いますが」
鼻で笑ってやれば近衛は不快さを顕にしている。こいつはもう少し表情をコントロールしなければ使い物にならない。その点侍従はさすがだ。警戒するのはこいつだ。
「流石の私達でも休憩もなくでは無理です。せめて交代、もしくは3交代をお願いしたく3人ずつで来ております。せめて異世界の花嫁様に御挨拶だけでも」
「だからいらないと。私とノアールで事足りる。それとなにか?執事長と騎士団長は私とノアールでは異世界の花嫁をまもるに足らぬと思っていると、そう捉えても?」
後ろをふりかえればミズキとノアールはまた見つめあったりつまみも食べさせあったり、キスを繰り返したり…この厄介なめ男を言いくるめるのに苦労してる私のことも少しは見てほしいしノアールと代わりたい
「私もここまで時間をとられると思いませんでしたよ。正直これから初夜だと思い侍従達にあなた達の用意したふざけた部屋の片付けや用意をさせているのですが、このような邪魔が入るとは…どうしてくれましょうかね?」
「ですから私達が」
「そもそも頼んでもいませんし夫婦の時間を邪魔されてこちらとしては癪に障るんですよ」
ノアールに念話を使って『片付けてきます。初夜はあなたが』と。我が家の侍従達にはバスルームに湯を張って退出するように伝えた。タオルと夜着、ヘアオイルなど恐らく用意し忘れたものはないはずだ。あれば伝えろとノアールにも伝えた。
「私が直接話をしに行きます。折角の初夜、誰が償ってくださるのでしょうね」
一度扉を閉めてミズキの元へ戻る
「ミズキ、私は少し話をしてこなければなりません。いつ戻れるかもわからないのでノアールと一緒に過ごしてください。足りないものがあれば都度ノアールに伝えてください。用意もさせますしノアールが作り出すこともできますから…」
「えー?ジョエルどっかいっちゃうのー?3人でお酒飲んで話しながらオールしたかったのにー」
ノアールのついでとしか私を見てないと思っていた彼女が私も人数に含めていてくれたことに胸が躍った。
「じゃあ玄関?までおくってあげる。ノア、待っててね!ナッツのはちみつ漬け全部食べちゃダメだよ」
はいていた高いヒールを脱いでなぜか裸足の彼女は先程より背が低かった。150くらいだろうか?ほぼ出ている脚とヒールで高く思えたがかわいらしい身長であった。ほんの数十歩の距離だが腕を絡められ豊かな
胸が腕に押し付けられている。
「なにしにいくのー?」
「私とノアールでは力不足だと思っておられる方々に抗議を」
「えー?新婚?なのに、ねー。あははっ」
ミズキはお酒が弱いわけではないけれど警戒心はなくなるということはわかった。豊満な胸が腕に押し付けられてるだけでも正直キツいのにかわいい笑顔まで見せられたら抗議に行くことすら放棄したくなる。しかし行かなければ犬たちに監視され逐一報告される。そんなことは御免被りたい。
「やばい、6人もいるじゃんウケる」
「異世界の花「ではいってきますよ」
「じゃあいってらっしゃいのちゅーね」
腕から離れ首に腕をまわされキスをせがまれる。身長は30センチは差があろうと思われるのでミズキの背伸びでは届かない。そこがまた愛おしく思えるので邪魔者達の前だということを忘れキスを交わす。舌までいれてしまえば絶対に部屋から出たくなくなるのでギリギリ保っている理性をフル稼働させて自分を抑える。腰回りの衣服に覆われていない素肌の部分に触れれば彼女の体がぴくりと反応する。あー行きたくない。このまま一緒に寝室へ行きすべてを暴いてしまいたい。しかし自分が行かなければ監視され続けることになるので仕方ない
「朝までには必ず戻ります。かわいいノアールは今だけですよ」
「ん?」
19歳の男性をただただかわいい子と思っているミズキには悪いが本当のことはまだ言わないでおく。おそらく今のノアールはそこまで考えが及んでいない。誰よりも先に異世界の花嫁から伴侶として選ばれ幸せの絶頂の彼が、自分が魔力を使いきって少年期の姿でいる状態であることを失念しているはずだ。ただミズキが年上だからかわいいかわいいと言っているだけだと…朝が楽しみではある。
扉を閉めてそれぞれがどこへいるかを問えば全員先程のホールからは移動していないということである。皆多忙なはずであるのに残って話し合いをいしていたとでも?
