魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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怪物を産む国 前半①

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「クソ・・・頭イテ・・・」
 頭をふらつくラ・イルは目を覚ます。
 なぜ、檻の中にいる。
 確か、普通に森の中で気を失った。その時に捕まったようだ。あまり決めつけてはいけないが、犯人は一人しかいない。
 外が騒がしい。外側の檻を見つめる。
「コロシアム?」
 円形の闘技場だった。中央にある闘技場を観客席が見下ろして取り囲まれている。壁に等間隔に檻がある。
「お待たせいたしました!」
 放送が入った。
「次はなんと魔女に作られた怪物だあ!」
――俺ではないよな。
 答えるように檻が上がる。
 檻が開いたが出たくない。
「早く出ろ!」
 背後から兵士が持っていたカースネロの槍から雷を放つ。
 雷を避けるために咄嗟に後ろへ下がる。思わず、コロシアムに出でしまった。
「なんと魔女が体をくっつけたという異例な怪物だ!その名もツギハギザコチキンだ」
――誰だ!そんな名前つけたのは。
 心の中で怒鳴ってしまった。
 観客が騒いでいる。妙に笑い声も聞こえるが。
「さあ。ルーキーは、メダマクランカーをどう戦うか、見ものだあ!」
 向かい側の檻から現れたのは、見たことのない怪物だった。
 大きい一つの目。大きい口に刻んだ歯。大きい人の顔からクモのような足が6本。巨人のような腕も2本はえている。大きさも3メートルはある。
合成獣(キメラ)にしても『呪い』が出していない。異獣でも魔獣でもない。
 あれと戦うのか。 
 メダマクランカーは、クモのように迫ってくる。大きい腕を上げる。
 イルは後ろへ下がった途端に前に飛び出し、足でメダマクランカーの大きい目玉を潰す。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 メダマクランカーは、痛がるように目を手で抑えて泣き叫ぶ。
 なんだ。この違和感は。よく聞こえないが、あの叫びの中に何かが混ざっている。
 メダマクランカーはそれっきり動かなくなった。
 客席は盛り上がっている。
 周囲を見渡す。特別席があった。50代の男が傲慢に見下ろし、その隣に壁に寄り沿っている男はとても見たことがある。
あのやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。全部あいつの仕業か。
 アキセ・リーガンだった。もう怒りがこみ上げる。
 今すぐ飛び込もうとしたが。いや待て。
その場にあった石を投げれば、石は客席の前に透明な壁にぶつかり、火花を散った。
 やはり魔術で結界を張っている。客席に飛び込んでも無理か。
「さあ、盛り上がったところで次の大戦だ」
 次もあるのかと肩が重くなった。


 夜。
 1日5試合もやらせた。
 魔女と相手するよりは苦戦しないが、さすがに疲れる。右手はまともに動けない中、戦うのにも疲れる。
 檻の中でイルはぐったりしていた。
 今まで戦ってきた怪物はなんだ。異獣(エヴォル)や魔獣(モンスター)は、原型となる動物が変化した生き物。それが全くない。
 それよりも今は、どうやって脱出しようか。最終的にアキセをぶん殴る。だか、檻には魔術をかけてあるから、簡単には抜け出せない。
「デタイ?」
 声がした。
「誰だ」
 匂いはするが、姿が見えない。
「ココ」
 内側の檻から音がした。
 視線を向ける。
 そこには、4つの目。襟巻のような皮膚を持ったトカゲの頭。大きい2本の指。4本のずっしりした足。長い尾の生き物だった。
「デタイナラ・・・キョウリョクシテホシイ」


 静まりかえった牢獄。角を取りながら、様子を見る。
 その時、腕を掴まれる。
「はあ」
 肝を冷やした。恐る恐る振り向けば、アキセ・リーガンだった。
「おまえか・・・」
 これはこれで厄介な奴に見つかった。
「やっぱり来たのか。ジャンヌ」
「イルをここに参加させたのはあんただろ」
 コロシアムの放送でまさかと覗いてみれば、イルが怪物と戦っていた。それに特別席にアキセがいたのも見えた。
 それだけで察した。アキセがイルをここに連行させたということを。それに右腕をかばいながら戦っていた。あの時の後遺症を隠していた。
 仕事する前に逃がしたかったが、アキセに見つかってしまった。
「何のことだ?」
「とぼけるな!これまでだって彼にひどいことしやがって」
 アキセはイルを嫌っている。これまでも魔女に売ったり、戦わせたりした。
「あいつに爆弾を仕掛けてある」
 その発言で息が止まりそうになった。
「分かるよな。この意味」
 アキセの笑顔の中に悪意を感じる。腹が立つ。
「あんたって奴は・・・」
「別にここであの獣を爆発してもいいし。それに変装したつもりか。女一人ここにいたら、大騒ぎになるぞ。ここは男の楽園なんだからさ」
 だから、男に変装した。
「それが嫌ならちょっと付き合え」
「どこによ・・・」
「おまえ、魔女狩りに来たんだろ」
 魔女がいるのか。話に訊いていたのと違う。けど、アキセに悟られてはいけない。
「分かるの」
「俺が案内してやるって言っているんだ」
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