魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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幽憑の魔女①

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 アキセがしつこく誘ってくる。
「なあ、もうすぐ町だし。この後デートでもしないか」
 町に入る1時間前からこの調子だった。
「この先に有名な温泉街があるんだ。このところ疲れていただろ。温泉に入ってスッキリしようぜ。でも入るなら混浴にしてくれる。混浴だと男女一緒に入れる。しかも個室があるんだ(以下略)」
 うるさい。
 狙いが分かり切っている。あまりにもしつこいので、頭が切れた。
「あんたね!」
ザーと急な土砂降りの雨が降り注ぐ。
「これ・・・あんたが降らせたんじゃないわよね・・・」
「そこまで高い魔術はラプラスに奪われました・・・」
 しょかんの魔女ラプラス・ライブラーにより、上級魔術は奪われている。
「とりあえず、あそこで雨宿りするか」
 アキセが指を指した方向を見れば、古い屋敷だった。
 このままでは、体が冷えて風邪をひいてしまう。この際仕方なくアキセと雨宿りすることにした。
 

 濡れてしまった。濡れた服は暖炉の前で乾かす。乾く間、乾いた布団でくるまっていた。しかし、どう考えても都合がよすぎる。
「ねえ、この屋敷もあんたが用意したんじゃ・・・」
「どこまで疑うんだ。そこまで万能じゃねえぞ」
 アキセは、替えがあったのか、別の服を着ていた。アキセが持っているなんでも収納、呼び出しができる指輪から出したのだろう。
「毎回やったら、信頼度が減るだろ」
「現在進行形でないわよ」
 ジャンヌは、疑う目を見つめる。
「なんだよ。その目は」
 アキセが横に座ろうとするので、「来るな」とはっきり言う。
「そのくらいいいだろ」
「離れろ。視覚から離れろ」
「たく」
 アキセが悪態をつく。
「ノリの悪い女だな。せっかく二人なんだからさ!」
 アキセはジャンヌを押し倒す。
「痛いんですけど」
 ジャンヌは、冷たい視線を送る。
「少しくらい付き合えよ」
 アキセはジャンヌの口元を近づくが、ジャンヌは頭突きをする。
「いって~」
 アキセは頭を抑える。
「今やること・・・」
「調子に乗るな」
 頭が床に当たったジャンヌはアキセから離れる。
「じゃあ仕方がない。俺はこの人形で我慢するか」
 アキセの手にはいつの間にかジャンヌのそっくりの人形を抱いている。しかも裸体で。
「おま・・・」
 わざわざジャンヌに似せた人形を作ってまでするのか。この男は。
 プチ切れる。
 アキセをひと蹴りで部屋から追い出す。
「おい!」
「出で行け!」
「だったら、その人形返せ!」
「没収!」
 扉を強く絞める。


 くそー鍵を閉めてる。おまけに人形を奪われてしまった。
 コルンの発明品の『偽装人形』。
 口しかない丸い頭と小さい体。柔らかい触感の不気味な人形で、体の一部を人形に食べさせ、その体の情報を元に模倣した体を作る。
 壊される前に回収しなければ。
 指飾りを召喚し、魔術で扉を開けようとした時だった。
ドアの向こうで物音がした。
「あ!何すんのよ!返しなさい!」
「なんだ?」
 部屋の中が慌ただしくなった。
「なんであんたも・・・」
 壊れた音がした。
 ただ事ではない。
 指飾りでドアノブにカギを開く記号を描く。カチャと鍵が開く音がした。
 扉を開ければ、外壁と内壁が壊され、ジャンヌや人形もなかった。
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