リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
292 / 302

291話 懺悔室で(2)

しおりを挟む
「冗談ですよね、ルーイ様。この再現のために用意された創作なんでしょう?」

 マードック司教様はルーイ様の告白が信じられないようだ。流れ的にその想い人が人間であると察せられてしまうからな。神が人に恋をするなんて……まるで王家の……ディセンシア家の成り立ちを想起させる。ルーイ様の正体を知っている司教様からしたらかなりの衝撃だろう。ただ、メーアレクト様の時とは違い、ルーイ様のお相手は同性であるが……

『神の御前で嘘などつきませんよ』

 ルーイ様はまだ信徒の演技を続けている。自分自身が神の癖に……
 ルーイ様が演技をやめないので『嘘をつかない』がいまいち信用できなく聞こえる。だから司教様は迷っているのだ。ルーイ様の告白をどう扱えばよいのか。フェリスさんの方は彼の言葉を素直に信じたようで、そわそわしながら話の続きを待っていた。
 それにしても……ルーイ様はどうして今このタイミングであんな話をしたのだろうか。彼の想い人が誰であるかなど、わかる人にはわかってしまう。いつもの気まぐれか……理由なんて無いのかもしれないけどさ。

『あの……その方のお名前を伺っても?』

『申し訳ありません。相手に迷惑がかかりますので、名前の方は伏せさせて頂きます』

 司教様は動揺しながらも名前を確認した。借りた服を汚したことに対する懺悔だったのに、話の焦点がルーイ様の想い人が誰であるかに移行してしまっている。

『……実際、本日の私の行いがバレたら酷く怒られてしまうでしょう。でも、私があの人に対して抱く感情は恋慕であると宣言しておきたかった。決して興味本位や戯れではないのだと……だから、どうか見守っていて下さい』

 ルーイ様は私たちがいる方に振り返ると、にっこりと微笑んだ。そうか……ルーイ様が一番聞かせたかったのは最後にいった言葉だ。そしてその相手は、セドリックさんの部下であるクラヴェル兄弟だったんだ。彼らに誤解されないように……あの人への気持ちは本物であると知らしめたかったのか。
 そうだとしても捜査中……しかも、懺悔の形を借りて行うのはどうかと思うけど。きっと常にタイミングを見計らっていたに違いない。司教様立ち合いのもとで行われた宣言なら本気度が伝わると考えたのかな。

「……とまぁ、こんな感じで。俺の懺悔風悩み暴露だったわけだけど、どうだったかな?」

 ルーイ様が演技をやめた。ここでお開きにするんだ。好きな人を匂わせただけで、悩み自体は全然解決してないんだけどな。恐らく悩みの方はオマケみたいなものだったんだろう。これ以上やる必要はないと判断したのか。
 一応懺悔室の雰囲気を再現するという目的もちゃんと果たせていた。司教様は訳わかんなかっただろうけど。

「こういう場合、怒るというより恥ずかしがりそうだけどね。あの人の性格ならさ。なんかふたりずっと揉めてたみたいだったけど、問題は解決したって思っていいのかな」

「……陰ながらどうなったのかと心配していたんですよ。先生のそのご様子からして、お相手とちゃんと話がついたようで良かったです」

「うん。ルイス君にレナード君、ありがとう。もう君たちの大事な人を困らせたりしない。約束するよ」

 懺悔の形を取って行われたルーイ様の告白……クラヴェル兄弟は彼の目的を正しく理解しているみたい。
 ルーイ様とセドリックさんを近くで見ていれば、お互いに強く意識し合っているのは明らかだった。でも……どこか不安定で危なっかしい雰囲気も同時に纏わせていて、私も気にはなっていた。
 好きあっているならいいじゃないかとはならない。話はそんな単純なものではなかったようだ。特にセドリックさんが顕著で、ルーイ様が原因で体調を崩したりもしていた。クラヴェル兄弟はそんなふたりの様子を心配してくれていたのだ。ルーイ様もそれを知っていたから、場違いと分かっていても話を持ち出したのだろう。

「クレハ。ちょっとだけ俺の私情が混ざっちゃったけど、懺悔の再現はどうだった?」

「はい。私情のところに関しては、私もご兄弟と同じ感想です。ルーイ様、相手の方を大切にしてあげて下さいね」

「はい、はい。分かってるよ」

「懺悔室の雰囲気を知ることが出来て大変参考になったと思います。司教様もご協力ありがとうございました」

「……えっ? はっ、はい。どういたしまして。このくらいはお安いご用です」

 司教様はまだ衝撃から抜け切れていない。私たちと違ってルーイ様の好きな相手が分からない上に、そもそも話自体が本当なのかどうかも判断がつかないのだ。
 ルーイ様はもうこれ以上、好きな人について詳しく話すつもりはなさそう。司教様を驚かせるだけ驚かせて放置するのは気の毒だけど、当人が言わないものを私が勝手に説明するわけにもいかない。ルーイ様も意地が悪いな。

「さて、それじゃあ皆さん。そろそろ帰りますか」

「ボスが待ちくたびれてるだろうなぁ」

「マードック司教、ありがとうございました。今後もよろしくお願い致します」

「……はい。お気を付けてお帰りください」

 ルーイ様のひと言で皆一斉に帰り支度を始めた。司教様はしばらくの間このネタで悶々とすることになるだろう。
 もしかしたら……この一連の流れ自体がニコラさんについて教えて貰えなかった事に対しての、ルーイ様の仕返しだったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...