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93話 ハーブティー
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温めたティーポットに、乾燥したハーブを入れて熱湯を注ぐ。ポットに蓋をして3分程度待つ。そして、丁度良い濃さになったらカップに注ぐ……と。甘くて爽やかなカモミールの香りは、少しリンゴに似ている。良い感じだ……ハーブティーを淹れるのは初めてだったけれど、上手くできたんじゃないかな。これならおふたりにお出ししても大丈夫だ。最後に蜂蜜とレモンを添えて……
「カミツレだね。良い香りだ」
「カミツレ?」
「カモミールの事だよ。花言葉は『清楚』そして『あなたを癒す』だ。カモミールティーには静穏効果があるからな。疲れた体にはぴったりな飲み物だ」
「へぇ……」
「だよね? リズちゃん」
「はっ、はい!」
ルーイ先生は私に視線を向けると、その端正な顔を綻ばせた。あのっ……まだ慣れてないので!! 先生の笑顔が直視できません。
「クレハの体を気遣って用意してくれたんだろうね」
「そっかぁ……ありがとう、リズ」
「リズちゃんも一緒にお茶しようか。俺の隣おいで」
「はいーっ!?」
ご自身が座っているソファの左隣をぽんぽんと叩きながら、先生は私に手招きをしている。嘘でしょ……待って、心の準備が。最近の私ときたら、美形成分を過剰摂取し続けて胸焼けしてしまいそうです。
「ほらほら、遠慮しないで」
「えっ、いや……私は……」
少し強引に腕を引かれ、ソファに座らせられた。先生と体が触れてしまいそうな距離に、心臓がバクバクと激しく騒ぎ出す。
「リズの分は私が淹れるね」
クレハ様がお手ずから、私にお茶を入れて下さった。これではもうお断りすることはできません。有り難くご一緒させて頂くことにしよう。クレハ様と先生……そして私。3人でお茶を飲み交わす事となった。
「ルーイ様……『とまり木』で働くんですか?」
「うん。セディの世話になるばっかりじゃ悪いだろ。手伝いくらいはしないとな。髪はその気合いを表現してみたってとこかな」
「ほんとにセディって呼んでる……」
「なーに? リズちゃん」
「い、いえ。長い髪の先生も素敵だったんだろうなぁって……」
「今度ウィッグでも被って見せてあげようか」
クレハ様を教えているアレット先生のイメージのせいか、先生と聞くと気難しい方を想像してしまうのだけど、ルーイ先生はとてもフランクで話しやすかった。そして近くで見ると更に格好良い。先生はクッキーを美味しそうに食べている。お菓子類が好きだと聞いていたから、お茶と一緒にお出ししたのだけど、気に入って貰えたのなら良かった。
「働くことに関しては、ちゃんとレオンにも許可を貰ったから大丈夫」
「レオンは今日、ルーイ様の所に行っていたのですね」
「ああ。あいつ凄い勢いで店を飛び出して行くもんだからびっくりしたよ。俺もセディも心配してたんだからな」
なんと殿下は、店から王宮まで走って戻られたのだという。馬車を使っても1時間近くかかる距離なのだけど。表での暴走っぷりといい、分かってはいたけれど……やはり殿下は色々と普通ではない。
「セディはこっちに着いて早々に、レオンのいる会議室に行っちゃった。俺はその間クレハの所にいるよう言われたんだけど……お前達が行った釣り堀で何があったんだい?」
クレハ様は先生にも、今日釣り堀で起きたことを説明された。黄色の衣装を纏った不思議な少女の事、その少女を湖の怪物が食べてしまったことなどを、できるだけ丁寧に。私も当事者であるので、クレハ様の話に補足をするような形で会話に参加した。
「うわぁ……がっつり襲われてんじゃねーか。レオンは間に合わなかったらしいけど、無事でほんと良かったな」
「とても怖かったです。でも、レナードさんとルイスさん……私の護衛をして下さっている兵士さんが守ってくれましたから。おふたり共凄く強いんですよ」
「レオンの側近だっけ? あいつ自身も無茶苦茶だが、サークスを相手にして無傷とは……部下の方もぶっ壊れ性能だな」
