魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
289 / 703

怪物を産む国 前半⑥

しおりを挟む
 どうすればいい。
 ジャンヌはイルに視線を向けた時だった。
 闘技場からイルが飛びつく。
 客席に飛び込もうとしているのか。客席に結界が張っていた。
ジャンヌはすぐには白い炎を投げる。白い炎は透明な壁に当たり、ガラスが割れた音がした。
 白い炎から跳び出したイルは、足を真っすぐ伸ばす。その方向はアキセに向かっていた。
「まず!」
 客席が土煙に包まれた。土煙から姿を見せたのは、イルだった。
「イル!」
 イルは腰を下ろす。
 ジャンヌはイルに触れる。これでイルにかけた魔術は解けた。
 イルの左腕から血が流れる。
「今止める」
 左腕に『光』を結晶化させ、止血した。
「ぐ!」
「これで血は止めた。でも・・・」
「会話を聞こえた・・・」
 エルフの耳で話を聞こえていたようだ。
「俺が人質になってたんだろう・・・だから、あいつに従うしかなった・・・」
 イルは息を乱れながら言う。
「ごめん・・・巻き込ませて・・・」
「俺こそ・・・おまえばっかりに・・・」
「そんなことない・・・」
「ダイジョウブ?」
 声をかけられたのは、イルと一緒にいたトカゲの怪物だった。
「とりあえずわね。後でちゃんと治療はしないと」
 ジャンヌは立ち上がる。
「後は私に任せて」
 客席の奥にいたアキセに睨みつける。
「もう許せない。殺して・・・」
「ママ・・・」
 ジャンヌの声を遮ったのは、黒い怪物だった。
 結界が浄化されたことで黒い怪物も客席に入ってきた。その先にはユリアがいた。
「ママ・・・」
 トカゲの怪物もユリアの元へと歩き出す。
「ママ・・・」
「ママ・・・」
 二つの怪物は甘えるように近づく。
「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」「ママ」
「来ないで!」
 ユリアが叫んだ途端に二つの怪物は時間が止まったように止まる。
「なんで来るのよ。私は産みたくなかったのに!なんで来るのよ!思い出さないでよ!あのまま死ねばよかったんだ!」
 ユリアが叫ぶ。
「私の子供じゃない!子供じゃない・・・」
 頭を抱えながらユリアの周りに黒いモヤが広がっていく。
「まさか・・・」
 人間のユリアが『呪い』を可視化した黒いモヤを発生できるわけではない。ユリアの茶色の髪が黒く染まっていく。
「待って!」
 ジャンヌはユリアに駆け寄ろうとしたが、ユリアの影から黒い尾が伸びる。ジャンヌを払い、闘技場へと落とされる。
 ジャンヌは白い炎を足に噴射し、着地する。トカゲの怪物と黒い怪物も闘技場に落ちる。
「あはあははあっははあっはあははは」
 ユリアが狂ったように笑う。
「醜獣(みにくじゅう)の魔女バイカリ・キルビーラーの復活よ~」
 魔女がユリアの体を乗っ取った。
 客席の奥に黒い柱が伸び、晴れたと思えば、コロシアムにアキセと一緒にいた男がいた。
「ここは・・・」
 バイカリは瞬時に男に近づく。
「王様。会いたかった~」
 ユリアの顔でバイカリは愛しく笑う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...