魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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山奥の魔女②

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 目を覚めれば、家の中だった。
 木造の家。木造の床。部屋の床の一部を切り込んだ炉。
 縄で体を縛られている。紅孩児と一緒に。
「なんでおまえと一緒に縛られなきゃいけないんだ」
「そのセリフをそのまま返す」
 よく見れば、紅孩児の口に口づけの跡が大きく残っている。
 そういえば、あの時キスされた。つまり顔に残っているかもしれない。
「お!起きたかい」
 枯れた女の声。声をした方へ向けば、驚愕した。ドン引きした。
金色の瞳。目と口の周りに白い化粧。乾いた肌が黒く、髪が大きく盛り上げ、紐飾りや髪の先端が明るい色に染める。たるみをつける長い白い靴下に足を出すワンピースを着ている老婆だった。
「いくらファッションは個人の自由とはいえ・・・」
「年を考えろ!」
「私のファッションに口出しするな!」と枯れた声を上げる。
「はい・・・」と一瞬で紅孩児をおじける。
 余計に怒らすな。
「ぐへへへ。いい男を見つけたわ~」
 想像していた通り、欲求不満のおばさんだった。
ちょっと待った。キスされてここに連れてこられた。その相手がこの老婆ということ。
 正体が分かった途端に、倒れたいほどに一気に気持ち悪くなった。
「さ~て~山奥(やまおく)の魔女セツコ・ヤマンバと朝まで付き合おうじゃないか。ぐへへへ」
 ヨダレを垂らしながら近づく。
「やるならこの赤いのから」
「ああ!」
「まとめてやるんじゃあああああああああああ!」
 とセツコが襲いかけようとした時だった。
「ただいま」とガラガラと扉を横に引く音と共に声がした。
 黒髪に金色の瞳。筋肉質な体に赤い布を前掛けにし、顔を整った男が入ってきた。
 明らかに変質者だった。
「母ちゃん。こんな遠いところまで・・・」
 目が合う。
「おかえりなさい。キンタロウ」
 何事もなかったように返すセツコ。
「はあ・・・」
 キンタロウは重い溜息を吐く。
「母ちゃん。いい加減にしろよ。また知り合いに手を出して」
 また?
「なんだ。知り合いなのか?」
「そっちの赤いのがな」
 紅孩児と知り合い。
「そうなのかい?」
「分かってやってるだろ!」
「知らなかったんだよ」
「とぼけるな。何回このくだりをするつもりだ!」
「さあ?」とセツコはとぼける。
「もう数えきれないほどやってるぞ。だから定期的に帰ってきているじゃないか!」
「それでも母ちゃんは寂しいんだよ~」とセツコはわざとらしく泣く。
「いい加減に子離れしろよ」
 と呆れながらキンタロウは言う。
「おまえが自立して、父ちゃんは死に。新しい恋をしてもいいじゃないか」
「そこはだめとは言わないけど、せめて俺の知り合いに手を出すなよ」
「偶然」
「いい加減にしろ!」
 怒鳴る。
 どうやら苦労しているようだ。
「だったら、そこの黒いのは知らない奴だから、やってもいいぞ」とキンタロウは指を差す。
「おい!」
「じゃあ、二人でゆっくりやろうじゃないか。ぐへへ」
 もう獲物を狙う目に変わった。
 逃げてやる。
 指に指飾りを召喚し、小さく記号を描き、風を生み出す。
 家の中が小さな竜巻を発生する。その隙に手に魔道具の『転送玉』を召喚し、転送して逃げる。


「またんかー」とセツコは家を飛び出す。
「母ちゃん・・・」
「助かったぜ。キンタロウ!」
 すかさず紅孩児の首を掴む。
「ぐえ!」
「おまえが女好きなのは知っていたが、いくらなんでも母ちゃんにまで手を出るとはどういうことだ!」
「おい!違う!あんなしわ派手ババに手を出すか!」
「ああ!」
 声を上げる。
「いいか。急に知り合いが父親になった途端の複雑な思いはおまえに分かるか」
「おう・・・」
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