苛立ちを隠しもせずホールへ戻れば、どうして自分を選ばないのかとまだ殿下は怒りをあらわにしている。
「ならなぜ荷物を勝手に?彼女はそこに怒っていましたよ」
「名も名乗らぬのが悪いのではないか。そのような者が何を持っているのかを検分する必要があったまでだ」
「鍵がかかっていたのに壊されていたと大変お怒りでしたよ。鍵までかかっている女性の荷物を破壊してまで開けるのはいくら殿下であろうとあまりにも行き過ぎた行為だと思いますが」
名も名乗らぬのが悪いということは名乗ってほしかったということだ。殿下どころかミズキは陛下にすら名乗っていない。ミズキと呼んだところは聞いたかもしれないが、自ら名乗っていない女性の名を呼ぶことはない。ましてや家名があるわけでもないのだから。
「詫びる前に殴ったのだぞあの女は!」
「ですから異世界の花嫁であり彼女は女性です。女性の鍵までかけてある荷物を破壊し、あまつさえ中身を出して並べていたなど…犯罪者ではないのですよ。ましてや下着など。彼女が怒るのも当たり前です」
「下着?ただの布、いや紐だった」
「彼女の世界ではそのような物なのでしょう」
あのように面積も小さく薄い衣服であるのに表面的には見えない下着であれば、小さかったり細いのは想像に容易い。
「そもそも殿下はヒナ嬢と関係をもたれていたのですから異世界の下着などわかるものではないのですか?」
「ヒナのものとは形が違っていたからわからなかった…」
明日以降もミズキに聞きたいことは山のようにあるが下着の件も必ず聞こうと今決めた。今頃ノアールとミズキは寝室だろうか…早く終わらせたい
「名乗らなかった件に関しては陛下の御予定に合わせて後日機会を作らせていただきます。しかし殿下へ直接は彼女が拒否すると思いますので陛下への御挨拶の際に御一緒に」
「私のための花嫁であるのにか!?」
「ですから彼女は殿下をお選びになりませんでした。それもこれも殿下達のせいです。ここに戻って来るまでは彼女は打ち解けなければならないことを理解してくれていました。しかし戻ってみれば荷物を漁られていたとなれば、彼女が怒るのも仕方ないかと」
ミズキからしてみれば元いた世界から持ってきた荷物なのだから大切なものに決まっている。そういえばなぜあのように大荷物だったのだろうか?
「こやつらのことはもういい。本人達が本気であれば彼女にたいして何らかの方法で自分達を売り込んでいくだろう。できなければそれまでだ」
いつ用意させたのかわからないが陛下はワインを飲んでいる。よくこんな中で飲酒できるなと思いながらも横にいる自分の父も飲んでいるから何も言えない。斯く言う私も先程まで3人で飲んでいたのだから
「本題を忘れるところでしたよ。侍従と近衛はいりません。そもそも私とノアールがいれば必要ないと思いますが」
「私もいらないと言ったんですがねー、そこのお二人が必要だと」
父は陛下とグラスを傾けながらも自分はちゃんと反対したぞとアピールしてくる。父が賛成するとは私も思っていない。陛下も然りだ。笑っている場合ではない。
「彼女に不自由があってはならないと」
「私とノアールでは不自由をさせますか?国一番の魔術師と私では足りないと?そちらの用意した侍従3人あわせるよりもノアールのほうがよほど彼女を不自由させませんよ」
家政魔術など魔術師団で寮生活をしていたノアールには造作も無いことだ。私もできなくはないし我が家の侍従もいる。現に今日の部屋は無駄に初夜仕様になっていたのを我が家の侍従が直してくれた。
「細かい気配りなどは魔術師殿や卿よりこちらの者達が」
「ですからいらないと。あなたはその侍従から自分の息子のことを聞かせ伴侶の一人として選ばせるために彼女に侍従をつけると申したのでしょう?騎士団長も。護衛であればなおのこと我ら2人で足りないことなどないと陛下もわかっておいででしたよね?」
「まぁな。面白いから許可は出してみたが、お前がすぐ抗議にくるとは思わなかったぞ。てっきり初夜に浮かれていると思ったが。なんせ花嫁はあのような体躯。すべての男が見惚れるといっても過言ではない」
陛下と父はまたも大笑いをしている。
「しかしジョエル、お前は選ばれたからそのようなことが言えるが元はといえば殿下を含めた3人の、国内では迎え入れてくれる家もない者のために禁忌をおかしてでも呼んだ花嫁だ。そこはお前も理解しているではないか」
