リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
92 / 302

91話 追跡

しおりを挟む
「……あの、すみません」

「あぁ?」

 俺が軽く肩を叩くと、その男は体全体を大袈裟に震わせた。単純に声をかけられて驚いただけなのか、それとも後ろめたい気持ちを抱えているがゆえに過剰に反応したのか……
 振り向いた瞬間の男の顔には、焦りと動揺が見てとれた。しかし、声をかけたのが子供おれと分かった途端に、男の表情は余裕ぶった……まるで人を小馬鹿にするようなものへと豹変した。

「何だ、てめぇ……」

 コイツ、俺のことを知らない? 遠隔視で王宮内を覗いていたんじゃないのか。王太子である俺の顔が分からないなんて……ディセンシアの人間なんて真っ先に調べそうなものなのに。遠隔視についてはルーイ先生の予想でしかない。あの蝶にはもっと何か、他の役割があったのだろうか。それとも、コイツとは違う第三者が……別の魔法使いがいるのか。

「知り合いに後ろ姿が似ていたものでつい……人違いでした。足を止めさせてしまい、申し訳ありません」

 男はひとつ舌打ちをすると俺から視線を外し、さっさと歩いて行ってしまう。だらしのない歩き方……隙だらけだ。とてもプロの人間とは思えない。その体から微かに漂う魔力の気配が無ければ気にも止めなかった……ガラの悪いチンピラ崩れの男。演技をしているようにも見えないが、もしそうだとしたら大した役者だ。
 男の側に近寄ったことで、より明確に力の気配を読み取ることができた。かなり弱くなっていたが、やはり先刻王宮から感じたものと同質のもので間違いない。今この場で男を捕らえることもできなくはないけれど、相手も魔法を使える。どんな反撃をしてくるか分からない。
 とりあえずは付けた。今日は天気も良い……肩を叩かれるまで俺の存在に気付かなかったようだから、バレて捨てられることはないと思うけど、あまりのんびりもしていられないな。

「レオン殿下、大丈夫ですか? さっきの男は……」

「ベアトリス、俺が声をかけた男を追え。まだそれほど遠くには行っていないはずだ」

「あれが殿下がおっしゃっていた侵入者ですか?」

「恐らくな。他にも仲間がいるかもしれないから、尾行は細心の注意を払え。無理に捕らえようとはするなよ、相手は魔法を使うからな。行動を監視するに留め、その様子を逐一報告しろ」

「はい」

「俺は一旦王宮へ戻る。セドリックもこちらに向かっていると思うから、あいつが来たら先程あった事を説明して、俺の元へ来るよう伝えてくれ」

 ベアトリスは部下に指示を出すと、俺に一礼してから自らも行動を開始した。男の事はひとまず隊長達に任せよう。俺も止めていた足を再び動かし、王宮へ向かった。
 リザベット橋を渡る途中で、もう一度クレハの魔力を辿り位置を探る。彼女は相変わらず外にいるようだった。まだ釣り堀から帰っていないのか。それでもゆっくりだが、王宮の方へ歩いているのが分かったのでほっとする。
 今はもう何も感じないけれど、例の不審な魔力の気配は釣り堀周辺に相当数確認できたので気が気じゃなかった。早く彼女の顔が見たい。釣り堀までは大した距離じゃないし、迎えに行くか……王宮で待っていれば会えるのだけど、もはやその僅かな時間すら惜しかった。











 釣り堀へ繋がる道の途中には、小さな林がある。林の入り口が見えてきた所で、俺は足を止めた。林の中から誰か出てくる。それは複数で、話し声も聞こえた。彼らがこちらを認識するよりも早く声をかける。

「クレハ!!」

「えっ、レオン?」

 林から出てきた人影は4つ。クレハとその友人であるリズ、そして俺の部下のクラヴェル兄弟だった。4人共元気そうで、今朝会った時と変わらない姿に心底安堵する。どうして俺がここにいるのかと、困惑しているクレハを無視して側に駆け寄り、俺は彼女の体を抱き締めた。

「ひゃっ!?」

 彼女はまるで借りてきた猫の様に、小さく身を硬くする。俺が触れるといつもこうだ。もう何度もしているのだから、そろそろ慣れて欲しいという気持ちと、そんな所も可愛いと思う気持ち……相反する感情がせめぎ合う。

「良かった……無事で」

「レオン……どうして? 用事があって今日は遅くなるって言ってたのに」

「ほらね。クレハ様、私達の言った通りだったでしょ」

 クレハの後ろからレナードが顔を覗かせる。その隣には弟のルイスもいる。

「殿下がクレハ様のピンチにじっとしているなんて、出来っこないですよねぇ。それにしても、お早いお着きで……」

「さっき丁度ボスの話をしていたとこだったんだよ。ボスはきっと魔法で化け物の気配が分かるから、今頃血相変えてこっち向かってるんじゃないかってね。予想よりずっと早くてびっくりしたけど」

「離れた場所にいてもこちらの事が分かるなんて……殿下は武芸だけでなく、魔法の方も凄いのですね」

「そりゃもう。さっきの化け物達だって、俺らは地道に一体ずつ倒したけど、ボスなら魔法で一発だったと思うよ」

 おい、何だ……化け物って。聞き捨てならない単語がいくつも聞こえるぞ。安心できたのはほんの一瞬のことだった。彼らの会話から、何も無かったとは到底言い難い状況だったのだと感じ取り、眉間に思いっきりシワが寄ったのが分かる。抱きしめていたクレハの体を解放すると、俺は部下2人に向き直る。

「レナード、ルイス……報告しろ。何があった」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。

いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。 ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、 実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。 だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、 王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。 ミレイにだけ本音を見せるようになり、 彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。 しかしレオンの完璧さには、 王宫の闇に関わる秘密があって—— ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、 彼を救う本当の王子に導いていく。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...