単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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第53話 咲子の我が儘 その2

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 俺は咲子と海を見に行くために、俺は車を走らせている。咲子を隣に乗せての、初めての長距離ドライブで有る。

 今から見に行く海は、俺が若い時にちょくちょく見に行った海なので、頭の中で完全に地図が出来上がっている。
 その海を初めて見に行った時は、まだ高速道路も殆ど整備されておらず、国道を延々と走って見に行ったが、近年では高速道路も延伸されて、更にバイパス(新直轄しんちょっかつ道路)も整備されて格段と便利に成ったらしい。

 最寄りの高速道路のICから高速道路に入り、どうせなら旅の道中でも楽しんで貰おうと思い、案内標識が出てきたPAに寄って行く。
 日曜日の15時前のPA。人はそこそこ多いが、そこまで混雑している感じは無い。

「何か、デート気分だね!」

 車から降りた早々そんな事を言う咲子。
 まったく……

「あっ…、何か美味しそうな匂いがする!」
「あっ、あそこか!!」

 咲子が指さす方向を見ると常設タイプの出店が有って、匂いの感じからして、肉を焼いている良い匂いがする。

「ねぇ、お父さん!」
「あの、お店行こ!!」

 咲子の中では完全に遊びに行く状態で有った。まぁ、間違っては無いが……
 出店で咲子は、牛の串焼きとソフトクリームを買って、近くに有ったベンチに座って美味しそうに食べている。
 俺は自販機で缶コーヒーを買って、その姿を眺めながら缶コーヒーを飲んでいる。

(よく、食べる子だ…)

 俺がその姿を見ていると、咲子が声を掛けてくる。

「お父さんも何か食べれば良いのに!」

 咲子はそう言いながら、牛の串焼きの肉部分を歯で押さえながら串を引き抜いている。

「父さんは、まだそんなにお腹が空いていないから」

「そう?」
「美味しいのに!」

(全く……。女の子らしく無い食べ方だな)
(親としても、見ていて少し恥ずかしいよ///)

 当然そんな食べ方をしているから、咲子の口まわりはタレでベトベトで有る。
 咲子はそれを舌を出して、口周りをペロペロ舐めている。

(うぁ~~、咲子……。女の子だから少しは上品に食べなさい!)

 まだ、自宅なら良いが、外でその様な食べ方はあまり良いとは言えない。
 しかし、咲子は何も気にせずにソフトクリームを舐めていた。

(普段からこんな食べ方しているのかな?)
(でも、映画を見に行った時に、ラーメンやホットスナックを食べていたが、普通に食べていたし、串焼きだから仕方ないのかな?)

 食べ終わった咲子は自販機でジュースを買って、俺と咲子は車に戻る。
 PAを出てドライブの再開で有る。
 初めの内は、高速道路から見える景色を楽しんでいた咲子だが、飽きて来たのだろう、話し掛けてくる。

「お父さんは、ドライブ好きなの?」

「まぁ、好きと言えば好きかな…」

 運転中のため、半分生返事状態だ。

「そうなんだ!」
「でも、家族ではドライブ旅行はあまり行かないね?」

「宮子が嫌がるからな。電車が良いって…」

「お姉ちゃん、そんな事言っているんだ!?」
「知らなかったよ……」

「車もミニバンでは無く普通のタイプの車だからな。車検証では5人まで乗れるが、実際5人乗ると狭いからな」
「2~3人なら今乗っている車でも良いけど、みんな成長してきたからこの車では厳しいな…」

「ねぇ、そのミニバンって言う車は家では買わないの?」

「まぁ、咲子。見ての通りさ……」

「?」

「我が家のお母様が必要無いって言ってね」
「俺がメインに使っている車と、母さんがメインに使っている車。2台が家に有るからね。維持費も馬鹿に成らないのだよ」

「俺もミニバンを母さんに提案した事が有るのだけど『そんなでかい車、私は運転したくないし、余計なお金が掛かるからダメ』と言われてね…」

「へぇ~、そうなんだ」
「まぁ、小さい車の方が『狭い道に間違って入っても便利!』とお母さん言っていたし」

「まあ、そんな所だよ……うん」

 ミニバンを母さんに提案した事は事実だが、宮子がとにかく、俺との関わり合いを望まなかった。
 ドライブ旅行で宮子との距離を縮めようと、目論んだ時期も有ったが、宮子はそれを全て拒否した。

 元々、俺の職場は長期休暇が取りにくい職場なので、家族全員で泊まり旅行など本当に数える回数しか無いし、それも旅行時間節約のために、新幹線が中心となってしまう。
 新幹線で1時間に行ける場所を車で行こうとすると、高速道路を使っても2時間以上掛かるし、途中、事故渋滞等に巻き込まれたら、もっと時間が掛かってしまう。

 近場の日帰りドライブ旅行も、宮子は友達と約束したとか上手に理由を作って、参加は殆どしなかった。

 焼肉屋に宮子が来る理由は、宮子も焼肉が好きな理由も有るだろうが、母さんもそれなりに考えていて『来なくても晩ご飯は用意しない。その分のお小遣いも出さない!』と、半ば強制参加の状況を作っていると母さんから教えて貰った。

 最近の宮子は、大人に成った部分も有るかも知れないが、あの時のような極端な拒絶は治まりつつ有る。

 咲子と雑談をしつつ俺は車を走らせて、SAやPAに立ち寄りながら目的地の海に向かって車を走らせる。
 咲子はSAやPAに立ち寄る度に歓声を上げて、必ず1品以上は何かを買って食べていた。
 最後の方では、流石に咲子のお腹の事を考えて、買い食いは中止させたが、咲子は少々ご不満顔だった……

 ……

 高速道路を乗り継いで、バイパスを駆け抜けて車を走らせたが寄り道をしすぎたので、予定より大分遅くなってしまったが、17時40分。無事に目的地の海に到着する。
 駐車場に車を止めて、近くに有った自販機で飲料水や缶コーヒーを買って、歩道橋を越えて俺と咲子は海岸に近づく……

「わぁ~、綺麗な海ね!」
「それにもう、夕方だね!」

 きらめく海と、赤く染まり掛けた空を見上げながら言う咲子。

「でも……お日様はいないね」
「どこだろ…?」

「ここは、海が東側に成るからな。この海岸では見られないよ…」

「どうせなら、お日様が沈む海の方が良かったな…」

「俺もシチュエーション的にはそっちが好きだが、近場の海は海水浴場に設定されているし、咲子が望むような海はあの時間から出発しては、着くのに夜になってしまうからな…」

「まぁ、その辺は仕方ないか。うん…」

 海岸沿い歩きながら適当な綺麗そうな場所を見つけて、俺と咲子は海岸の階段に腰を下ろす。
 俺は缶コーヒー。咲子にはコーラの缶を手渡す。俺は缶コーヒーのプルタブを開けて飲もうとすると……

「お父さん……お疲れ!」

「あっ、ああ…」

 咲子はコーラの缶を、俺の缶コーヒーの缶に近づけて、乾杯を求めてきた。
 缶を『カン!』と鳴らしてお互いが飲む。

(咲子のさっきの仕草。母さんと瓜二つだったな…)
(母さんが咲子位の年齢だった時は、こんな感じだったのかな)

 俺はそんな事を思いながら、咲子と夕方の海を眺めて居る。
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