「それは…」
理解はしている。しかし今受け入れられるかと問われれば答えは否。ノアールが術を使って呼んだのだから殿下と愛し合える人間であることも理解している。しかし彼女はノアールの術を使ったにも関わらず私とノアールを選んだ。魔術をも超える運命があったと信じたいがミズキはそこまで感じていないだろうというのも理解したくはないがわかっているつもりだ。
「お前とノアールがいれば不安がないのも理解している。しかし少しはこの者たちの気持ちもわかってやってくれ」
陛下に言われてしまえばこちらが折れないわけにはいかなかった。
「では室内に一切の立ち入りを禁じるとお約束いただけるのでしたら移動中だけは侍従と近衛兵をつけてもいいでしょう。ただし侍従、近衛らしくそちらから彼女に話しかけることは絶対にしないでいただきたい」
我ながら狭量な男だとは思うが、遂に見つけた伴侶を目一杯愛したいというのはこの国の男なら持って然るべき感情である。自分かノアールは必ず一緒にいられるようにするし、なにより魔術があればどうにでもなる。離れているときでも居場所は常にわかっておきたいし、なにかあれば一瞬で駆け付けられるようなものをノアールに用意してもらうしかない。彼女に似合うアクセサリーに魔力を込めてもらって同じものを私達も身に付けていればいい。
「では明日、彼女と研究所の方に行きます。古代文字研究の方々に会わせたいので。私は仕事を持って部屋に戻りますのでなにかあれば。では」
頭を下げて下がろうとすれば殿下が小さな声で引き留めてきた。
「毎日、一目でいい…彼女に会いたい。いや、こちらが一方的に見るだけでもいい…」
どちらかと言わなくても傲慢な殿下が自分にこのように願い出てくるとは思わなかった。はっきり言わなくても彼女のことを気になっている以上の感情を抱いてしまっていることは明らかだ。全く面白くない
「閣下にはノアールと話をしてから返事をさせていただきます。彼女にはもちろん知らせません」
「わかっている…嫌われたくはないんだ」
本当に面白くない。無駄に革靴を音を立てながら歩くくらいしか苛立ちを表せないのもまた面白くない。
とりあえず執務室から部屋で片付けられる仕事を持ってミズキとノアのいる部屋へ帰ることにする。
寝室は真っ最中だろうからサロンの奥の執務室で仮眠と仕事を片付ける。
「ミズキはお酒、好きなんですね」
「ザルってわけじゃないけど好きだよ。仕事でも飲んでたけど、こうやって誰かと楽しく食事しながら飲むのが一番好き」
ワイングラスを傾けながらナッツやチーズ、ドライフルーツなどをつまむ。おつまみの概念も一緒でよかった。欲を言えばピーナッツではなく柿のほうとビールがよかったが。ビールは常温らしい。エール?ラガーのほうは高級品らしい。あたしが缶で冷やして飲んでたのはラガーか。コンビニで買えたと言えば彼らはコンビニのほうに興味津々であった。
飲みながらノアとジョエルとは国のことや家族構成や誕生日、年齢(ジョエルは26だって!)仕事のことなんかを話をした。
この国は森と海に囲まれてるらしい。国境が他国と接していないので国同士のいざこざはないらしいが、魔物がでるので魔物退治があるらしい
ノアは魔術師団だから魔物を倒したりするらしい。やばい、マジでゲームじゃん。でもノアは魔力が国一番だからあまり遠征にはいかないらしい。ノア一人に任せるなよとアルフォンソマンゴーに言ってやりたい。
「マンゴーではありませんよ」
とジョエルに注意された。たぶん王家の人に言ってしまいそうだから注意してくれたんだろう。確かに陛下にマンゴー野郎って言ってしまいそうではある。
ジョエルはお父様が宰相(王様の右腕!)だからその補佐をしているらしい。「面倒事と雑用をやらされてるだけですよ」と言っていたけど「国や城のことなら誰よりも把握してるつもりです」と頼もしかった。それにはノアも関わってるらしいけどノアは空笑いして多くを語らなかった。これは聞かないほうがいいってことだな
楽しく話をしていたら扉がノックされた。
『執事長、騎士団長より異世界の花嫁様にお仕えするよう申されて参りました。侍従並びに近衛兵ですが御挨拶宜しいでしょうか』
え?インターホンもないのに用件先に言うの?