先生に『ぶっ壊れてる』と表現されるおふたり。とても強いという意味らしい。褒め言葉で良いんだよね……
「ルーイ様、あの黄色の少女は何だったのでしょう……あれも魔法なんですか?」
「お前達を襲ったのはサークスだろう。サークスっていうのは、ニュアージュの魔法使いが必ず連れてる相棒……みたいなもんかな。実際はそんな良いもんではないけどね」
「ニュアージュの……魔法使い」
「その魔法について説明すると長くなるから、それはまた今度な。何ならレオンに聞いてよ。アイツには少し教えておいたからさ」
「ルーイ様はそうやってすぐ面倒くさがるんだから……」
「それにしても、こんな明確に島の中へ攻撃をしかけてくるなんてな。精々のぞき程度だと思っていたが……これはちとマズいことになったな。ミレーヌの行動からして、メーアにもバレたようだし……」
あの化け物達の体内にあった白い紙切れ……それを見た時、レナードさんとルイスさんの話を思い出した。王宮内を飛び回っていたという、正体不明の黄色に輝く蝶の事。その蝶も白い紙でできていたらしい。
私達を襲ったのがニュアージュの魔法使いなら、蝶も同じ人間がやったことなのかな。
外国の魔法使いがコスタビューテの王宮に侵入し、そこにいる人達を攻撃した。しかも、その中にはクレハ様……王太子の婚約者も含まれている。これって……とんでもないことなんじゃ……
コンコン
部屋の扉をノックする音がした。今度こそレオン殿下かな。会議が始まってからそろそろ2時間近くになるし……
「クレハ様、セドリックです。ご気分は如何でしょうか?」
「セドリックさん!」
「おっ、セディ」
先生に続いて、クレハ様を訪ねてきたのはセドリックさんだった。会議は終わったのだろうか……セドリックさんも途中からだけど、出席していたそうだし。でも、それなら真っ先に殿下がこちらに来られそうな気がするのだけど、扉の前にいるのはセドリックさんだけのようだ。
「少しばかりお話をさせて頂きたいのですが……よろしいでしょうか」
さっき名前を名乗った時より、セドリックさんの話し方が柔らかくなった。クレハ様の声を聞いて安心したのだろう。
クレハ様はセドリックさんを快く部屋に招き入れる。セドリックさんも相当お疲れのようだ。彼にも温かいハーブティーを振る舞おうと、私はお湯を沸かし直すため、再び給湯室に向かった。
「カミツレだね。良い香りだ」
「カミツレ?」
「カモミールの事だよ。花言葉は『清楚』そして『あなたを癒す』だ。カモミールティーには静穏効果があるからな。疲れた体にはぴったりな飲み物だ」
「へぇ……」
「だよね? リズちゃん」
「はっ、はい!」
ルーイ先生は私に視線を向けると、その端正な顔を綻ばせた。あのっ……まだ慣れてないので!! 先生の笑顔が直視できません。
「クレハの体を気遣って用意してくれたんだろうね」
「そっかぁ……ありがとう、リズ」
「リズちゃんも一緒にお茶しようか。俺の隣おいで」
「はいーっ!?」
ご自身が座っているソファの左隣をぽんぽんと叩きながら、先生は私に手招きをしている。嘘でしょ……待って、心の準備が。最近の私ときたら、美形成分を過剰摂取し続けて胸焼けしてしまいそうです。
「ほらほら、遠慮しないで」
「えっ、いや……私は……」
少し強引に腕を引かれ、ソファに座らせられた。先生と体が触れてしまいそうな距離に、心臓がバクバクと激しく騒ぎ出す。
「リズの分は私が淹れるね」
クレハ様がお手ずから、私にお茶を入れて下さった。これではもうお断りすることはできません。有り難くご一緒させて頂くことにしよう。クレハ様と先生……そして私。3人でお茶を飲み交わす事となった。
「ルーイ様……『とまり木』で働くんですか?」
「うん。セディの世話になるばっかりじゃ悪いだろ。手伝いくらいはしないとな。髪はその気合いを表現してみたってとこかな」
「ほんとにセディって呼んでる……」
「なーに? リズちゃん」
「い、いえ。長い髪の先生も素敵だったんだろうなぁって……」
「今度ウィッグでも被って見せてあげようか」
