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第66話 我が家の長女 その8
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すき焼きは思っていた以上に沢山有って、フライパンの底が見え出すと咲子は、すき焼きを作りに台所に向かい、完成すると戻って来るを数回繰り返す。
箸休めに、トマトやキュウリが切って有ったり、惣菜コーナーで買って来たイカの唐揚げも有って、すき焼きの調理中でも手持ち無沙汰には成らない。
宮子の方も普通に食事をしていて、俺との関係以外は良好で有った。
咲子との食事。母さんや真央達とはまた違う、食事の時間を俺なりに楽しんだ。
咲子が作ってくれた、すき焼きをお腹一杯に食べてお腹は満足だが、心はモヤモヤしていた。
食事中も咲子は俺と宮子に話し掛けて、会話上では成立しているように見えるが、宮子は俺には話し掛けて来ないし、俺も声を掛けなかった。
後片付けは俺と咲子で行い、宮子にはお風呂に入って貰う。俺は職場でお風呂に入って来ているので、仕事の日は家では風呂には入らない。
後片付けも終わって、寝室に布団を敷いて、お風呂から出てきた宮子に、寝る場所を案内して俺は居間に戻り、咲子はお風呂に入りに行く。
ここ数日間は別々の布団で寝ていたが、今日は宮子が泊まりに来ているので、俺の布団側に咲子が寝る事に成っているらしい。
宮子は居間には戻って来ないだろうと思って、何だか飲みたい気分だったので、母さんが残していった日本酒の5合瓶を、どうせなら飲んでやろうと思い準備して飲もうとした時に……
『ガラッ!』
居間の引き戸急に開く。
咲子がもう風呂から出て来たのかと思ったが、……宮子だった。
「……丁度、咲子がお風呂に入っているし、決着付けようか?」
「決着?」
「俺は宮子と争い事何てしていないぞ」
「あなたがしらばくれたって、私での中では、全然解決していないんだよ!!」
宮子は声を荒げる。一軒家なら良いが今は共同住宅だ。時間も21時を過ぎており、この時間帯に大声を出されると近所迷惑に成ってしまう……
「宮子……。少し落ち着け」
「取り敢えず座りなさい…」
「何!?」
「急に父親面するの!!」
「ふざけないで!!」
「良いから座れ!!」
俺は急にイラッと来てしまって、思わず現場で出すような声を出してしまう……
何時もなら宮子がこの様な態度を取っても、直ぐに母さんが宮子を窘めるからこんなことは起きないが、今は“母さん”と言う安全スイッチが無い。
こんな行動は本来、絶対行ってはいけない行動だが行ってしまった。
俺が宮子と言うより、子ども達に大声を出したのは恐らく初めてだろう……
母さんにも荒げた声を出した事は1度も無い。
母さんの危なげな行動にヒヤヒヤする時も多いが、母さんに怒りをぶつけたいとは感じない。
普通の注意はするが、注意すると母さんは危なげな行動は終えてしまうため、それで終わってしまう。咲子も似たような者だ。真央は……やっと自我が芽生え始めたばかりか。
宮子は非行にも走らず、悪戯や無理な要求もしてこない。その前に俺は怒る事自体が嫌いだ。
怒鳴り散らして周りがペコペコするのは、怒っている側にとっては確かに気持ち良いかも知れないが、第三者の目で見れば『何だこいつ? お山のガキ大将か!?』と感じ取られてしまう。
宮子は突然の俺の言葉にびっくりしたのだろう。それ以上は何も言わずに黙って座る。
俺は何も言わずに立ち上がり、台所に向かってコップを1つとって部屋に戻る。
部屋に戻ったら、宮子の前にコップを置いて日本酒を注ぐ。
「多少は飲めるんだろ…。母さんが持って来た、母さんが時々飲んでいる日本酒だ」
「宮子のお父さんも、この銘柄好きだったらしいな……」
俺はそう言って、飲もうとしていた日本酒をここで飲む。
俺はどちらかと言うと、淡麗辛口系が好みだが、母さんは淡麗甘口系が好みだ。日本酒を母さんが持って来たから当然、淡麗甘口系だ。
「……」
宮子はただ黙っていたが、しばらくすると日本酒に口を付ける。
「おいしい……」
「これが、お父さんの好きなお酒だったんだ。知らなかった…」
「日本酒はダサいとか言って、周りの子は全然飲まなかったし、私もおじさんクサいと思って毛嫌いしていた…」
「そんな事言ったら、お父さんが悲しむぞ」
「お父さんの好きなお酒なんだから…」
「あの時飲んでいたのは、日本酒だと思っていたけど、銘柄までは知らなかったし、何故か知ろうとも思わなかった……何故!? 急にこの場で……」
宮子は急に嗚咽しだす。
「……」
(分かり切っていた事だが、俺も何故、此処まで放置してしまったのだろうか?)