「まぁ、予想はしていましたよ。厄介ですね」
ジョエルが面倒だと言わんばかりに重い腰をあげて扉へ向かう。
あちらから開けてくることはないのかと問えば「ミズキのような方がいらっしゃるのにいきなり開ける無礼な者はジョエル様に処分されてしまいますよ」とノアは笑っていた。そうか、ノックしたからってこっちからあけちゃいけないのか。でもこの距離でも聞こえるってめっちゃ大声じゃん。すごっ。
***
「みごとに御子息達の息のかかった者ばかりですこと」
「…陛下ならびに宰相様にも許可はいただいております」
「どうせこちらを把握しておくためでしょう?わかりきっていますよ。あわよくば息子も夫の一人にと執事長も騎士団長も考えていることくらいわかりきっているのですから」
ロランとミシェルの腹心の部下を送ってきたことで親達の本気度も窺える。自らの腹心を送ろうにも要職に就いているし、息子達の評価をあげるためには些か心許ない。しかし息子の腹心であればミズキと歳もさほど離れてもいないし息子達を下げるような発言をすることもない。予定も把握しているので城内で遭遇することも御安い。
「私とノアールで凡て事足りるのですが」
「しかし卿もノアールもいつもお側におられるわけではないのですから私達が」
もう1つあった、こいつらはノアールよりも爵位は上だ。ノアールが強く出れないことも見越している。不愉快な人選だ。
「であれば侍従も近衛も1人ずつで結構です。ただし私とノアールがいる時は近づくことも室内に立ち入ることも禁じます。扉や壁、窓にはノアールに防音の魔法もかけてもらいますし、あなたたちが彼らに報告できるようなことはなにもありませんから無駄だと思いますが」
鼻で笑ってやれば近衛は不快さを顕にしている。こいつはもう少し表情をコントロールしなければ使い物にならない。その点侍従はさすがだ。警戒するのはこいつだ。
「流石の私達でも休憩もなくでは無理です。せめて交代、もしくは3交代をお願いしたく3人ずつで来ております。せめて異世界の花嫁様に御挨拶だけでも」
「だからいらないと。私とノアールで事足りる。それとなにか?執事長と騎士団長は私とノアールでは異世界の花嫁をまもるに足らぬと思っていると、そう捉えても?」
後ろをふりかえればミズキとノアールはまた見つめあったりつまみも食べさせあったり、キスを繰り返したり…この厄介なめ男を言いくるめるのに苦労してる私のことも少しは見てほしいしノアールと代わりたい
「私もここまで時間をとられると思いませんでしたよ。正直これから初夜だと思い侍従達にあなた達の用意したふざけた部屋の片付けや用意をさせているのですが、このような邪魔が入るとは…どうしてくれましょうかね?」
「ですから私達が」
「そもそも頼んでもいませんし夫婦の時間を邪魔されてこちらとしては癪に障るんですよ」
ノアールに念話を使って『片付けてきます。初夜はあなたが』と。我が家の侍従達にはバスルームに湯を張って退出するように伝えた。タオルと夜着、ヘアオイルなど恐らく用意し忘れたものはないはずだ。あれば伝えろとノアールにも伝えた。
「私が直接話をしに行きます。折角の初夜、誰が償ってくださるのでしょうね」
一度扉を閉めてミズキの元へ戻る
「ミズキ、私は少し話をしてこなければなりません。いつ戻れるかもわからないのでノアールと一緒に過ごしてください。足りないものがあれば都度ノアールに伝えてください。用意もさせますしノアールが作り出すこともできますから…」
「えー?ジョエルどっかいっちゃうのー?3人でお酒飲んで話しながらオールしたかったのにー」
ノアールのついでとしか私を見てないと思っていた彼女が私も人数に含めていてくれたことに胸が躍った。
「じゃあ玄関?までおくってあげる。ノア、待っててね!ナッツのはちみつ漬け全部食べちゃダメだよ」
