単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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第52話 咲子の我が儘 その1

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「一応聞くけど、どんな我が儘なんだい?」

「お父さん……。明日も休みなんだよね?」

「まあ、そうだけど……なんだ? どこか行きたい場所でも有るのか?」
「それなら、そう言ってくれれば良いのに!」

 俺は先週の日曜日を思い出す。
 その日は咲子とテレビゲームを楽しんだ日だが、夕方の時間に成って咲子から『流石にこの時間からは……お父さんが良いなら言うけど?』の言葉を思い出す。
 あの後、母さんと真央が急に来る事に成って、その事は記憶の片隅に追いやられていたが、その辺の事なんだろうか?

「……」

 しかし、咲子は何も言わずに黙っている。
 言いにくい事なんだろうか?

「咲子……。話してくれないと聞きようが無いぞ」

 すると咲子は、静かにボソッと言う。

「……海が見たい」

「海!?」
「どこの…?」

「綺麗な海……。出来れば、人も少なそうな場所が良い」

「綺麗な海に、人が少ない場所…」
「夏の時期に綺麗な海。更に人が少ない場所なんて近場には無いぞ!?」

「だから言っているの。お父さん……」

 俺は改札の上部に有る時計を見る。時刻は14時前だった。
 咲子がリクエストしている、綺麗な海と人が少ない場所は無い事は無いが、秋頃の時期ならまだしもこの時期と成ると、遊泳禁止の海しか選択肢が無い。

 俺は頭の中で地図を思い浮かべて、海が綺麗な場所と人が少ない場所を考え始めるが、車で直ぐに行けて、咲子の条件に当てはまる場所は中々出てこない。

「咲子。一応聞くが、何で海が見たいんだ?」
「今の時代、わざわざ見に行かなくても、スマートフォンで幾らでも綺麗な海景色が見られるでは無いか」

「お父さんと一緒に海を見たいから、……それではダメ?」
「それに、スマートフォンの画面で海なんか見ても、私の我が儘は解決しないよ…」

「駄目な事は無いが、この地域の海は工業地帯だから綺麗な海なんて無いんだよ!」
「遠くに行けば有るけど、時間的に少し厳しいよ」

「遠くに行けば有るでしょう?」
「なら、連れってよ!」

 咲子は力強く言って来る。

「一応有るが……。高速道路とバイパスをフルに使っても2時間以上掛かるよ…」

「だから、私の我が儘なの!」
「普通のお願いでは無いから我が儘なの!!」

 業を煮やしたか、咲子は開き直って言う。

「取り敢えず、車に戻ろう」
「本当に海に行くなら、早いほうが良いし」

「うん」
「分かった…」

 咲子は弱く頷いて、俺と車に戻る。
 幸い財布の中にはETCカードも入っているし、現金も今日の昼食ために余分に入っているから問題は無いが、ETCカードを使うとカード請求書が節約大臣(母さん)の元に行くから思いっきりバレる?!

 俺と咲子は車に乗り込みエンジンを掛けて、そこで改めて話を再開する。

「咲子……。それが咲子の我が儘で良いんだな?」

「うん…」
「明日で、お父さんとはさようならだし、私の我が儘聞いてくれても良いでしょ!」

「いや、永遠の別れじゃ無いんだから……、それに明日咲子が戻っても、俺も近いうちに家に帰れるはずだから…」

「そうなったら、お父さんと2人きりに成れないじゃん!」
「私は、お父さんと2人きりの思い出が欲しいの!!」

「う~ん」

 やはりと言うか咲子は、宮子から全ての話を聞いているようだ……
『ガツン』と言ってやっても良いが、この年頃の子は一番扱いが難しい。特に自分の娘では無いから、何を考えているのか更に判らない……

 この時間から、俺が知っている海に向かえば、遅くても夕方の17時頃には付けるだろう……。お盆のほぼ最終日だから、高速道路のUターンラッシュもピークは過ぎているし、高速道路の料金に関しては、事後報告で母さんに報告すれば許してくれるかも知れない!?

「じゃあ、今から海を見に行くか?」

「やっと……言う事聞いてくれた」

「まぁ、父さんも最近、わざわざ海を見に行く行為をしていなかったからな…」
「俺が知っている綺麗な海を咲子に見て貰うよ…」

「私が知らない海なんだ…」

「まぁ、そうなるな」
「母さん達と行く海とは、丁度反対方向に成るからな」
「そっちの海でも綺麗だけど、綺麗な場所は殆どは、海水浴場に成っていたり、サーファー達の聖地に成っているからな」

「ふ~ん…それは楽しみだ!」
「早速、連れてってよ!」

 先ほどまでの辛気くさい雰囲気は無くなって、いつも通りに戻り掛けている咲子。
 俺にとっては急な予定が入った訳だが、咲子が何処まで、自分の子では無い事を知っているのか知りたかったし、咲子もそこで何かの行動に出るつもりなんだと感じて、俺と咲子は海を急遽きゅうきょ見に行く事に成った……
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