クレハ様を教えているアレット先生のイメージのせいか、先生と聞くと気難しい方を想像してしまうのだけど、ルーイ先生はとてもフランクで話しやすかった。そして近くで見ると更に格好良い。先生はクッキーを美味しそうに食べている。お菓子類が好きだと聞いていたから、お茶と一緒にお出ししたのだけど、気に入って貰えたのなら良かった。
「働くことに関しては、ちゃんとレオンにも許可を貰ったから大丈夫」
「レオンは今日、ルーイ様の所に行っていたのですね」
「ああ。あいつ凄い勢いで店を飛び出して行くもんだからびっくりしたよ。俺もセディも心配してたんだからな」
なんと殿下は、店から王宮まで走って戻られたのだという。馬車を使っても1時間近くかかる距離なのだけど。表での暴走っぷりといい、分かってはいたけれど……やはり殿下は色々と普通ではない。
「セディはこっちに着いて早々に、レオンのいる会議室に行っちゃった。俺はその間クレハの所にいるよう言われたんだけど……お前達が行った釣り堀で何があったんだい?」
クレハ様は先生にも、今日釣り堀で起きたことを説明された。黄色の衣装を纏った不思議な少女の事、その少女を湖の怪物が食べてしまったことなどを、できるだけ丁寧に。私も当事者であるので、クレハ様の話に補足をするような形で会話に参加した。
「うわぁ……がっつり襲われてんじゃねーか。レオンは間に合わなかったらしいけど、無事でほんと良かったな」
「とても怖かったです。でも、レナードさんとルイスさん……私の護衛をして下さっている兵士さんが守ってくれましたから。おふたり共凄く強いんですよ」
「レオンの側近だっけ? あいつ自身も無茶苦茶だが、サークスを相手にして無傷とは……部下の方もぶっ壊れ性能だな」
先生に『ぶっ壊れてる』と表現されるおふたり。とても強いという意味らしい。褒め言葉で良いんだよね……
「ルーイ様、あの黄色の少女は何だったのでしょう……あれも魔法なんですか?」
「お前達を襲ったのはサークスだろう。サークスっていうのは、ニュアージュの魔法使いが必ず連れてる相棒……みたいなもんかな。実際はそんな良いもんではないけどね」
「ニュアージュの……魔法使い」
「その魔法について説明すると長くなるから、それはまた今度な。何ならレオンに聞いてよ。アイツには少し教えておいたからさ」
「ルーイ様はそうやってすぐ面倒くさがるんだから……」
「それにしても、こんな明確に島の中へ攻撃をしかけてくるなんてな。精々のぞき程度だと思っていたが……これはちとマズいことになったな。ミレーヌの行動からして、メーアにもバレたようだし……」
あの化け物達の体内にあった白い紙切れ……それを見た時、レナードさんとルイスさんの話を思い出した。王宮内を飛び回っていたという、正体不明の黄色に輝く蝶の事。その蝶も白い紙でできていたらしい。
私達を襲ったのがニュアージュの魔法使いなら、蝶も同じ人間がやったことなのかな。
外国の魔法使いがコスタビューテの王宮に侵入し、そこにいる人達を攻撃した。しかも、その中にはクレハ様……王太子の婚約者も含まれている。これって……とんでもないことなんじゃ……
コンコン
部屋の扉をノックする音がした。今度こそレオン殿下かな。会議が始まってからそろそろ2時間近くになるし……
「クレハ様、セドリックです。ご気分は如何でしょうか?」
「セドリックさん!」
「おっ、セディ」
先生に続いて、クレハ様を訪ねてきたのはセドリックさんだった。会議は終わったのだろうか……セドリックさんも途中からだけど、出席していたそうだし。でも、それなら真っ先に殿下がこちらに来られそうな気がするのだけど、扉の前にいるのはセドリックさんだけのようだ。
「少しばかりお話をさせて頂きたいのですが……よろしいでしょうか」
さっき名前を名乗った時より、セドリックさんの話し方が柔らかくなった。クレハ様の声を聞いて安心したのだろう。
クレハ様はセドリックさんを快く部屋に招き入れる。セドリックさんも相当お疲れのようだ。彼にも温かいハーブティーを振る舞おうと、私はお湯を沸かし直すため、再び給湯室に向かった。
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