はいていた高いヒールを脱いでなぜか裸足の彼女は先程より背が低かった。150くらいだろうか?ほぼ出ている脚とヒールで高く思えたがかわいらしい身長であった。ほんの数十歩の距離だが腕を絡められ豊かな
胸が腕に押し付けられている。
「なにしにいくのー?」
「私とノアールでは力不足だと思っておられる方々に抗議を」
「えー?新婚?なのに、ねー。あははっ」
ミズキはお酒が弱いわけではないけれど警戒心はなくなるということはわかった。豊満な胸が腕に押し付けられてるだけでも正直キツいのにかわいい笑顔まで見せられたら抗議に行くことすら放棄したくなる。しかし行かなければ犬たちに監視され逐一報告される。そんなことは御免被りたい。
「やばい、6人もいるじゃんウケる」
「異世界の花「ではいってきますよ」
「じゃあいってらっしゃいのちゅーね」
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「朝までには必ず戻ります。かわいいノアールは今だけですよ」
「ん?」
19歳の男性をただただかわいい子と思っているミズキには悪いが本当のことはまだ言わないでおく。おそらく今のノアールはそこまで考えが及んでいない。誰よりも先に異世界の花嫁から伴侶として選ばれ幸せの絶頂の彼が、自分が魔力を使いきって少年期の姿でいる状態であることを失念しているはずだ。ただミズキが年上だからかわいいかわいいと言っているだけだと…朝が楽しみではある。
扉を閉めてそれぞれがどこへいるかを問えば全員先程のホールからは移動していないということである。皆多忙なはずであるのに残って話し合いをいしていたとでも?
苛立ちを隠しもせずホールへ戻れば、どうして自分を選ばないのかとまだ殿下は怒りをあらわにしている。
「ならなぜ荷物を勝手に?彼女はそこに怒っていましたよ」
「名も名乗らぬのが悪いのではないか。そのような者が何を持っているのかを検分する必要があったまでだ」
「鍵がかかっていたのに壊されていたと大変お怒りでしたよ。鍵までかかっている女性の荷物を破壊してまで開けるのはいくら殿下であろうとあまりにも行き過ぎた行為だと思いますが」
名も名乗らぬのが悪いということは名乗ってほしかったということだ。殿下どころかミズキは陛下にすら名乗っていない。ミズキと呼んだところは聞いたかもしれないが、自ら名乗っていない女性の名を呼ぶことはない。ましてや家名があるわけでもないのだから。
「詫びる前に殴ったのだぞあの女は!」
「ですから異世界の花嫁であり彼女は女性です。女性の鍵までかけてある荷物を破壊し、あまつさえ中身を出して並べていたなど…犯罪者ではないのですよ。ましてや下着など。彼女が怒るのも当たり前です」
「下着?ただの布、いや紐だった」
「彼女の世界ではそのような物なのでしょう」
あのように面積も小さく薄い衣服であるのに表面的には見えない下着であれば、小さかったり細いのは想像に容易い。
「そもそも殿下はヒナ嬢と関係をもたれていたのですから異世界の下着などわかるものではないのですか?」
「ヒナのものとは形が違っていたからわからなかった…」
明日以降もミズキに聞きたいことは山のようにあるが下着の件も必ず聞こうと今決めた。今頃ノアールとミズキは寝室だろうか…早く終わらせたい
「名乗らなかった件に関しては陛下の御予定に合わせて後日機会を作らせていただきます。しかし殿下へ直接は彼女が拒否すると思いますので陛下への御挨拶の際に御一緒に」
「私のための花嫁であるのにか!?」
「ですから彼女は殿下をお選びになりませんでした。それもこれも殿下達のせいです。ここに戻って来るまでは彼女は打ち解けなければならないことを理解してくれていました。しかし戻ってみれば荷物を漁られていたとなれば、彼女が怒るのも仕方ないかと」
ミズキからしてみれば元いた世界から持ってきた荷物なのだから大切なものに決まっている。そういえばなぜあのように大荷物だったのだろうか?