(咲子や真央に気を取られて居たでは理由には成らない……。俺自身もこの問題から逃げていたのだ)
(この機会を逃したら、宮子は二度と俺には心を開かないだろう。上手に解決させなくては……)
宮子の心が落ち着くまで、俺は静かに日本酒をちびりと飲みながら、静かに見守った。
箸休めに、トマトやキュウリが切って有ったり、惣菜コーナーで買って来たイカの唐揚げも有って、すき焼きの調理中でも手持ち無沙汰には成らない。
宮子の方も普通に食事をしていて、俺との関係以外は良好で有った。
咲子との食事。母さんや真央達とはまた違う、食事の時間を俺なりに楽しんだ。
咲子が作ってくれた、すき焼きをお腹一杯に食べてお腹は満足だが、心はモヤモヤしていた。
食事中も咲子は俺と宮子に話し掛けて、会話上では成立しているように見えるが、宮子は俺には話し掛けて来ないし、俺も声を掛けなかった。
後片付けは俺と咲子で行い、宮子にはお風呂に入って貰う。俺は職場でお風呂に入って来ているので、仕事の日は家では風呂には入らない。
後片付けも終わって、寝室に布団を敷いて、お風呂から出てきた宮子に、寝る場所を案内して俺は居間に戻り、咲子はお風呂に入りに行く。
ここ数日間は別々の布団で寝ていたが、今日は宮子が泊まりに来ているので、俺の布団側に咲子が寝る事に成っているらしい。
宮子は居間には戻って来ないだろうと思って、何だか飲みたい気分だったので、母さんが残していった日本酒の5合瓶を、どうせなら飲んでやろうと思い準備して飲もうとした時に……
『ガラッ!』
居間の引き戸急に開く。
咲子がもう風呂から出て来たのかと思ったが、……宮子だった。
「……丁度、咲子がお風呂に入っているし、決着付けようか?」
「決着?」
「俺は宮子と争い事何てしていないぞ」
「あなたがしらばくれたって、私での中では、全然解決していないんだよ!!」
宮子は声を荒げる。一軒家なら良いが今は共同住宅だ。時間も21時を過ぎており、この時間帯に大声を出されると近所迷惑に成ってしまう……
「宮子……。少し落ち着け」
「取り敢えず座りなさい…」
「何!?」
「急に父親面するの!!」
「ふざけないで!!」
「良いから座れ!!」
俺は急にイラッと来てしまって、思わず現場で出すような声を出してしまう……
何時もなら宮子がこの様な態度を取っても、直ぐに母さんが宮子を窘めるからこんなことは起きないが、今は“母さん”と言う安全スイッチが無い。
こんな行動は本来、絶対行ってはいけない行動だが行ってしまった。
俺が宮子と言うより、子ども達に大声を出したのは恐らく初めてだろう……
母さんにも荒げた声を出した事は1度も無い。
母さんの危なげな行動にヒヤヒヤする時も多いが、母さんに怒りをぶつけたいとは感じない。
普通の注意はするが、注意すると母さんは危なげな行動は終えてしまうため、それで終わってしまう。咲子も似たような者だ。真央は……やっと自我が芽生え始めたばかりか。
宮子は非行にも走らず、悪戯や無理な要求もしてこない。その前に俺は怒る事自体が嫌いだ。
怒鳴り散らして周りがペコペコするのは、怒っている側にとっては確かに気持ち良いかも知れないが、第三者の目で見れば『何だこいつ? お山のガキ大将か!?』と感じ取られてしまう。
宮子は突然の俺の言葉にびっくりしたのだろう。それ以上は何も言わずに黙って座る。
俺は何も言わずに立ち上がり、台所に向かってコップを1つとって部屋に戻る。
部屋に戻ったら、宮子の前にコップを置いて日本酒を注ぐ。
「多少は飲めるんだろ…。母さんが持って来た、母さんが時々飲んでいる日本酒だ」
「宮子のお父さんも、この銘柄好きだったらしいな……」
俺はそう言って、飲もうとしていた日本酒をここで飲む。
俺はどちらかと言うと、淡麗辛口系が好みだが、母さんは淡麗甘口系が好みだ。日本酒を母さんが持って来たから当然、淡麗甘口系だ。
「……」
宮子はただ黙っていたが、しばらくすると日本酒に口を付ける。
「おいしい……」
「これが、お父さんの好きなお酒だったんだ。知らなかった…」
「日本酒はダサいとか言って、周りの子は全然飲まなかったし、私もおじさんクサいと思って毛嫌いしていた…」
「そんな事言ったら、お父さんが悲しむぞ」
「お父さんの好きなお酒なんだから…」
「あの時飲んでいたのは、日本酒だと思っていたけど、銘柄までは知らなかったし、何故か知ろうとも思わなかった……何故!? 急にこの場で……」
宮子は急に嗚咽しだす。
「……」
(分かり切っていた事だが、俺も何故、此処まで放置してしまったのだろうか?)
(咲子や真央に気を取られて居たでは理由には成らない……。俺自身もこの問題から逃げていたのだ)
(この機会を逃したら、宮子は二度と俺には心を開かないだろう。上手に解決させなくては……)
宮子の心が落ち着くまで、俺は静かに日本酒をちびりと飲みながら、静かに見守った。
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