上 下
88 / 167
番外編

第9話 家族旅行 その3

しおりを挟む
 自然の名勝が中心だが……ドライブ旅行は進んでいく。
 時間的に昼食の時間だが、今は山間やまあいの道を走っている。
 時々、集落は見えてくるが、食事を取れる所やコンビニ等は無さそうな感じだ。
 我が家で一番の食べ盛りの咲子が俺に聞いてくる。

「お父さん~~。お腹空いてきた~~」
「我慢出来ないよ~~」

(お前は小さい子どもか!?)

 そんな事を言っている咲子だが『車内で、お菓子を十分に食べていただろ?』
 俺は心の中でそう思うが、宮子に聞いて見る……

「…宮子。昼食はどうするのだ…?」

「……この辺は何も無さそうね」
「見付かった所で、適当に入りましょう…」

「宮子」
「……そうは言うが、道的に恐らく……これから峠道に入るぞ」

「仕方ないわ…」
「ドライブ旅行でも、ツアー見たいな段取りは組んで無いから…」

「…そう言う事だ。咲子しばらく我慢してくれ…」

 俺は咲子にそう言うと、咲子は質問をしてくる。

「しばらくって、どれくらい?」

「30分も走れば、市街地に出るだろう…」

 俺がそう言うと、咲子は周りの景色を見始める。

「……我慢しよう」

 咲子は今どの当たりを走っているのかを理解したようだ。
 道は本格的な山道に成って、勾配のきつい上り坂や急カーブが続く……どうやら本格的な峠道のようだ。

 最近は、峠の脇にトンネルが整備されている道も多くなった。
 トンネルを通れば楽に峠を通過出来る。
 俺も結婚してからはドライブをする事も少なく成ったため、久しぶりの峠道に苦戦する。

「ちょ、ちょっと、お父さん!」
「もう少し、ゆっくり曲がって、お茶が飲めないよ!」

「これじゃあ、食べようと思ったスナック菓子も食べられない~~」

 母さんや咲子が俺の運転に苦情を入れてくる。
 しかし、咲子……。この状態でもお菓子を食べるのか?

「わっ、分かった……。久しぶりの峠道だから感覚が鈍っている…」

 俺はそう言いながら、助手席に座っている真央が気に成ったので確認してみる。

「わぁ~~、どんどん登って行く~~」
「凄い! 凄い!!」

 真央だけが、カーブから時々見える景色を楽しんでいる様だ……

「お父さん……ちょっと気分が悪く成ってきたかも…」

 突然、気分が悪く成ってきたと母さんは言い出す。

「えっ!?」
「本当……どこか止められそうな場所を探してみる…」

 峠道だから、待避所はどこかに必ず有るはずだが、母さんの言うタイミングが悪くて、さっき通り過ぎてしまったばかりで有る。

「お父さん……おトイレ行きたい…」

 真央もトイレを要望してくる。

だ…」

 宮子も何故かそこで呟く……
 家族旅行で最初のピンチがやってきた!?

 しかし……峠道も間もなく峠らしく、展望台の案内標識が現れる。
 展望台ならトイレも併設されているはずだ!!
 俺は見えて来た、展望台駐車場の方にハンドルを切る……

 ……

「流石、眺めは良いな…。展望台だ」

 俺は思わずそう呟いてしまう。
 母さんも同じように景色を見ていて、気分を落ち着かせている。
 母さんも最悪の事態は避けられて、真央も惨事に成らずに、道途中に有る展望台で小休止を取っている。
 そこから見える景色はふもとからの道路のラインが、くっきりと見えている場所で有って、かなりの勾配道路で有った事を物語っていた。

「母さん……大丈夫か…?」

「えぇ……もう、平気」
「家族ドライブ何て、本当久しぶりだからね…」
「ちょっと、車に弱くなっていたかも……」

「でも、これからは増えるかも知れないぞ……」

「そうだね……。これ位で参ってしまったら、お母さん失格かも♪」

 車から降りた直後と比べて、母さんの声に元気が戻って来た。
 近くにいる宮子は無言で景色を見ながら、スマートフォンを触っている。
 今の時刻は12時半を大分過ぎた所……。これ以上昼食が遅くなると、宿泊先の晩ご飯に影響が出て来そうだった……

「お父さん~~!」
「食べ物屋さんが有るよ~~!!」

 咲子がそう言いながら、俺と母さんの方に近づいて来る。真央も一緒で有る。

「こんな所に!?」
「屋台でも有ったのか?」

「屋台ではないよ!」
「喫茶店見たいな感じ店が有ったけど、“お食事処”の旗も立っていた!」

 咲子の話では公衆トイレに行った時に、道の先に旗が立っていたのが気に成って、見に行ってみたらお店が有ると言う事だ。

「お父さん! もう、ここでお昼ご飯食べようよ!!」

「私(真央)もお腹空いた!」

 咲子・真央が昼食を訴えてくる。

「まっ、待て……。咲子達の気持ちも分かるが、母さんの方が……」

 俺は母さんを気遣うが……

「…お腹が空いていて気分が悪かったのかも…?」
「お母さんは平気よ! お父さん。お昼ご飯にしましょう♪」

 母さんまで……そんな事言う。
 俺は旅の主催者の宮子に聞いて見る。

「……宮子。どうする?」

「そのお店で昼食にしましょう。今、調べたら評判良いみたい…」

 宮子はスマートフォンで周辺の飲食店を調べていたようだ。
 みんなの意見が纏まったので、そのお店で昼食の時間で有る。
 たしかに、旅先で食事の失敗は避けたい。
 俺たち家族は、そのお店で昼食を取る事に成った……
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

偽物聖女を愛した国は滅びて当然です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:610pt お気に入り:1,389

【完結】恋を忘れた伯爵は、恋を知らない灰かぶり令嬢を拾う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:587

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:122

【長編版】孤独な少女が異世界転生した結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:801

手負いですが恋愛してみせます ~ 痛がり2 ~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:22

処理中です...