「こやつらのことはもういい。本人達が本気であれば彼女にたいして何らかの方法で自分達を売り込んでいくだろう。できなければそれまでだ」
いつ用意させたのかわからないが陛下はワインを飲んでいる。よくこんな中で飲酒できるなと思いながらも横にいる自分の父も飲んでいるから何も言えない。斯く言う私も先程まで3人で飲んでいたのだから
「本題を忘れるところでしたよ。侍従と近衛はいりません。そもそも私とノアールがいれば必要ないと思いますが」
「私もいらないと言ったんですがねー、そこのお二人が必要だと」
父は陛下とグラスを傾けながらも自分はちゃんと反対したぞとアピールしてくる。父が賛成するとは私も思っていない。陛下も然りだ。笑っている場合ではない。
「彼女に不自由があってはならないと」
「私とノアールでは不自由をさせますか?国一番の魔術師と私では足りないと?そちらの用意した侍従3人あわせるよりもノアールのほうがよほど彼女を不自由させませんよ」
家政魔術など魔術師団で寮生活をしていたノアールには造作も無いことだ。私もできなくはないし我が家の侍従もいる。現に今日の部屋は無駄に初夜仕様になっていたのを我が家の侍従が直してくれた。
「細かい気配りなどは魔術師殿や卿よりこちらの者達が」
「ですからいらないと。あなたはその侍従から自分の息子のことを聞かせ伴侶の一人として選ばせるために彼女に侍従をつけると申したのでしょう?騎士団長も。護衛であればなおのこと我ら2人で足りないことなどないと陛下もわかっておいででしたよね?」
「まぁな。面白いから許可は出してみたが、お前がすぐ抗議にくるとは思わなかったぞ。てっきり初夜に浮かれていると思ったが。なんせ花嫁はあのような体躯。すべての男が見惚れるといっても過言ではない」
陛下と父はまたも大笑いをしている。
「しかしジョエル、お前は選ばれたからそのようなことが言えるが元はといえば殿下を含めた3人の、国内では迎え入れてくれる家もない者のために禁忌をおかしてでも呼んだ花嫁だ。そこはお前も理解しているではないか」
「それは…」
理解はしている。しかし今受け入れられるかと問われれば答えは否。ノアールが術を使って呼んだのだから殿下と愛し合える人間であることも理解している。しかし彼女はノアールの術を使ったにも関わらず私とノアールを選んだ。魔術をも超える運命があったと信じたいがミズキはそこまで感じていないだろうというのも理解したくはないがわかっているつもりだ。
「お前とノアールがいれば不安がないのも理解している。しかし少しはこの者たちの気持ちもわかってやってくれ」
陛下に言われてしまえばこちらが折れないわけにはいかなかった。
「では室内に一切の立ち入りを禁じるとお約束いただけるのでしたら移動中だけは侍従と近衛兵をつけてもいいでしょう。ただし侍従、近衛らしくそちらから彼女に話しかけることは絶対にしないでいただきたい」
我ながら狭量な男だとは思うが、遂に見つけた伴侶を目一杯愛したいというのはこの国の男なら持って然るべき感情である。自分かノアールは必ず一緒にいられるようにするし、なにより魔術があればどうにでもなる。離れているときでも居場所は常にわかっておきたいし、なにかあれば一瞬で駆け付けられるようなものをノアールに用意してもらうしかない。彼女に似合うアクセサリーに魔力を込めてもらって同じものを私達も身に付けていればいい。
「では明日、彼女と研究所の方に行きます。古代文字研究の方々に会わせたいので。私は仕事を持って部屋に戻りますのでなにかあれば。では」
頭を下げて下がろうとすれば殿下が小さな声で引き留めてきた。
「毎日、一目でいい…彼女に会いたい。いや、こちらが一方的に見るだけでもいい…」
どちらかと言わなくても傲慢な殿下が自分にこのように願い出てくるとは思わなかった。はっきり言わなくても彼女のことを気になっている以上の感情を抱いてしまっていることは明らかだ。全く面白くない
「閣下にはノアールと話をしてから返事をさせていただきます。彼女にはもちろん知らせません」
「わかっている…嫌われたくはないんだ」
本当に面白くない。無駄に革靴を音を立てながら歩くくらいしか苛立ちを表せないのもまた面白くない。
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